第53話 猫目線(7)
「にゃ……」(どうして、こんな……)
残された黒猫は、白猫のあとを1つ、2つと数えるように目も首も動かしてぐるぐると順番にまわしている。
この裏庭での最初と最後をぐるぐるぐるぐる、何度も確認するようにして何か手掛かりとなるものに行き着かないだろうかと、祈りのような不確かなものを感じさせる動きに見える。
白猫が去ってから一度、鳴いた。鳴いたが─── その鳴き声は黒猫の意思が感じられないため息のようなものであった。続かない鳴き声は黒猫の心が乱れていることを表していて、出たままの舌はそれを裏付けるように感じられる。
それに、ぐるぐると頭は動いているのだが身体はベンチから離れようとしていないし、まとまらない考えに悩まされているのだと想像してしまえる。
黒猫は今、大きな渦にのみ込まれているが不文律を破るような猫ではないためにこの場を去れないでいる。
ベンチの黒猫はそのように作り変えられてしまったのだ、白猫によって。
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