第23話、猫
俺と純白はショッピングモール内にある大きなペットショップに訪れていた。
というのもモール内を散策していたら、たまたまペットショップを見つけた純白が地面に足を生やしたみたいに動かなくなったのだ。
「に、兄さん。ここ……寄っていきたいです」
上目遣いをした純白は俺の服の袖を掴んで離さない。
そんな可愛い純白のお願いを俺が断れるはずもなく、二人でペットショップへと足を踏み入れた。
店内には犬や猫はもちろんのこと、鳥や爬虫類などの珍しい動物まで勢揃いしている。
純白は目を輝かせながら、ガラスケースの向こうでゴロゴロと転がる真っ白な子猫に釘付けになっていた。
「シロスケっ♪ ほらっ、呼んだらこっち向きましたよ、兄さんっ」
「シロスケって純白……」
純白のネーミングセンスに思わず苦笑いを浮かべてしまう。だけどシロスケと呼ばれた真っ白な子猫はこちらを向いて可愛らしく鳴いた後、ガラスケース越しの純白にすりすりとすり寄っていた。
「シロスケ、すっごい甘えん坊さんですっ。それにこのフサフサの毛並みがとっても触り心地良さそうですっ」
「にゃあ」
「えへへ、シロスケ可愛いですね〜」
「ごろごろ」
シロスケは純白に向かってごろごろと鳴いている。どうやら本当に甘えん坊の子猫のようで、純白はそんなシロスケに夢中だ。
「シロスケって純白とそっくりだな」
「えっ、わたしとシロスケがそっくりですか?」
「ああそっくり。こうやってスリスリするところとか、甘えて可愛い声で鳴いてるのとか、純白にそっくりだよ。なあ、シロスケ。お前達はそっくりだよなー」
「にゃあー」
まるで俺の言葉に頷くように鳴き返す子猫のシロスケ。それを都合よく解釈して純白の方を見た。
「うんうん。シロスケは人懐っこくて凄く可愛い。シロスケも言ってるから間違いないな。純白とシロスケはそっくりだ」
「それってつまり、わたしが人懐っこくて可愛い猫みたいっていう意味ですよね……?」
「そうなるな。前から思ってたんだ、甘えてる時の純白って猫みたいで可愛いよなーって」
「そ、そんなつもりはなかったんですけど……甘えてる時のわたしって、猫さんみたいだったんですね……」
「ああ、猫っぽい。でもツンデレなタイプの猫じゃなくて、デレデレなタイプの猫だ。いつまでも構ってーってくっついてくるし、すりすり頭をこすって甘えてくるし、最高に可愛いんだよなあ」
「シ、シロスケに負けないくらい、甘えるタイプなのは否定出来ないかもです……。だって兄さんにくっつくの幸せすぎて止められないから」
「よしよし。そんな純白の為にチューリでも買ってくか。ほら純白の大好物だぞー」
「わぁ〜い! チューリですっ! ご馳走です、いただきます! って、それは猫さん専用のおやつでわたしが食べるものじゃないですよぅ……!」
「あはは、純白が猫パンチしてきた。ご機嫌を取る用に猫じゃらしも必要だな」
俺が冗談を言うと頬を膨らませた純白はポカポカと俺を叩いてきた。もちろん全然痛みなんて感じないが、その仕草も可愛らしいものだ。
「もうっ、兄さんのいじわるーっ。わたしをペット扱いしてー!」
「そんな怒るなって。ほら機嫌直せって」
俺は優しく包み込むようにして純白の頭を撫でると、怒って頬を膨らませていた妹はすぐに元通り。気持ちよさそうに目を細めて「ふにゃぁ……」と猫のように擦り寄る姿は本当に可愛らしい。
やっぱり純白は猫にそっくりだなぁ、とそんな事を考えながら純白との楽しい一時を過ごすのだった。
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