紫苑の野望
「よし! あったあった! るーちゃんの制服!」
紫苑は今、教室にいる。るーちゃんに制服を届けるため、取りに来たのだ。
「あーもー……こんなにぐっちゃぐちゃにして。るーちゃん昔からガサツなんだから」
紫苑は呆れてため息をつきながらも……
「そういうところ……変わってないなぁ」
少しだけ微笑んだ。
「しょーがない! 紫苑ちゃんがたたんであげますよーふんふふ♪ ふーん♪」
紫苑は鼻歌を歌いながら、るーちゃんの制服を手にかけたが、その瞬間よからぬことを思い浮かべてしまった。
「待てよ……? どうせなら、るーちゃんの制服に、紫苑の匂い、つけちゃおっかなぁ……フヒ、フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……」
紫苑はニンマリと笑みを浮かべた。できればすぐに表情を戻したかったのだが、勝手に口角が上がってしまう……それほど、今の紫苑は悦に浸っていたのだ。
「あ♡」
ここで紫苑は、危うく最初にすべきことを怠るところだった。思い出せてよかった……
「まずやらなきゃいけないことがあったぁ……紫苑の匂いをつける前にぃ♡ るーちゃんの匂いを嗅がないと……すん……すん……」
紫苑はるーちゃんの制服を顔面に押し付け、そのまま鼻で小刻みに香りを吸い込んだ。あぁ……♡ 少し汗臭くてぇ、鼻をツンッと刺激するけどぉ、昔ながらの、馴染みのある柔らかい匂いだなぁ……♡ るーちゃん……♡ るーちゃぁん……♡ るーちゃん……♡ 大好きだよ……♡ るーちゃん……♡ 彼女ができても、大好きだよ……♡ 紫苑のるーちゃん……♡ 可愛くてかっこいいるーちゃん……♡ るーちゃんるーちゃん、るーちゃぁん……♡
「は!?」
い、いけないいけない……紫苑としたことが! すっかりトリップしちゃった!
「はぁ、全く……るーちゃんの体臭って本当に危険だよ! ヤクだよヤク! あんな危険物を身体に纏っておきながら平然としてるなんて! るーちゃんヤバすぎるよ!」
って、そんなこと言ってる場合じゃなかった! 紫苑の匂いを擦り付けないと!
「って、言ってもな……なににしよう?」
紫苑は悩んだ……
「芳香剤かなー? いや、それじゃあ返って普通にいい匂いになっちゃう……いや、紫苑はいい匂いなんだけどさ……これだと絶対気づいてもらえないよ」
うーん……他にもなにか候補なかったかな?
「香水! って、紫苑そんなの持ってなかった! お姉ちゃんの香水借りるって手もあるけど、それじゃあ紫苑の匂いじゃなくてお姉ちゃんの匂いになったゃうし……うーん」
紫苑らしい匂い……紫苑らしい匂い……
「汗……? いや、でも汗か……外に行かないとかけないし、できればたたんだ状態でるーちゃんに渡したいから、外出る前に匂いつけたいんだよねー」
はぁ、思いつか……あ! そういえばさっき!
「……その手があった! ありがとう亜姫ちゃん! 亜姫ちゃんのおかげで答えがわかったよ! 多少濡れても今は暑いから、公園着いたころには乾くし!」
ふふふふふふ……待っててね♡ るーちゃぁん……♡
そして紫苑はるーちゃんの制服を持ったまま、トイレに向かった。
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