第35話 ミスリル鉱石

「ミスリル鉱石?」

「そうです。元々我々が避難していた近くの山の洞窟にありました。ですが、そこは今や魔物や獣の巣窟です。それに、我々にはそれを使用出来る程の鍛冶師がいませんでしたからな。必要無かったので採掘しておりませんでした。」


 年重のエルフ種にそれを教えて貰ったのは、ある程度落ち着いてからだった。

 暫定的なアダマス氏族の長を、レイリーが指名した1番年のいっているエルフ種にお願いしていたのだが、そのエルフ種が教えてくれたのだ。


「私知らなかったんだけど。」

「この事は前氏族長とその周辺者しか知りません。前氏族長が独占するために。私が知っているのは、発見時に近くに居たからに過ぎません。レイリー様には黙っているよう言われておりましたから。」

「まったく・・・あの人はろくな事言わないわね。がめついったらありゃしない。」


 呆れたように呟くレイリー。

 俺もそう思う。

 加工できないのであれば、知っていようがいまいが変わらないと言うのにな。


『ミスリルは魔力を通しやすく、また、鋼よりも硬くなる金属です。入手出来るのであればしておいた方が良いでしょう。忍様の鍛冶スキルであれば、加工も出来るかもしれません。』


 リーリエの助言を聞き、俺たちはエルフ種の戦士数人の案内で、その洞窟に向かう事にした。


 道中、獣や魔物に何度か襲われたが、俺とレイリー、そしてリュリュが蹴散らした。


「おお・・・やはりお強い・・・我らも精進せねば!!」


 それを見ていたエルフ種の戦士達がより一層気合を入れる。

 俺たちは、エルフ種の戦士達に戦い方を教えながら先を進む。


 2日かけて山にたどり着くと、入り口の狭い洞窟を見つけた。

 

「ここからは、俺が先頭で行く。気配察知のスキルがあるからな。」


 生活魔法の【ライト】をレイリーが使用し内部に入る。

 この、【ライト】の魔法はその名の通り周囲を照らすというもの。

 松明を取り出した俺を止め、レイリーが使用したのだ。


 この魔法は光属性では無いのか?


 そう疑問に思った俺が問いかけると、リーリエが教えてくれた。

 ちなみに、リーリエの存在はアダマス氏族はすでにみんな知っている。

 最初は驚いていたが、今はもう慣れてくれている。


『忍様、生活魔法は違います。様々な生活魔法がありますが、それは属性外となっています。例えば【着火】の魔法や、【浄化】などがそれに当たるでしょうね。【着火】は種火、【浄化】は汚れを落とします。この世界の魔法を使える者であれば、ほとんどの者は出来るでしょう。』


 そう言われ、試しに【浄化】を使用して見る。

 すると、


Pon!


「おお!?」


 道中で汚れた服が少し綺麗になった。


『効果は弱いですが、生活には欠かせません。そして、只今忍様は【生活魔法】のスキルを取得しました。今後は自由に使用可能です。もっと早くお伝えしておけば良かったのですが、残念ながら生活魔法を忍様が認識するまでは取得出来なかったものですから。すみません。』

「いや、良いよリーリエ。教えてくれてありがとう。」


 なるほどな。

 これは良いことを聞いた。

 今度色々試してみよう。


 こうして、俺たちは洞窟内部に入る。

 中は末広がりになっており、蝙蝠が多数いた。

 襲ってくる蝙蝠も居たが、そんなものはものの数では無い。


 何匹か魔狼や魔物化した蝙蝠もいた。

 強さ的にはどっこいどっこいだ。

 俺やレイリー、リュリュの敵では無い。


 そうこうしていると、一際ひときわ広い所に出る。


 何もいないな・・・


Pon!


 むっ?

 なんで今スキル獲得音が・・・


『気配察知スキルが【弱】から【中】になりました!何かいるのでは!?忍様!警戒を!!』


 リーリエの警告に警戒する。

 すると、範囲の広がった気配察知に大きな何かが引っかかった。


「上だ!!」


 俺たちが上を見上げると、洞窟の天井に大きな蜘蛛を発見した!!


