第92話 文化祭前日(1)

 それから数週間経ち、今日は文化祭前日にまで迫っていた。

 学校の授業はなく、各クラスごとに文化祭の出し物の準備をする日である。

 そのため、ほとんどの生徒のテンションが上がっていた。授業がない日、と言う日はやはり神であろう。


「早く帰れる!」


 や、


「どっか遊びに行こう!」


 とか言って、雑に作業をこなし、すぐに帰宅しているのだが、うちのクラス、つまり1年3組は違う。


 みんながみんな理由は違えでも団結して、雑にはならなく、真剣に準備していた。


「飾り付けはこんな感じで!」


 そう言われたクラスメートが森下さんのした通りに


「そうそう!」


 このように、森下さんは文化祭実行委員としてしっかりと飾り付け係を中心に指示をしているところのようである。


 ぼくと楓は、というと、裏方の方の準備のリーダー的なことをしていた。なぜかというと、数時間前に遡る。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 いつものように、ぼくと楓は学校に登校してきて、楽しくおしゃべりをしていた。

 その時、光と森下さんに話しかけた。


「なあ、お二人さん。俺たち、裏方の準備の出来そうにないんだ。だから今日リーダーをしてくれないか?」


 こんなことを頼んできたのである。


「えぇ…。嫌だ」


 僕は(人前に立つのはそんなに得意ではないし、とてもめんどくさそう)と思い、拒否する。


「私もごめんなさい」


 どう思ったのかは分からないが、楓も拒否した。

 そこに森下さんが口を挟んでくる。


「お願い! 今度の打ち上げの時に好きなのを奢ってあげるから! お願いっ!」


 そんなことを言ってくる。(まさか、こんなことで釣られるわけがないよな)と、僕はおもっていた。だが、楓は釣られてしまったようで、


「まあ、澪ちゃんがそこまでいうのならわかった!!」


 と、元気に返事をした。

 僕はその目を見開いた。そして、もう諦めて、


「はあ、分かったよ」


 僕は諦めモードで言った。


「ありがと! 2人とも!」


 森下さんは笑顔で言う。

 光は、と言うと、(自分が頼んだ時は誰も許可してくれなかったのに、森下さんが頼んだ時は反応したことが気に食わない)と言う理由で落ち込んでいた。


 こればっかりただお願いしただけの光と、『奢る』と、言った森下さんではやはり大違いである。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 そうして、今に戻る。

 僕たちが指示に慣れていないためか、明らかに作業が遅れているのであった。

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