140話 重なる来訪者



------(テンタ視点)------☆




 3日後、トム(バルジャン)さん、ミリー(トム妻)さん、


シェリーさん、タミーさんにガイゼル(ガンボー)さん、アナ


さん(ガイゼル妻)は、ここ『ガンブレーブ』のチームハウス


から全員が、ケンタウロスのレツさんダイさんが引く馬車に乗


り出発する。


「いってらっしゃーい」×3


「ワン!」


俺、三毛猫オトアにマネージャーのヴィクセン(狐耳)さんが手を


振り、見送る中、かりゅうも手は降らないが見送った。


 トム(バルジャン)さん達皆は、まず馬車に乗り冒険者ギルド


本部にある低位魔法円に向かい、そこで、トム(バルジャン)さん、


ミリー(トム妻)さん、シェリーさん、タミーさんにアナ(ガイゼ


ル妻)さんは馬車を降り、そのまま転移魔法円で俺が冒険者試験を


受けた冒険者育成用の砦『ジャスタン』にそのまま転移し、残った


ガイゼル(ガンボー)さんだけがそのままレツさんダイさんが引く


馬車に乗ったまま、冒険者北支部へと向け転移し、そこから実家の


あるカザード国へ向かうそうだ。


 今聖クリスタル教会から大量に注文された武器の製造が今まさに


佳境を迎えているそうで、おじさんが経営する工房の『ガウ』での


お手伝いのためだそうだ。


一緒に行った馬車を引く、レツさんダイさん(ケンタウロス)は、


ガイゼル(ガンボー)さんがいつ帰れるか分からないからというこ


とでカザード国にガイゼル(ガンボー)さんを下したら一旦こちら


に戻って来るらしい。


 出発するトムさん達を『ガンブレーブ』のチームハウスの前で


見送った、俺、三毛猫オトアにマネージャーのヴィクセン(狐耳)


さんは、を『ガンブレーブ』のチームハウスの店に戻り、明日からの


営業の手順を再確認するのだった。













 次の日の朝、俺と三毛猫オトアは、朝5時30分に起きて支度を


済ませ、1階の店に降りる。


「おはようございます」×2


「おはようございます」


俺と三毛猫オトアは、同じように自室から店に降りてきたマネージ


ャーのヴィクセン(狐耳)さんと朝の挨拶を交わし、3人で開店の準備を


する。


 朝6時に取引先のパン屋さんと卵屋さんと八百屋さんがそれぞれの


品を届けてくれたので、それを受取ると同時に、俺が卵50個を店の


コンロ風の魔動機で湯を沸かし、卵をゆでる間に、ヴィクセン(狐耳)


さんが、朝のトースト用のパンをパン用のナイフで切り出す。


その間に俺がモーニングの付け合わせのサラダ用の野菜を水で洗い、


適当に切り、大きなサラダボールへと放り込む。


次いで、コーヒーのサイフォンのセットを済ませる。


その間に、三毛猫(オトア)は、誕生日にもらった空飛ぶサーフボード


に乗り各テーブルの上を拭いて回っている。


 そんなバタバタの中、いつも間にか部屋から降りてきたかりゅう


が俺に体をくっつけて、尻尾をフリフリしてきた。


禍龍かりゅう俺達の朝ごはんはまだだから」


と言うと、かりゅうは、”プイ”っとそっぽを向き、どっかへ


行ってしまった。


3人で必死に用意をし、何とか開店時間の8時を迎えると、ヴィクセン


(狐耳)さんが、店の扉の鍵を開け、扉に掲げた木札を裏返し”OPEN”


の文字を表にする。


 しばらくして、\ガチャ/”カランコロンカラン”


