第60話 放課後、楓との話
それからと言うもの、なんともなく、放課後になった。
僕は楓に言われていた通り今、屋上にやってきている。もう既に楓は屋上に居た。そして楓はこちらに気付くとにこっと微笑んだ。
「北村君、来てくれてありがとう」
(まだ、名字呼びなんだな)と僕は少し悲しく思った。
「ううん。それじゃあ僕を避けていた理由を聞かせてくれるかな?」
僕は早速本題の質問をしに行く。(きっと楓も準備してきているだろう)と思ったからだ。
「わかった」
そう言い、楓は語り始めた。
「理由の1つ1つを話すね。
1つ目は北村君がドッヂボールの試合で私を庇ってくれたせいで怪我をしてしまったこと。私は迷惑をかけてしまった。
2つ目は私の家に来てくれた時。私が、悠君とは恋人だ、と嘘をついたことで(北村くんを守れた)と思っていた。これは昨日のことだから距離を置いた理由には関わってないけど、そのせいで北村君が私のお父さんから罵倒されてしまった。しかも私が意気地なしのせいで庇えなかった。本当にごめんなさい。それで距離を置いたのにかつ、更に迷惑をかけてしまった。
3つ目は買い物に一緒に行った時。迷子になっちゃったよね。そのせいでまた、迷惑をかけてしまったこと。
4つ目は澪ちゃんの誕生日会の時。私は自分のスマホの充電し忘れていたせいで迷子になってしまった。その時私を見つけてくれた。けど、迷惑をかけてしまった。
5つ目は平気で言葉に甘えて、ご飯をご馳走になってること。普通に考えて迷惑だと思った。
まとめると北村君に迷惑だと思われないために距離を置いたの。許して欲しいなんて言わない。本当にごめんなさい。『また距離をおけ』というのなら距離を置くわ」
この理由を聞いた僕は思わず笑ってしまった。(楓に何かしてしまったかな? と考えてた時の僕は馬鹿みたいだ)と思いながら。
「何がおかしいの?」
「ごめんごめん、ちょっと自分が馬鹿馬鹿しくなっちゃって。そう言うことだったんだね。全く迷惑だなんて思ってないよ! なんなら楓といられる時間はとても楽しい!」
「うぅ…悠君。本当にありがとう!」
楓は涙ぐみながらお礼を言った。こうして僕たちは仲直り(?)を果たしたのだった。
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時は少し遡る。そんなことを話している屋上の入り口、そこには三人の姿があった。
「ま、まさか、そんな事態から距離を置いていたなんて。想像の何百倍も不味かったわ。これは中止した方がいいわね」
とある女子生徒が言った。
「そうだね。少なくとも今じゃないと思う」
とある男子生徒も女子生徒の意見に賛同する。
「何言って上がる。ここまでやってきたんだからこのまま続けようぜ」
別の男子生徒はそう言って北村君たちのところへ向かって行った。
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