球技大会
現在、バレーコートではAクラスとBクラスの女子達による熱い戦いが繰り広げられていた。
リベロ無しの6人制。
2セット先取した方の勝利。
球技大会用の時短ルールだったが、両チームの実力が拮抗していて、既に1時間以上が経過していた。
そして、1ー1で迎えた第3セットは、18対14の4ポイント差でBクラスがリードしていた。
「なあ、Bクラスの沢村と水原って南中のバレー部だったらしい」
「マジかー。めっちゃ上手いもんな〜」
俺の隣で戸村君と安達君が相手チームの話をしていた。
確かに、その二人はずば抜けて上手だった。
「Bクラス、ズルくない?」
「ちょっと〜ウチらも負けてないよ〜」
「だな、嵐が頑張ってくれてるし。それに……」
そう言う戸村君の視線の先には、風邪で休んでいる山川さんの代わりに入った久遠さんと、
スパンッ!!
クールにアタックを決める絹ちゃんがいた。
……昔から絹ちゃんは手を抜かなければ、大抵の事を人よりも上手に熟した。
所謂、超人タイプの人間だった。
ただ、普段から手を抜く事しかしないので、中学の時もほとんどのクラスメイトはその事実を知らなかった。
だけど、今日は珍しく手を抜いていない。
激レアも激レアな本気モードだ。
「ナイスアタック!」
「志倉さん凄いな!」
「てゆーか、ヤバすぎ〜」
「なあ、志倉さんって部活入ってたっけ?」
「知らんけど、かっけー」
「さあ、追い上げ開始っしょ!!」
その言葉通り、サーブ権が移ってからの怒涛の三連続サービスエースが決まった。
久遠さんの活躍に陽キャグループの盛り上がりは最高潮に達していた。
「嵐ーっ、惚れるわー!!」
「きたきた」
「追いついたー!!」
「我が軍は圧倒的じゃないか!」
俺もその声援に反応して、心の中でガッツポーズをする。
そのまま、Aクラスは流れに乗って、続け様にブロックポイントを奪取した。
「志倉さん、ナイスブロック!!」
「神光臨!!」
「で、ついに〜」
「逆転したんじゃね?」
「スゲーじゃん!!」
コートでは久遠さんが腕を上げて絹ちゃんを待ち構えている。
いつもなら華麗にスルーする絹ちゃんもハイタッチに応えていた。
そんな風に試合が盛り上がるのと比例して、さっきから他クラスや他学年のギャラリーまで多くなっている。
バレーコート周辺の人口密度がヤバい。
ボッチの俺が生息出来る酸素濃度を明らかにオーバーしていた。
ただ、その賑やかな熱量と喧騒に混じって、出来れば会いたくない奴の声が聞こえてきた。
「
佐久間……!!
「そうですか?私の方が可愛くないですか?」
「まあ、雷も可愛いけどよ」
「本当ですか?」
「ああ」
「ふ〜ん、先輩は誰にでも言ってそうですけど」
「そんなわけねぇだろ。それより、今度、お前ん家で妹も誘って3
「はぁ?先輩って、それしか考えてないですよね?まー私は好きだからいいですけど。でも、残念でした。嵐はそういうのに興味が無いみたいなんで」
「あ?俺が興味を持たせてやるよ。そう言っとけ」
「あはは、伝えておきますね〜」
……そんな会話が聞こえて来て吐きそうになった。
こんな奴と……
こんな奴と……
悠月先輩は……
想像しただけで、更に胃液が逆流した。
俺はトイレに移動しようとして……仕方なく佐久間の横を通り過ぎた。
あの時……
俺は……
なぜ、気づかなかったのだろう?
佐久間が絹ちゃんを見ていた事に……
◆
沢山の応援をありがとうございます。
続きの気になる方は、引き続き応援をよろしくお願いします。
がんばれます。
改稿版
得点差間違えていました。計算力……
戸倉君→戸村君
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