第36話 中間

「好きって気持ちを隠さない、でも妙な期待をしていない目よ」

 私のそこにあるものをただ見つめる目がこの数日、彼女以外に向けられることが多くて変化を生んだみたい。

 優しい声に含むものは、ないみたい。

「ありのままって楽しいのにね」

「そうだったらいい……このくらいが丁度いいのにって思うわ」

「何か、矛盾してたかな?」

「何かは、矛盾してる」

「重要じゃないところ?」

「全くね。無理に探さないで」

「見つからないから?」

「無いのよ」

「違う理由で感染してしまうような───病気?」

 きつい言葉にならないようと考えて、間があいてしまった。

「同じ病気でも、幾つも感染方法があるのよ」

「特定できない?」

「……感染する理由じゃないのに感染する病気って怖いわね」

 彼女は、本当に笑っている。

「ニュアンスは伝わったよ」

「私なりに違いを説明できるけど、それは違いだけ……心が疲れたのは確かね。違うのに、不安になるの」

「違うのにね」

「そうなの」

 浴室の彼女と洗濯をしている私の会話は、彼女の同意で途切れた。


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