第52話 見守りし者 ルールー


「まずは自己紹介なの。ワタシの名前はルールー、大地を司る精霊なの。」


 三人がこの場を離れてから、精霊の少女・・・ルールーは口を開いた。


「それで、俺に何を聞きたいんだ?俺は世俗には疎いのだが・・・」

「あなたは外の世界からここに来たと言ったの。いつ頃来たの?」


 ・・・ここに来て、か。

 確か・・・


「半年くらい・・・だと思う。」

「半年・・・やっぱり気の所為なの?でも・・・」

「なぁ、俺も聞いていいか?」

「・・・内容によるの。」

「君・・・いや、あなた?う〜ん・・・様付けや敬語を使った方が良いか?」

「・・・ルールーで良いの。タメ口で良いの。特別なの。」


 むふーっと鼻息荒くそう言うルールーは年相応で可愛らしい。


「分かった。ルールーはさっき魔力の色と言ったな。それはなんだろうか?」

「魔力には色があるの。精霊にはそれが見えるの。温かい色の者も居れば、冷たい色の人もいるの。それは、そのままその人の人柄を指しているの。」


 ふむ・・・


「俺の魔力の色が似ている、と言ったな?誰に似ているんだ?」

「・・・内緒、なの。」


 教えてくれない、か。

 しかし、引っかかる。

 ゴウエンの件もあるし、もしかしたら親父かおふくろが関係していることもあるしな。

 だが、似ている事が良いことかどうかわからない。


 ・・・少し、さぐりをいれるか。


「ルールーはどれくらい生きているんだ?」

「ワタシは400歳位の子供なの。」

「・・・そ、そうか。子供か。」


 400歳が子供・・・人間とはやはり大きく違うな・・・


「と、ところで」

「あなたばかりズルいの。ワタシも質問するの。」

「あ、ああ。構わないぞ。なんだろうか?」


 ムスッとしているルールー。

 確かに子供っぽいな。


「あなたはニンゲンなのに、なんで他の種族と仲が良いの?」

「うん?仲良くなるのに種族が関係あるのか?」

「・・・やっぱり、似てるの・・・」


 また、似てる、か。

 

「なぁ、良いか?その似てる相手ってのはルールーにとってどんな相手なんだ?」


 俺がそう聞くと、ルールーは寂しそうな顔をして黙り込んだ。

 そして少しの間無言が続き・・・


「友達、なの。大事な仲間、だったの・・・だから今でも約束を守ってるの・・・」


 そう呟いた。


 そうか、なら


「俺の両親は九十九岩男っていう鬼族で、おふくろは九十九玲奈だ。どうもこの世界では親父はガンダンって名前で、おふくろはレナって呼ばれていた大魔法師だったらしい。聞き覚えはあるか?」

「!?」


 俺がそう言った瞬間、ルールーは目を丸くして驚愕の表情をしていた。

 

「レ、レナの息子・・・なの?嘘・・・でも・・・だから同じ色・・・暖かくて、落ち着くワタシの好きな色・・・」


 わなわなと震えながら一歩一歩近づいてくるルールー。

 そして直近まで来ると、俺の顔をよく見ようとしたので、俺は視線を合わせる。


「・・・似てる・・・レナの面影があるの・・・バカ鬼はどうでも良いの・・・」


 ・・・親父、バカ鬼とか言われてるが・・・


 そんな事を考えていたら、ルールーにぎゅっと抱きしめられた。

 

「お、おい!?」

「うう・・・レナ・・・レナの息子・・・ルールーは・・・ルールーはレナとの約束、守ってるの・・・ううう・・・」


 突然泣き出すルールー。

 俺は、最初いきなり抱きつかれたことに狼狽えたが、そう言って泣くルールーを見てすぐに落ち着き、抱きしめた。

 それが必要だと思ったからだ。


 それから少しの間泣いているルールーを抱きしめ続ける。


「シノブ!?あんた何してんの!?」

「うぇぇぇ!?シノブンが浮気してるぅ!?」

「ちょ、は、はしたないぞシノブ!!」


 そうしていると、戻ってきた三人が俺たちを発見して叫びだした。


『・・・三人とも、静かにしなさい。今は仕方がないのです。今は、ね。・・・忍様、今だけですよ?良いですね?』


 ・・・なんでこんなにプレッシャーを感じるんだろうか?


 それから少ししてルールーも落ちついたようで俺から離れた。

 その頬は少し赤くなっている。


 そして改めてお互いに自己紹介をした。

 それを聞いたルールーはというと、


「・・・色々ツッコミどころが多いの。能力の窓が喋るってなんなの?そんなの、レナだって持ってなかったの。それに、エルフと人魚がツクモって名乗ってるの。レナの息子の癖に節操ないの。それはあのバカ鬼の血のせいなの。あのバカ、やっぱり死ねば良かったの。」


 ・・・親父、ボロクソじゃないか。

 いったい、この子に何をしたんだ?


 俺が気になってそう聞くと、ルールーはムスッとして答えてくれた。


「あのバカ鬼はワタシのレナに言い寄って取ったの!しかも、最初ワタシを見た時チビ助とか言ったの!しつこいから魔法でボコボコにしてやったの!!ざまーみろなの!!」

「・・・親父・・・何やってんだ・・・」

「・・・伝説の鬼、なんだけどなぁ・・・聞きたくなかった・・・」


 俺とキョウカがげっそりとする。


「でも・・・あいつ、レナがピンチの時に、上手く使えなかったスキルを使ってしっかりと守ったの。ワタシ達の事も、なの。だから、一応、大事な仲間、ではあるの。その後はスキルを使いこなしてワタシと互角位にはなったの・・・バカはバカだけど、なの。」


 そう言って、不服そうに、でも、懐かしそうに言うルールー。

 どうやら、ちゃんと仲間だとは思われていたようだ。

 少し安心する。


「そう言えば、ルールーはおふくろと何か約束したって言ってたな?聞いても大丈夫か?」


 俺がそう言うと、ルールーは嬉しそうに笑った。


「良いの!レナの息子だったら教えるの!あのね?」


 そう言ってルールーは語り始めた。

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