小休憩。最弱で最強な君。
「ごめん、ごめん。すっかり忘れてましたよ、つき君」
「メェメェメェ〜!!」
《ひでぇーぞあきさめ〜!》
「あははは...」
「つきちゃん、ごめんなさい!リズもきがつきませんでした」
「私もです。ごめんね、つきちゃん」
「メェメェ〜」
《ゆるすぞ〜》
つき君もあんまり気にしていないみたいですね。ていうか、何処に居たんですかね?朝はレオン邸では見かけなかったのですが。
出発して直ぐ、猛スピードで追いかけてきたウルトラピンクの塊に気付き拾った後、特にトラブルに遭遇する事も無く最初の休憩地に到着。
ガルトは辺境で、王都までは直線距離で300kmほどあり、街道を走る為なんだかんだで400km近くなるみたいです。だいたい12、3日くらいの予定だそうです。天候やトラブルで時間が大きく前後するので、くらい、です。
マカロンから降りた私は、大きく伸びをして体を解す。
リズやルーチェも降りてきて私の真似をして体を解す...いや、貴女達は快適だったでしょ?
マカロンの車内は、ロイロとソラによって神域化が絶賛進行中。
どうやらロイロの部屋...あの空間のようなモノを新たに創り出した模様。
「私も自分の部屋が欲しい!」というソラの願いから、「じゃあ、今から創ってマカロンと繋げるニャ」という謎の神様理論から、車内を通常の座席と、20畳程の部屋に切り替え可能にしてしまいました...勝手に。まぁ、いいんですけど。
リズとルーチェはロイロの部屋同様にソラの部屋にも移動可能(勿論私も行けます...たぶん)なのでさっきまでそちらで遊んでいたのです。
「ソラちゃんがてれび?をよういするって言ってました!」
「何か、れんどら、を観たいって。てれびって何でしょうか、アキサメさん?」
「今度、ロイロの部屋で一緒に観ましょうか。
それにしても...いや、良いでしょう。楽しんでいるのならそれが一番ですね」
自由ですね〜、神様達って。
助手席につき君を乗せて運転してましたから、退屈では無かったですけど。
カメリアさんは、ソラの部屋には行けないので、座席に座って流れる景色に興奮していましたよ。「こんなに揺れないなんて!」とか「このイスの座り心地凄い!」とか大興奮でした。今は車から降りてストレッチしてます。
空間を切り替えた時に両方に人が居ても大丈夫な仕様で良かったです。
因みに、お子様達は走り出して10分くらいで飽きたので、ソラの部屋に行ったのです。
お子様達も、自由ですね。
そんな事を考えていると、エリスさんがこちらに向かって歩いて来ました。
「アキサメ、凄いね!この魔道車!え〜っと、マカロン、だったかしら?」
「ええ、マカロンです。どうやらこのくらいの道なら大丈夫の様ですよ」
「ふ〜ん...。ねぇ、アキサ『駄目ですよ、主様』...」
「ちゃんと、馬車に乗って頂かないと困ります」
エリスさんの後ろから
そりゃね、護衛の立場からしたら大人しくしていて欲しいでしょう。
「エリスさん、今度、機会をつくってマカロンで旅行でもしましょう。今回は我慢して下さいね」
「!?...うんっ!そうしましょう、それが良いわ!約束よ、アキサメ」
「ええ。約束です」
一転してご機嫌な表情のエリスさんを見て、カイン君も苦笑い。目礼してきたので頷いておく。
「エリスお母さん、楽しみですね!」
「えぇ、リズ。何処に行こうかしら?どうせなら〈ユーミヤ〉から出て、〈
「うわぁ!私も違う大陸を旅行してみたいです!」
女子でキャイキャイと盛り上がっている傍で、カイン君はカメリアさんと護衛談議を始めています。
やれやれ、と不意に視線を感じて振り向いた先にーー
「!?.......あ、ごめんなさい、つき君...」
マカロンの助手席の窓ガラスいっぱいにへばり付くようにして、コチラをジッと見つめているウルトラピンクの塊...。
その瞳は普段の眠た気なモノとは違い、これでもかと見開かれ、私に訴えかけている。
ーーあ〜き〜さ〜めぇ〜、ま、た、わ、す、れ、て、ん、ぞ〜
「あはは、あははは...」
つき君は助手席から降りると、一目散に走り出し自由を謳歌しています。
それに気付いたリズが追いかけていき、更にそれを見たカメリアさんが追う。
「まて〜〜!きゃはは!」
「お嬢様!待って、転んだら危ないから!」
「メェメェメェメェメェ〜!!」
《つきはじゆうのみだ〜!!》
そんなほのぼのとした光景を見ながら、私はテーブルとイス、ティーセットとお菓子を順に取り出してティータイムの用意を始める。
私の意図に気付いたルーチェがお手伝いを申し出てくれたので、コンロの魔道具(便利なので購入しました)でお湯を沸かしてもらう。
「茶菓子は...久しぶりに和菓子にしましょうか。リズもルーチェも好きですしね」
「やった!和菓子♪」
「あ!私も好きよ、和菓子」
エリスさんには、レオン邸での3時のおやつで出した〈鬼まんじゅう〉がヒット。
あぁ、鬼まんじゅうは、さつま芋と小麦粉で出来た蒸し菓子で、愛知県の郷土料理ですね。
〈富士見堂〉で偶々さつま芋フェアをやっていて仕入れたんですが、エリスさんにはごろごろのさつま芋の優しい甘さと、あの食感がお気に召したみたいです。
それからすっかり和菓子信者となりました。
「メェメェメェ〜」
《つきはだいふくでよろ〜》
「はいはい!リズはカステラが食べたいです!」
おや?いつの間にか戻って来ましたね...ていうか、リズ。なんでつき君に乗ってるんです?乗馬ならぬ乗羊?乗スライム?...スライムライダー、ですね。
「ゼェ、ゼェ...ハァ、ハァ、つ、つきちゃん、足速すぎるよ...」
四つん這いで肩で息をするカメリアさん...ご苦労様です。
この
走り出した
さっき見た時は何の冗談かと思いましたよ。
その事を運転中に聞いてみたら、
「メェ?メェメェメェメェ、メェメェ〜」
《そうか?つきはさいじゃくのすらいむで、さいきょーだからな〜》
...最弱の種族最強、ね。
最弱で、最強...。
彼を知り己れを知れば、百戦殆うからず。
彼を知らずして己れを知れば、一勝一負す。
彼を知らず己れを知らざれば、戦う毎に必ず殆うし。
【
「えぇ、君は
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