オールスターズ・アタック その2
「…………不覚、足りぬか……!」
故に、お代わりが来た。
ラルヴァの胸部三包囲、囲むように新たな空間門が開き、
「≪神髄≫――――!」
「―――≪
「絶招!!」
大戦斧を振り上げ、灼熱を構える御影が。
リボルバー同士を打ち鳴らし、銃口の極光を宿したトリウィアが。
両腕二翼、背からさらに四翼。合計六枚の翼を羽搏かせ、趾から全身を回転させて突き進むフォンが。
「――――≪天津叢雲≫ッッ!!」
「――――≪
「行雲衝天螺旋脚ゥゥゥ―――!!
帯電する灼熱の大斬撃を。
七属性を内包する深淵の砲撃を。
音速の数倍、局所的暴風を纏った飛び蹴りを。
三方向から放たれるアース111でも最高峰、二つの究極魔法と、それに匹敵する必殺技。
直前の大自爆を上回る衝撃波。あまりに振動に時計塔に亀裂が入りながらたわみ、周囲の木々も大きく揺れる。
――――それでも、ラルヴァは倒れない。
上半身が吹き飛びながらも、それでも立っていた。
断面図から瘴気が蠢き、再び元の形を取ろうとしている。
その光景を観測しながら時計塔の裏に浮かぶのはデフォルメされた目とやはりデフォルメされた脳みそとそこから伸びる数本のアームだった。
それを見た巴、ロック、マリエルは半目になって、
「………………なにそれ?」
「構成ナノマシンの九割を消費した。故、緊急モードである」
「何故デフォルメ脳髄」
「こういう、求めていたであろう?」
デフォルメ脳髄、渾身のドヤ顔である。
最も、目だけなのでいまいちわからなかったが。
『―――何を下らない話をしているんだ。それどころじゃないだろう。もっと表面削らないとコアが出てこない。というか、君たちちょっと火力低くないか?』
「むむっ!!」
三人と一個がそろってアルマの念話に眉をひそめた。
脳髄には眉はないのだが。
「これでも本気ですわ! というか、こんな巨大モンスターに臆することなく挑むのを褒めて欲しいですわ!」
「うむ。こんなの我が世界には出ようもなかったぞよ」
「確かに。引退した人妻引っ張りだして戦わせてその物言いは聊か人権侵害であります! 今日日それらしき団体が黙っていないであります!」
「然り。というか仮にも次元世界最高の魔法使いなのであろう。それだけ言うならば、それらしいところを見せることを所望する」
『――――だぁあああああ!! うるさいな君たちは! こっちもこっちで準備があるっていうのに! ほら!!!』
「……めっちゃキレられたでありますな」
「推測、他のメンバーからも同じこと言われた」
「ナギサ殿の歌もいつの間にか止まっておるしなぁ」
「しかし、ほらって何がほらなので――――――」
言いながらマリエルは空を見上げて止まった。
釣られてロックも、巴も、マキナ=脳髄も空を見上げ、
「――――――えぇ?」
空から隕石が振ってくるのを見た。
●
「んー、まぁそろそろかな」
顎を軽く上げ、腕組しながら息を吐く。
眼下、転生者組全員にせっつかれて鬱陶しかったので腹いせに隕石を落とした結果がある。
流石にそのまま落とすと転生者組も巻き込んで後から酷いことを言われそうだったので、被害範囲をラルヴァに限定した上で、だ。
「さて、ウィル。もうそろそろ体力気力も回復しただろう」
「……あ、は、はい! ……凄いですね」
「ん」
眼の前、指の動きと腕の振りだけで隕石を召喚したアルマに驚きつつも彼は頷く。
ここで引かず、素直に感嘆の声を上げるのがウィル・ストレイトという少年であり、それに思わず顔を赤くしてしまうのがアルマ・スぺイシアという少女だ。
「……こほん、よし」
空間転移による隕石召喚は片手間で数メートル程度だが、確かな威力を発揮した。
直前の連撃も含めて、ラルヴァの構成存在を9割近く消し飛ばしただろう。
≪D・E≫ゴーティアを倒すにはここまでやって、後もう一息というレベルである。
何せちょっとでも分身体を作っていれば、時間を掛けてその世界内で再生する。倒しきるにはその世界のゴーティアを眷属を含めて一か所にまとめ、再生を上回る速度で削り切り、最後の最後まで消滅させるしかない。
それをしても尚、次元世界に散らばるゴーティアの断片を倒すだけに過ぎないのだ。
けれど―――今日は違う。
何も彼と一緒におしゃべりするために掃討を他の仲間たちに任せていたわけではないのだ。
「では大詰めと往こう。あ、そうだ、ウィル」
「はい?」
「君の
「………………………………えっ????」
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