第81話 光魔法と闇魔法・・・そして召喚魔法
あの騒動の3日後である。
あの後と昨日、一昨日は針のむしろの上にいるかの如くだった。
みんなはピリピリとしており、深夜までルールーとヴィクトリアさんの戦いは終わらなかった。
一昨日には、いつもどおりのヴィクトリアさんと、ムスッとしているルールー、そして先に言ったとおりのみんなで修行をした。
・・・模擬戦の時、いつも以上にみんなが怖かった。
殺気が凄かったのだ。
特に、ルールーからはボコボコにされ、それをヴィクトリアさんがニヤニヤと見ていた。
愉快犯、か。
なるほど。
これが見たくてやったのだな・・・はぁ。
さて、それはそれとして、今日はそこまでみんなピリピリとしていない。
どうやら、昨日の模擬戦で行った、俺対みんなの総当りで溜飲を下げてくれたようだ。
・・・何故あんなに怒っていたのかよくわからんが。
許して貰った代わりにヘトヘトになったがな。
「いよいよ明後日で最終日の予定よのぅ。今日は光魔法と闇魔法の習熟度を確認しようかの。では、シノブから。」
という事で、俺は光魔法と闇魔法を使う。
この2つは、なんというか・・・少し特殊なようだ。
誰かを助けたいという気持ちを持つ事で大きな力を得るのが光魔法。
そして、誰かを害したいと思う気持ちを持つ事で力を得るのが闇魔法。
という感じだ。
そして、光魔法は回復、解呪、状態異常を消す、などに優れており、あまり攻撃的では無く、幻惑、や影を利用する攻撃、状態異常を付与する事に優れているのが闇魔法である、と感じる。
「よし、どちらも及第点だ。それなら、チユリの母も癒せよう。」
俺はホッとする。
光魔法は闇魔法に比べると俺の性にあっているらしく、ステータスをを見ても、光魔法 中 に対し、闇魔法は 弱 となっている。
チユリさんの事情はすでに話してあり、場合によってはヴィクトリアさんに獣人の集落まで来てもらうことだけでも頼み込む必要があった。
チユリさんもそれを聞きホッとしているようだ。
ちなみに、レイリーもキョウカもチユリさんもどちらの属性も使えなかったが、リュリュは光魔法に適性があったようで、使えるようになっていた。
これには、ルールーも驚いていた。
色々と検証した結果、人魚種にかけられていた呪い・・・すなわち闇魔法を打ち破ったのが良かったのかもしれないという結論に至った。
「・・・ふむ。ヴィヴィアンもどちらも使えるな。よし。」
ヴィヴィアンさんもヴィクトリアさんと同じようにどちらも使えるようだ。
かなりヴィクトリアさんが安堵しているように見える。
・・・やはり、少しおかしい気がする。
日が経つに連れ、ヴィクトリアさんに余裕が無くなって来ている気がする。
なんというか・・・俺たちがここに来た時のヴィクトリアさんであれば、そう言った表情は見せないような気がするのだ。
いったい、なんなのだろうか?
その日は、その後模擬戦を行い、夕食時にパーティを行った。
ヴィクトリアさんは大はしゃぎだった。
何故か、俺を闇魔法で視界と聴覚を奪い、何やら女性陣だけで話をしていた。
視界が晴れ、聴覚が戻ると、真っ赤になったみんなが居た。
その中には、チユリさんやヴィヴィアンさんもいて、満足そうにしているヴィクトリアさんがいた。
いったい、何を話したのだろうか?
すごく上機嫌なヴィクトリアさんが俺の入浴中に風呂場に入ってこようとして、みんなに止められていた。
危ないところだった。
湯船に居たからよかったものの、抵抗するヴィクトリアさんと共にみんながなだれ込んできた時、あやうく丸出しを見られるところだった。
そして、翌日。
何故か今日はヴィクトリアさんが朝からピリピリとしていた。
昨日の上機嫌さが嘘のようだ。
いったい、何故だろう?