「魔物化してるわ!気をつけて!!」

「うわぁ!気持ち悪いぃぃ!!」


 レイリーとリュリュが叫ぶ。


「早いっ!?」

「くぅっ!?」

「下がれ!俺とレイリー、リュリュで相手をする!!出口を守って逃さないでくれ!!だが、自分の命が最優先だぞ!何かあったら逃げろ!!」

「わかりました!!ご武運を!!」


 エルフの戦士を下げ、俺たちは天井を動き回る蜘蛛に構える。

 その瞬間、蜘蛛は飛び降りてきた。

 俺たちはその場から飛び退すさる。


 でかい!!

 だが、でかいだけなら!!


「まずは私が行くわ!!森の子レイリーが命ずる!風よ我が敵を切り刻め!『エアリアルリーフズ』!!」


 リーリエからいくつもの木の葉状の風の塊が飛び、蜘蛛の魔物に直撃する。

 

「硬い!あまり傷がついてないわ!」

「次はウチぃ!海の子人魚の姫リュリュが命じる!水よ!一筋の槍となり我が敵を討て!『ウォーターランス』!!」


 リュリュの前に大きな水の槍が現れ、蜘蛛の魔物・・・魔蜘蛛に飛ぶ。


「ギィィィッ!!」


 刺さりはしなかったが、それでも体表を陥没させている。


「ふぇぇ!やっぱり硬いよぅ!」

「大丈夫だ!任せろ!二人共援護を!ヤツの目を狙ってくれ!!」

「「了解!」」


 二人の魔法が魔蜘蛛の目を狙う。

 奴は足を上手く使い、目を守っている。

 そうだ!

 それを待ってたんだ!!


「せぁぁぁぁっ!!」


 俺は気功術を使い高速でヤツの前に滑り込み、その勢いで腰鉈を振るう。

 狙いはヤツの関節!!


「ギュアアアアアア!!」

「もう一本!ふんっ!!」

「ギッ・・・!!」


 付け根付近から二本の足を切り飛ばした。

 やはり狙い通り関節は脆いようだ。


「この調子だ!全ての足を切り飛ばして動けなくするぞ!!」

「分かった!!」「うんっ!!」


 ここからはそれほど苦労は無く、魔蜘蛛は討伐出来た。

 やはり、俺たちは強くなっているな。


 Pon!


 魔蜘蛛を討伐したタイミングで、スキルも入手出来た。

 スキルは【暗視】だ。

 暗闇でも夜目が聞くらしい。

 助かるなこれ。


「おお・・・流石はシノブ殿だ!それにレイリー様もリュリュ様も凄い!!」

「なんという強さ・・・俺も頑張ろう!」


 エルフの戦士たちが駆け寄って来る。

 

 俺たちは笑顔でそれを迎えた。








「これがミスリル?」


 魔蜘蛛をアイテムボックスに収納した後、魔蜘蛛が居た場所の奥に光る鉱石を見つけた。

 俺が採掘してリーリエに鑑定を頼む。


『・・・間違いありません。ミスリルです!しかも純度の高いものですね!』

「やったわ!!」

「やったねぇ!」

「「「おおっ!!」」」


 ふむ、これがミスリルか。

 よし、これで武器や防具を作ろう!

 取り敢えず、もっと採掘してみるか。


Pon!


 何度も採掘をしていると、スキルの獲得音と共に、ピッケルを振り下ろす力が向上したように感じた。


『忍様、【採掘】スキルを入手しました。これで採掘時の品質の向上と疲労の軽減が望めます。』


 ありがたい。

 このペースで行くぞ!


 俺たちはかなりの量のミスリル鉱石を入手し、ほくほく顔で帰路に着くのだった。


現在のステータス

 氏名 九十九 忍(ツクモ シノブ)

 種族 人間 

 性別 男

 年齢 18歳

 状態 疲労(弱)

 スキル 言語理解 状態異常耐性【中】頑強 アイテムボックス 加工 気配 察知【中】気配遮断【弱】体術【強】剣術【中】気功術 気闘術 魔力操作 魔纒術 鍛冶 風魔法【中】水魔法【中】急所突き 覚醒 生活魔法 暗視 採掘

 称号 転生者 祝福を受けし者 切り開く者 **** |大物喰い《ジャイアントキリング お人好し 水中の王者 愛の伝道師 

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