第34話、帰宅後の勉強
「兄さん……この問題が分かりません……」
「えっと。これはな、掛け合わせる順番を工夫して……」
「順番……あっ、解けましたっ!」
「正解だ。よく出来てるじゃないか」
問題が解けたご褒美に頭を優しく撫でると純白はへにゃりと目を細める。そしてもっと褒めてもらいたいと純白は次の問題に取り掛かった。
学校から帰って来た後、俺と純白はすぐに勉強を始めていた。もちろん勉強の会場は俺の部屋だ。
丸型のテーブルを前にして隣り合うように座り、肩を寄せ合って勉強に取り組んでいる。
「兄さん、本当にすごいです。わたしの知らない事、なんでも知ってますっ」
「純白も勉強したらすぐ覚えるよ。分からないところがあったら何でも聞いてくれ」
「はい、兄さん。ありがとうございますっ」
俺の教えた事を一生懸命ノートに書き込む純白。こうして純白と一緒にいるとすごく癒される。純白の可愛らしい声を聞くと安心感が増していくのだ。
「ねえ兄さん、ここの問題はどうしたらいいんですか?」
「ん、見せてごらん」
「えっと、ここです。ここが分からなくて……」
「ここはな、まずこの式を当てはめてみな。そうしたら答えが出てくるはずだよ」
「なるほど……さすがです、兄さんっ!」
カリカリとノートに計算を書き込んでいく純白。俺はそんな純白の横顔をじっと見つめていた。
「出来ましたっ、どうですか?」
「うんうん、合ってるよ。えらいな、純白は。よしよし」
「えへへ、頭ぽんぽんされるの嬉しい……」
「テストで良い点取れたら頭ぽんぽんより純白が喜ぶ事してあげるぞ」
「本当ですか!? それならもっと勉強します、テスト絶対に頑張りますっ」
俺から褒められたくて純白はやる気に満ち溢れている。そんな姿が健気で可愛くて俺もどんどん勉強にのめり込んでいく。
俺が丁寧に教えると純白はぐんぐんと実力を伸ばしていき、勉強開始から二時間ほどでかなりの要領を得ていた。純白は賢い子だし俺も教え方は上手な方なので、この調子なら中間テストでも良い点数が取れそうだ。
テストまでの期間はゴールデンウィークを合わせて二週間とちょっと。これからも続けていこう。
「よし、結構進んだな。そろそろ休憩がてら夕飯にしようか。何が食べたい?」
「リクエストして良いんですかっ? なら兄さんのナポリタンがまた食べたいです」
「じゃあ今から作るよ。ちょっと待っててくれ。純白の為に美味しいのを作るから」
「やったあ! 兄さんのナポリタン、とっても美味しいから大好きなんですっ! ありがとうございますっ!」
「嬉しいこと言ってくれるな。それならたくさん食べてもらえるように頑張らないとだ」
純白が喜んでくれるなら俺はいくらでも頑張れる。料理をする時間が好きだし、純白が笑顔になってくれる事が何よりも幸せだ。
そうして立ち上がってキッチンに向かうと純白は親鳥を追うヒヨコのように俺の後をついてくる。
俺の顔を満面の笑みで見上げてくる純白。
可愛いな、本当に純白は可愛い。
純白が俺の妹で良かった、こんなに可愛い妹が傍に居てくれるだけで毎日が幸せだ。
そうして今度は二人でキッチンに立って俺達はナポリタンを作り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。