「いらっしゃいませw」×3


お客さんが、続々と入店してくる。


 次々とお客さんが入ってくる中、1人のお客さんがヴィクセン


(狐耳)さんに声を掛ける。


「あれ、ママ(ミリー)達は?」


「ああ、10日ほど出かけてるんですよ」


その常連風のお客さんにそうヴィクセン(狐耳)さんが言うと、


”ふぅ~ん”って顔でそのお客がいつも座っているのだろう、


カウンターの席に黙って着くと、すかさず、サーフボードに


乗った三毛猫オトアが近寄り、


「ご注文は?」


と聞くと、そのお客は”えっ”って顔で一瞬驚きはしたが、三毛猫オトア


のそのかわいらしい姿にニッコリ笑い。


「ほう~猫ちゃんが注文を聞いてくれるのかw」


と言いながら、


「じゃ~いつもの」


とおっしゃるが、三毛猫オトアがその言葉に固まっていると、


カウンター越しにヴィクセン(狐耳)さんが、


「あ・はいホットのモーニングですねw」


と声を掛けそのお客が頷くと、側に居た三毛猫オトアは、サーフボード


の上に置いた伝票のモーニングに✓を入れ下にあるコーヒー


に✓を入れ


俺の所にサーフボードでやって来たので、俺はサーフボードの上にある伝票を


1枚ちぎると、俺の目の前に置き、トースター風の魔動機に食パンを入れ、


同時にカップにコーヒーを注ぎ、そして小皿に入ったサラダとゆで卵に


砂糖の壺とミルクの入った入れ物を合わせ、パンが焼けると同時にその


すべてをお盆に載せ、


「カウンター2番さん上がったよ」


三毛猫オトアに声を掛けると、サーフ―ボードに乗った


三毛猫オトアが、俺の所までやって来るのを見て、お盆に


乗ったモーニングセットをそれに載せると、三毛猫オトアは、そのまま


先ほどのカウンターのお客さんの所まで持って行き、


「お待たせしましたw」


と声を掛けると、そのお客はニコニコしながら、


「おう、ありがとうねw」


と言いながら自分で三毛猫オトアが乗るサーフボードに載せたお盆を


文句も言わず自分でとって、かつ、ついでに三毛猫オトアの頭を撫でる。


その間に、ヴィクセン(狐耳)さんが、テーブル席のお客の注文を取ると、


その伝票を俺の前に置くと同時に、彼女は注文にある紅茶を順に入れて


行く。


俺はコーヒーの分の注文の用意をして行き、それをせっせとサーフボー


ドに乗った三毛猫オトアが運んで行くのだった。













「ふぅ~」


と俺がため息をつく。


時刻は朝の10時。


朝のモーニング目当ての客が引き、一息ついた俺。


「じゃぁ、私達も朝ごはんにしますかw」


そんな俺にヴィクセン(狐耳)さんが言う。


「そうですね」


「はいw」


それに俺と三毛猫オトアがそう返事を返した時だった。


何処からともなくかりゅうが現れ、こっちに向かって


尻尾をブンブン振った。


(あーわかったよ、ちょっと持ってろ)


と思いながら、朝のモーニングの残りを皆で食べる。


俺とヴィクセンさんは、トースト2枚で、三毛猫オトアは1枚


に各自ゆで卵1個ずつとサラダに、俺はコーヒーで、ヴィクセン


(狐耳)さんと三毛猫オトアは紅茶と言っても三毛猫オトアの紅茶は


冷ましたもの。


で、かりゅうは、トースト3枚にゆで卵3コに余ったサラダ


をてんこ盛り……。


「いただきますw」×3


俺達が手を合わせ食べようとしたら、既に食べ始めていたかりゅう


が、”バリバリ”音を立てながらゆで卵を殻ごと食べだした。


(お前、普通殻を剥くんだぞ!)


