第69話 楓との遊園地!(6) 〜ジェットコースター〜

 僕らは今、ハグをしていた。

 時間を忘れてしばらくお互いを抱きしめあっていると、


「ありがとうございましたー!、って、あのー、もう終わりですよー!」


 呆れたような、そんな声が聞こえた。ハグをしている間にゴールに着いてしまったらしい。


「「あ、すいません!!」」


 見事に二人の声がシンクロして同時に発せられて、船を降りる。


「……ジェットコースターに行く?」


 僕は気まずさを残してしまいながら、楓に声をかける。

 こんな状況だが、手はまだ繋いでいる状態だ。ただ、さっきより距離があった。


「……うん」


 楓がそう言ったことによってジェットコースターに行くことは決まった。だが、やはり、空気は重いままで、(………気まずい!)僕はそう思っていた。きっと、楓も同様だろう。とりあえず(ジェットコースターで空気を一新しよう)と、考え、僕が苦手なことも忘れて、向かうのであった。


 ジェットコースター乗り場に着いた。

 気まずい空気は改善されず、そのまんまである。1時間待ちと入り口の看板に書かれていた。僕と楓は話題を振ろうと、お互いを見るかま、目が合ってしまい、恥ずかしくてお互い目を逸らしてしまう、と言う状況が1時間続き、順番が回って来た。


「2名様、こちらへどうぞ!」


 スタッフの案内でジェットコースターに乗り込む。が、ここで事件が発生する。僕らが案内されたのはジェットコースターの一番前だったのだ。(なんだと……。やばい…)僕は顔が真っ青になりながらジェットコースターに乗り込む。楓はと言うと、「一番前だー!」とか言って、さっきまでの空気を忘れて、元気にはしゃいでいる。僕は恐怖でなんとも言うことができず、


「それでは行ってらっしゃーい!」


 スタッフがそう合図し、ジェットコースターが動き出す。ガタゴトガタゴトと音を立ててどんどん上へと登っていく。もうすぐ落ちる! と言う時に、楓がこっちを向き、


「楽しもうねっ!」


 満面の笑みを浮かべてそう言った。僕は一瞬見惚れたが長く見惚れている時間はなく、ジェットコースターが高速で落ちてゆく。


「うわぁぁぁぁぁあ!!」


 僕はこんな経験したことなく、恐怖の余り、思わず大声で叫んでしまう。楓は、と言うと、


「きやぁぁぁぁぁあ!!」


 こっちは楽しそうに、叫んでいるようだ。


 約40秒ほど、この地獄を見た僕はすぐにジェットコースターから降りることができないほど、叫びと、恐怖疲れをしていた。楓はと言うと、ニッコニコで凄く楽しそうにしているのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る