第44話 絶望の中の光明

「まずは、鬱陶しい小娘共を動けねぇようにするか。」


 そう言うゴウエン。

 そんな事させるか!!


「キョウカ!!」

「っ!おう!行くぜゴウエン!!」


 俺とキョウカがゴウエンに迫る!


「しゃらくせぇっ!おどれらは後だ!!」

「がっ!?」

「ぐふっ!?」


 俺とキョウカの攻撃を躱し様に殴り飛ばすゴウエン。

 なんとか【防】を使ったが、思い切り吹き飛ばされ木をへし折りながら叩きつけられる。


「シノブ!キョウカ!!くっ!止まりなさい!『ダウンフォール』!!」


 上空からの凄まじい業風がゴウエンに叩きつけられる。

 しかし、ゴウエンの歩みは若干遅くなっただけで止まらない。


「なんて化け物!?リュリュ!」

「・・・うん、準備できてるよ。ウチの一番強力な魔法いくよぉ!『アクアフロウ』!!」


 リュリュが魔力を限界まで高めて手を翳す。

 

 そこから、凄まじい水流がゴウエンに放たれる。


「っ!!」


 ゴウエンはそれを躱そうとしたが、ダウンフォールの影響で大きくは動けず、その脇腹を掠めた。

 

「・・・おどれ、魚の分際でこの俺様に傷を・・・ぐちゃぐちゃに犯して最後は喰ってやる!!」


 怒りの表情でそう叫んで二人に飛びかかるゴウエン。


「させるかぁ!!」

「うらぁぁぁぁぁっ!!」

「邪魔だぁ!!」

「っ!!!!!」

「がはぁ!?」


 再度俺とキョウカはゴウエンに攻撃するも、そのまま殴られ弾かれる。

 キョウカはミスリルの手甲で防御していたが、その防御を突き抜けたのか顔面から出血してるし、俺は【防】で防いだがそれでも頭が揺れる。


「吹き飛べぇ!!」


 ドゴーーーーーンッ!!!!!


「きゃあっ!?」

「ああっ!?」


 ゴウエンがレイリーとリュリュの間に飛び込み、地面を殴りつけ衝撃波と礫で二人を吹き飛ばす。


「まずは魚!てめぇからだ!!安心しろ、殺しはしねぇ。犯れなくなっちまうからなぁ!!」

「ひっ!?」


 ゴウエンが再度『豪放』の構えを取る。

 

「リュリュ!!」


 そしてゴウエンから『豪放』が放たれる。

 リュリュに直撃するかと思った瞬間、リュリュの身体が空中で不自然に移動した。


「ん?」


 訝しげにゴウエンが呟く。

 リュリュはそのままレイリーのところまで引き寄せられた。

 よく見ると、レイリーの手から何か光る糸のようなものが伸びている。


 魔力変化か!!


 いまのうちに!!


「せぁぁぁぁ!!!」

「っと、その武器は危ねぇな。」


 俺の振り下ろしを躱し距離をとったゴウエン。

 

 すでにかなりのダメージを負いボロボロの俺たちに対し、まだまだ余裕のあるゴウエン。

 どうにも、勝ち筋が見えない。


『リュリュ、霧でゴウエンを包めますか?』

「・・・うん、出来るよぉ。水の子、人魚の姫レイリーが命ずる。水滴よ、集い霧となって包め『アクアミスト』」

「・・・んん?なんだこりゃぁ?見えねぇじゃねぇか。まぁ、良い。どうせ逃げられねぇ、逃がさねぇからなぁ!」


 ゴウエンの声。

 しかし、ゴウエンは警戒して動きを止めたようだ。


 だが、このままではどうにもならない。

 どうすべきか・・・


『・・・忍様、【鬼神の血】を使いましょう。』


 ポツリとリーリエが呟く。

 しかしあれは・・・


 以前リーリエに聞いた。 

 あのスキルは、破壊衝動と性欲に支配されてしまうと。

 もし今そうなれば、その向かう先は・・・


『ですが、今の現状を打破するにはそれしかありません。良いですか忍様。私もあれから調べました。【鬼神の血】は使いこなすのに凄まじい精神力が必要になります。それは、あのゴウエンでも完璧には使いこなせていない程です。』


 ・・・あれでか。


『履歴によれば、この世界の歴史上、【鬼神の血】を使いこなしたのは、ただ一人。伝説の鬼、ツクモのみです。彼が使いこなせたその理由は・・・彼は大魔法師を愛していたからです。彼は、愛するものを守る為に、そのスキルを使いこなしました。』


 伝説の鬼だけか・・・


「俺にできるだろうか・・・」

『忍様なら出来ます。私はそう信じています。』


 ストン、と胸にその言葉が落ちる。

 何故だろう?

 リーリエの言葉は、いつも俺に自信と元気をくれる。


「シノブ、わたしもあんたを信じるわ。だから、今からちょっと無茶して時間を稼ぐ。リュリュ、補助よろしく。」

「わかったぁ・・・シノブン、ウチもシノブンを信じるよ。その為に、今から命をかけるねぇ。」

「レイリー・・・リュリュ・・・」 


 二人が、笑顔で俺にそう言う。

 そんな二人の信頼に胸が熱くなる。


「シノブ、アタイもあんたを信じるよ。二人の事は任せとけ。アタイが絶対に死なせない。だから・・・男を魅せてくれよな!」


 カラッとした笑顔で俺の肩を叩くキョウカ。

 

 ・・・この信頼に答えたい。

 

 俺は・・・彼女らを守りたい!


「わかった、頼むみんな。リーリエ、俺がおかしくなったら呼びかけ続けてくれ。俺は・・・君の声なら届く、そんな気がするんだ。」

『忍様・・・はいっ!任せて下さい!』


 ・・・よし!


「スキル【鬼神の血】発動。」


 ドクンッ!!


 視界が赤く染まっていく・・・

 

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