と思いながら、三毛猫オトアのゆで卵の殻を剥いてやる俺。


もうすでに食べ終わったかりゅうが俺の方を見て、尻尾を


”ブンブン”振るが……。


「もうない!」


と俺が言うと、急に尻尾を振るのをやめまたもや”プイ”と何処かに


行ってしまった。


(お前さー、ちょっとは手伝え)


と思う俺だった。













11時30分ごろそろそろお昼目当てのお客さんがやって来る。


\ガチャ/”カランコロンカラン”


「いらっしゃいませw」×3


お客が次々に入ってくる中、やはり常連客と思しきお客さん達から


は、


「あれ、ママ(ミリー)達は?」


という質問が相次ぐが、そのたびに、ヴィクセン(狐耳)さんが、


「ああ、10日ほど出かけてるんですよ」


と答えると、以外にも”あっそ”て感じで、次々に席に座って行く。


「1番テーブルオムライス2」


「続いて3番テーブルカレーライス3」


「4番テーブルナポリタン1」


とテーブル席に注文を聞きに行った三毛猫オトアの声が店に


響く。


俺はそれを聞き手元の伝票に”さー”と記入する。


朝の時はモーニング1手なので三毛猫オトアに伝票を記入さ


せたが、お昼はメニューの種類が多いので、俺が手元で書くこと


にした。


伝票を”さー”と記入したら、それぞれオムライスの皿、カレー


の皿、ナポリタンの皿を並べ……。


それぞれの皿の上で小槌を”コン”と振る。


すると、1人前づつ現れる料理たち。


料理が苦手な俺のために前もってミリー(トム妻)さん達が


料理を作り俺はそれをただ、ただ、小槌に収納しただけ、


それを注文に応じて、お皿の上にポンポン出していく俺。


(朝のモーニングの時より楽w)


それを俺の書いた伝票と共にお客さんのテーブルに持って行く


ヴィクセン(狐耳)さんと三毛猫オトア


朝のお客さん同様、三毛猫オトアの場合は、サーフボード


に乗っている料理を自分で取ってもらうことになるが……。


誰もそれに対して文句は言ってこなかったってか、朝のお客さん


同様、お客さん達は一様にニコニコしながら、


「あ、ありがとうねw」


と笑顔で受け取っていた。


(流石我が彼女、彼女の魅力は万人に受けるようだ)


こうして、終始お店を切り盛りできた。


そして、何故か「猫が飛んで運んでくれる店」と評判が立ち、


次の日からお客日に日に増えるのだった。













 そして、店を任された3日目の午後、お昼のお客が引いた


頃に


\ガチャ/


”カランコロンカラン”


「いらっしゃいませw」×3


と俺と三毛猫オトアにヴィクセン(狐耳)さんが、入り口


の方に顔を向け言うと、そこには悪特隊本部のオーブ隊員


(グリシーヌ・オーブ)が立っていた。


「お久しぶりですオーブ隊員」


「お久しぶりですw」


と俺と三毛猫オトアが声を掛けると、


「うん、お久しぶりでねぇ~テンタ君、オトアちゃん」


とニコリ笑って返すオーブ隊員。


「どうぞ、ことらの席に」


とオーブ隊員をカウンターの席に案内しようと声を掛ける


ヴィクセン(狐耳)さんに、


「いえ、私はお客じゃないんです」


と”いえいえ”って感じで右手を横に振るオーブ隊員。


(ん?なんの用だろう)


と俺が思うと、先にこの『ガンブレーブ』のマネージャー


としての立場からなのか、先にヴィクセン(狐耳)さんが


聞く。


「どのような御用ですか?」


 しかし、オーブ隊員は、


「ここのお店の定休日は日曜でしたよね」


と質問を返すと、ヴィクセン(狐耳)さんは、


「はぁ、そうですけどぅ~」


とオーブ隊員の言葉に疑問を浮かべながら答えると、


何故かオーブ隊員は、”ほっ”とした顔で俺に


「これをテンタ君に」


と封筒を俺に渡してきた。


「……」


俺も頭に疑問を浮かべながらそれを受取り見ると……。


”招待状”って書いてあった。


(んっ?ひょとして……)


