第16話 空から光が降ってきた

 イーゴナの別の群れが、リーナ達に迫っていた。


「くそ、どうすればいいんだ!」


 僕は再び、村を包囲しているイーゴナの群れに切り込んだ、とにかくこちらのイーゴナたちを倒すしかない!


 しかし、現実は残酷だった。僕がどうにもできないうちにイーゴナたちがリーナ達の馬車に突っ込んでいく。


「り、リーナ!!」


 凄まじい衝撃音が響き渡り、リーナ達のいた場所に土煙が舞い上がる。


『あ、あれは!?』


 エレニアが驚きの声をあげると同時に、上空からボロボロになったイーゴナがぼとぼと落ちてくる。


『ら、ライトシールド!?』


 リーナの周りに光り輝く円形のシールドが張られている。


「なにそれ? リーナのスキルなの?」


『光の加護で強化された魔法ですが、スキルが上級にならないと使用できないはず…』  


 良かった。とにかく最悪の事態は防げたかにみえたが…


『マキアス様! リーナの様子が! やはり無理してたのね!』


 リーナは力なくがっくりとその場に座り込んだ。同時に展開されたシールドが色あせていく。

 まだ複数のイーゴナがシールドを取り囲んでいる、これじゃぁさっきと同じだ、間に合わない。


『ぎゃぁああ! マキアス様! こっちも虫がいっぱいきた~! こっちも虫ぃ~! リーナにも虫、虫、虫ぃいい!』

「お、落ち着いて! エレニア!」


『はぁはぁ…マキアス様! 先ほどの戦闘で獲得経験ポイントがたまりました! 新しいコード【太陽光創成】を獲得! もうやだ~~!! 私とリーナ達を助けて~!!』


 半泣き状態のスキルプレートから新しいコードを確認する。


□-------------------------------


【万物創成コード】


 使用可能コード


「太陽光創成」

 ☆空から光が降ってくる

 ・使用条件:天候状態が晴天の場合発動可能

 ・複数の目標捕捉が可能(使用者のレベルによる)


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「よし、【太陽光創成】! エレニア、発動だ!!」


『ひぃいいん! マキアス様! 上空で太陽光を創成中、目標を指定してください~ぎゃあ、近い近い! 虫の口の部分キモい!』


「エレニア! 目標は村周辺のイーゴナ53匹とリーナ達周辺のイーゴナ6匹!」


『へ!? ぜ、全部の目標を把握できているんですか!? 』


「頑張って全部見たから大丈夫!!」


『あ、はい…すご…。上空太陽光の創成80%完了!』


 空の一部が光を帯び始める。


『すべての目標(イーゴナ)を捕捉!』


 うぉおおお! これすっごい体力持ってかれる! 

 気合で踏ん張る!


『マキアス様! 太陽光創成完了! 照射準備完了!』



「――――――エレニア! ぶちかませ!!」



『目標に照射開始!』


 エレニアの言葉とともに、晴れた上空から光の筋が大量に地上に降りそそぐ。

 イーゴナ達に次々と命中して息の根を止めていった。光の雨でコルナ村のまわりが埋め尽くされるかのような光景だ。


「ラーン副隊長! 空から何か降ってます!」

「こ、これはマジックアロー? いやなぜ空から?? とんでもない数だぞ!」


 騎士たちも虫が光の矢に貫かれていくさまに、驚愕の声を漏らす。

 光の雨が降り注いだ後には、イーゴナの死骸がそこら中に広がっていた。光の矢が的確に命中したのだろう。どの個体も複数の穴が綺麗にあいている。


『す、すごい…ここまで正確に目標をロックできるなんて』


「ふう、これ凄く集中力がいるね」


『マキアス様、凄すぎます…』


「イーゴナの配置がわかりやすかったからね、リーナの周りと村の周り、どちらも円状に取り囲んでいたから。あと僕は目がとてもいいんだ。それにイーゴナの匂いは良く知っているからね、目標を特定しやすかった」


『な、なるほど。さすがはマキアス様! 後半はちょっと何言っているかわからないですけど』


 イーゴナを一掃したことを確認すると、僕はすぐにリーナのもとに走った。


 リーナはすでに立ち上がっており、僕に気づくとフラフラとこちらへ歩き始めようとして、再び倒れそうになる。僕は慌ててリーナの傍に駆け寄って、彼女を抱き上げた。


「リーナ! 大丈夫かい!」


「マキアス…大丈夫よ…ちょっと慣れなくてクラクラしているけどね…」


「そっか、とにかく無事で良かった。何か僕でやれることはある? あ、そうだ体力回復ポーションを出そう。え~と、予備は馬車にあるのか。ちょっと取ってくるよ」


「マキアス…このまま…」


「え? なに?」


 リーナの顔が赤い。というかなんか体全体も温かい感じがする。


 あ、今リーナを思いっきり抱きあげていることに気づいた。


「「………」」


 2人とも無言になる。リーナが心配だったとはいえ、勢いで抱きあげた自分が恥ずかしい。抱き上げたのはやりすぎたと今更後悔したがもう遅い。そして抱き上げたあと何をすればいいのかよくわからない。


 降ろそうとすると、それはダメらしく、きつめに睨まれた…。


「マキアス、血が…」


 僕は鼻から血が出ていた。


「うん僕は大丈夫だよ。たぶんスキルを使用する際にすごく集中したからだと思う」


 なんか新しいコードを使うたびにボロボロになってるなぁ。やはり、僕自身がもっと成長しないと…。


 ちなみにリーナを抱き上げたから鼻血がでたわけではない。誤解があってはいけないので、念押しで言っておく。「王族抱上げ型お触りハレンチ罪」とかで国外追放されるのだけは避けなければならない。


「とにかく、みんな無事でよかった。まずは村に行こう」


 そして、リーナは村に着くまで抱っこでした。





【補足情報 マキアスの獲得したコード一覧】


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【万物創成コード】


 使用可能コード


 ・「隕石創成」

 ☆空から石が飛んでくる


 ・「風力創成」

 ☆風をおこす


 ・「水分創成」

 ☆水を作る


 NEW 「太陽光創成」

 ☆空から光が降ってくる

 ・使用条件:天候状態が晴天の場合発動可能

 ・複数の目標捕捉が可能(使用者のレベルによる)


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