テスト後の休日

「……はぁ」


今日は日曜日。本来ならのどかな休みを過ごす日である。しかし、俺は自分の部屋のベッドで横になりつつ、何度もため息をついていた。


「おーい。どうした? 瑠夏」

「と、父さん……」


ため息をついていると、ノックもせずに急に父が入ってきた。


「今日のお前、いつも以上にインドアしてないか? というか、ここ何ヶ月かの休日は出かけてただろ? ……やっぱり変な女に刺されたことが尾を引いているのか?」

「いや、それはもう大丈夫だから」

「もう大丈夫って……ハート強いなお前。じゃあ、なにか悩みでもあるのか?」

「大アリのアリだよ……テストの結果が気になってしょうがないんだよ。なんで休日明け後の返却なのかな……」


そう。テスト後だからである。俺としては梨音から教わったこともあり、それなりに問題は解けたのだが、問題は紫苑に勝っているかどうかなのである。

紫苑は俺とどっこいどっこいの成績だ。それでもって俺と同じく梨音から勉強を教えてもらっている。しかも俺より多く。

だから、勝つ自信があると言えば無いよりなのである。


「テストか……たしかにな。お前、肝杉高校はめっちゃ受験頑張って入ったもんな。結果出さないと、卒業すら困難って言われてるしな」

「……うん」

「でもまぁ、今回のお前は大丈夫だろ? なにせ、頭のいい愛しの彼女さんにみっちり鍛えてもらったからな」

「……うん。……え?」


待って。どうしてだ?


「と、父さん……なんで俺が彼女から勉強教えてもらったことを知ってるんだよ!? というか、彼女いることすら教えてなかったでしょ!?」

「いや、だってお前……土日出かけるときはやたらオシャレするようになっただろ。中学のときはファッションセンスゼロだったのに!」


と、笑いながら父さんはベッドに腰掛けた。


「まぁ、俺はママに言われて気づいたんだけどな。ファッションセンスも、敏感なママだから気づいたのさ」

「母さんか……たしかに鋭いよな。あの人」

「ああ。鈍感な俺と違ってな……で、瑠夏! お前彼女とどこまで行ったんだ!?」

「どこまでって……?」

「ほら……あの、色々だよ色々!」

「色々か……あ、彼女の家には泊まったよ」

「おお! 泊まったのか! いつのまにか!」


梨音が我が家に泊まったことは黙っておこう……


「で……泊まったということは、一夜を過ごしたんだろ? だからその……どこまでヤッた?」

「!?」


父さんは俺の耳に口を近づけ、こんなクソみたいな質問を囁いてきた。


「えっ……あの」


俺は最初律儀に答えようとしたが、いざ今までのことを振り返ってみると、どれもこれも俺が梨音から一方的に責められっぱなしの情けない姿が頭に浮かび、恥ずかしくなった。


「ど、どうした瑠夏……顔が赤いぞ? お前、まさか!」

「な、なんでもない! そ、そうだ! 今日充希と出かけるんだった! い、行ってきますー!」


俺はなんとしてもこの状況から逃れるため、急にありもしない用事を思い出したフリをし、そそくさと部屋から出た。


「あら、瑠夏。ご飯は?」

「母さんごめん! 俺、出かけるから! 夕飯はよろしく!」

「もしかして、例の彼女さん?」

「いや、友達!」

「そう。楽しんでらっしゃい〜」


そして、俺は特に予定がないのに家から出た。

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