「さて明日は出立の日だ。今日は召喚魔法についても確認しよう。」
そう言って俺を見るヴィクトリアさん。
考え事をしていた俺の思考が途切れる。
「お願いします。」
「お願いします、かあさま。」
これに返事をしたのは俺とヴィヴィアンさんだけ。
というのも、この召喚魔法をスキルとして得られているのは、俺とヴィヴィアンさんだけだからだ。
「本来であれば、最初は無機物の召喚、そして、生き物、最後に幻想級の召喚と教える所であるが・・・シノブ、お主は少し特殊な召喚をして貰う。まぁ、すぐにでは無いがな。」
「何故です?」
『・・・』
「・・・まぁ、それはお主が転生している事に関係しているので、そういうもの、と思っておくが良い。ここにいる間には出来まい。後はリーリエに聞くが良い。全て伝えてある故な。」
そうなのか。
まぁ、それならそうしよう。
そう言えば、ここに来てすぐにリーリエが俺から離れて、ヴィクトリアさんと話をするとか言っていたので、その時だろうか?
「なので、シノブは今からヴィヴィアンが召喚する様子をしっかりと見ておけ。ヴィヴィアン。今から召喚するのは、お主の素養にあった幻想級の召喚だ。」
「はい、かあさま。」
「これが最後の教えとなる。心して挑め。」
「・・・?」
どういう意味だ?
ヴィヴィアンさんも首を傾げている。
「幻想級は、それぞれの心、身体、そして魔力によって生み出されるのだ。例えば妾であれば・・・『我が内より来たれ!その力を以て我が身を助けよ!!』顕現せよ!フィルフィ!!」
ヴィクトリアさんの身体から漆黒の蝶が
「この蝶・・・フィルフィは妾の生み出した幻想生物じゃ。フィルフィには特殊な能力があってのぅ?触れたものの魔力を吸い取り妾に還元させる、もしくは、その身を魔力の塊として、触れたものを爆発させる、など、応用力のあるものなのじゃ。」
ふむ。
なるほど・・・
「ヴィヴィアン、そしてシノブ。幻想級は己が生み出したからと必ず従うわけでは無い。認めさせねばならぬ。それを、しっかりと理解しておくのだ。」
俺とヴィヴィアンさんは頷く。
「さて、それではヴィヴィアン。やってみよ。」
「はい、かあさま。『我が内より来たれ!その力を以て我が身を助けよ!!』顕現せよ!!」
そうヴィヴィアンさんが魔力を練り込み詠唱する。
「・・・くっ!?」
「気を抜くでないぞ?もっと魔力を高めよ。そして、集中せよ!見えて来る筈じゃ・・・その姿が・・・名前が!!」
額から汗を流しながら集中するヴィヴィアンさん。
そして、
「・・・杖?」
だんだんとヴィヴィアンさんの前に光が集まり、形作られる。
「ほう・・・
『忍様、
そうなのか。
「ヴィヴィアン!集中せよ!その名を見られれば、認められた証拠である!己の資質を示せ!!」
ヴィクトリアさんから激が飛ぶ。
ヴィヴィアンさんもそれを聞き、更に魔力を放出する。
「・・・ミ、ミネル・・・ヴァ・・・あなたの名前は・・・ミネルヴァ!!」
【あなたを認めましょう、我が主よ。我が名はミネルヴァ。これより、主の力に。】
女性の声でそう鳴り響き、すっとヴィヴィアンさんの手に収まる杖。
「はぁ・・・はぁ・・・ありがとうございます、ミネルヴァ・・・」
そんなヴィヴィアンさんを嬉しそうに見るヴィクトリアさん。
「流石は妾とレンベルトの子じゃ!うむ!!まさか知識ある武具を召喚するとはのぅ!・・・これで、心置きなく・・・」
最後に、ぽつりと何かを呟いた。
何か、嫌な予感がする。
「・・・ヴィー。」
そんな中、ルールーが声を発した。
「なんだルールー?今はめでたい・・・」
「ヴィーは死ぬつもりなの?」
その言葉に、全員が固まった。
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