封筒の中を開けると、


「ああ、えっ、またですか」


と心で思ったことを声に出してしまった。


そう、前回ももらった日本語で書かれた招待状の中身は、


”感謝状贈呈式”だった。


俺が固まって招待状を見ていると、オーブ隊員が、心配


そうに


「大丈夫ですよね」


って聞いてくるので俺は”はっ”として、


「ああ、はい、わかりました」


と答えた。


すると、オーブ隊員は笑顔になり、


「じゃ、よろしくお願いしますね」


と言うなりそのまま店を出て行くのだった。


その後、いまだに頭の中が?のヴィクセン(狐耳)さん


三毛猫オトアに招待状のことを説明する俺だった。













 それから3日、またもや来客が現れる。


「ふぅ~」


空飛ぶ猫が料理を運んでくれるって評判になり、連日特に


お昼のランチ時は、連日盛況で、かなりのお客さんが訪れ


ていたので、今そのランチのお客さんが切れ、”ほっ”と


一息ついた所だ。


そこに



\ガチャ/”カランコロンカラン”


お客さんが入って来た。


俺はすぐさま一息つくために座っていたカウンターの席


から立ち上がり、


「いらっしゃいませw」×3


とヴィクセン(狐耳)さんと三毛猫オトア同様店の


入り口のお客さんに言うと、


「あ~ら~オトアちゃん元気してたぁ~」


となんか聞いたことのある声がする。


見るとそこにはチーム『デビライザー』のマヤ(デーモ


ンレディー)さんの姿があった。


その後ろにはマヤさんと同じチームのエディー(ザマタン)


さん、ジェシー(イマタン)さんに、チャド(ガマタン)


さんもいた。


そして、さらに


「げんき~テンタ君オトアちゃんw」


「久しブリブリ~w」


と言いながら店の中に入って来るチーム『ナル』のマカナ


(マリーナ)さんと、ナイア(トリン)さんもいた。


「どうしたんですか!」


驚く俺にエディー(ザマタン)さんが、


「いや~俺達今回の悪魔退治の功績で、なんか教会から


感謝状が出るらしいんでな、こっちに呼ばれたって訳さ」


「へーエディー(ザマタン)さん達もなんですね」


と俺が答えると、


「ああ、やっぱりテンタ君もだったんだな」


とジェシー(イマタン)さんに言われ、


「あ、はい」


って答えたら、横からナイア(トリン)さんが、


「そんなことより、あれ食べましょうよw」


と言って来たので、三毛猫オトアが、


「あれって何ですか?」


と聞くと、ナイア(トリン)さんが、ワクワクした


様子で、


「あれと言えば決まってるじゃない、ナポリタンよw」


という言葉に、マヤ(デーモンレディー)さんが、


「それはナイアだけでしょう~、私はオムライスw」


と言って来た。


(なるほど……要はお客さんね)


と思い、俺が


「奥のテーブルへどうぞw」


と言うと、みんなはいそいそとテーブル席に着いた。


席に着いたマヤ(デーモンレディー)さん達にヴィク


セン(狐耳)さんが、


「ご注文は?」


と聞くと、


「私ナポリタンスパゲッチー」


と元気よく手を挙げて言うナイア(トリン)さんを


見て、同じように手を挙げ、


「私は……ミートソーススパゲティーw」


と笑顔で言うマカナ(マリーナ)さんに


「じゃぁ、俺達はカレーライスでw」


と自分達3人を指さしながら注文を言うエディー(ザマタン)


さんに続き、マヤ(デーモンレディー)さんが、落ち着いて


「私はオムライスをもらおうかしらw」


とヴィクセン(狐耳)さん注文をするのだった。











「いただきまぁ~す」×6


とマヤ(デーモンレディー)さん達がそれぞれの料理を


食べようとした時だった。


またもや、何処からともなくかりゅうが現れ、


マヤ(デーモンレディー)さん達の前で尻尾を”ブンブン”


振る。


「あら、禍龍かりゅうも食べるぅ~」


とマヤ(デーモンレディー)さんがスプーンにすくった


オムライスをかりゅうの口元へ持って行くのを見た


俺は、すかさずかりゅうの元へと走り奴の口に萬豆マンズ


放り込み。


奴の首輪を思い切りつかみ引っ張りながら、


「お気になさなず、食べてくださいw」


と作り笑顔でかりゅうを引きずり店の外へと


連れて行くのだった。


(お前ぇ~いい加減にしろよ)

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