第5章 逆襲のダリウス編

136話 グロルの森の小さな洋館



------(第三者視点)------☆




 テンタ達が居る大陸の西に『グロルの森』と言う大きな森


があり、そのグロルの森を取り囲むように、東に『ドウブ国』


、西に『コラクル国』、南に『ルベン国』、北に『バーン国』


がある。


 この『グロルの森』には、かなり強力な魔獣が出現し、


時には、ドラゴンが出現する大変危険な森のため、それを


囲む各国は、グロルの森を禁則地とするだけでなく、協力


してグロルの森を囲むように長い長城を築き、強力な魔獣


の侵入を阻んでいた。


 今ここに、コラクル国とルベン国の国境沿いから、何かが


グロルの森を囲む長城を越え、森に侵入していた。


「もう認識阻害はよかろうリキシア」


「だな、今解除する」


すると、そこには空飛ぶ絨毯に乗る2人の男女が居た。


男は、フルプレートの鎧を着た騎士風で、女は灰色の


ローブに身を包んだ魔法使い風のいでたちだった。


男の名は、ケダルン・ゲーブル元ルベル国公爵護衛騎士で


年は38歳、その横に居る女の名は、リキシア・アジャン


元ルベル国公爵付き魔法師で、年は32歳である。


2人は今グロルの森の中に立つ小さな洋館を目指していた。


ほどなくして、2人はその洋館を見つけると、魔法師の


リキシアが空飛ぶ絨毯を操作して、洋館の前に着陸する。


 洋館の前に降りると、魔法師リキシアが背負っていたバック


を下し、手早く空飛ぶ絨毯を”くるくる”とまとめたか


と思うと、降ろしたバックの蓋を開け”ポン”と投げ


入れ、再びバックを背負うと騎士ケダルン共々洋館の中に


入っていた。













 洋館の中に入るとすぐさまメイドのマルガリータが2人を


出迎える。


「おかえりなさいませ、ゲーブル様、アジャン様」


傅くマルガリータに、


「留守中何かあったか?」


と聞くケダルンにメイドのマルガリータが、


「特にはなにもございません」


と答えると、リキシアが、


「ジェラグ様は?」


と続けて尋ねる。


「はい、ジェラグ様はいつもの場所におられます」


とマルガリータの答えに、ケダルンとリキシアは、


少し困ったような顔をして、


「あまり、根を根をお詰になるとお体に触ると言うのに……」


とリキシアが言葉を漏らすと、メイドのマルガリータも


困ったと言う顔をして、


「私からもお諫め申し上げてはいますが……」


と言いかけるとすぐさまケダルンがその言葉尻を捕え、


「すべては公爵家再興とルベル国の繁栄……ひいては


西方の統一のため……か?」


と言うと、マルガリータは小さくうなずき、


「はい」


と答える。


「まぁ、それだけがジェラグ様の生きがいではあるの


だけど……」


と言うと、


「あれからもう7年……経つ。そろそろ別の身の振り方


もお考えいただいてもいいと思うのだがな」


とケダルンがため息交じりに言うが、その言葉に


リキシアが頭を横に振りながら、


「別の生き方をお考え願うとしても、元はルベル国の


公爵閣下、それに一時的とは言えルベル国の国王になら


れたお方なのよ……そのお方に普通の生活が出来るとは


思えないし、第一、あの西方大戦の首謀者であるあの方を


他の国の者達が許すとは思えないでしょ」


と言うと、ケダルンもメイドのマルガリータもため息を


つきながら項垂れるのだった。
















 ケダルンとリキシアは、背負っていたカバンを床に置き、


それぞれ、カバンから今日の戦利品を出す。


 まず、ケダルンは今日、コラクル国とルベン国の国境付


近を進む商人の馬車を襲って、護衛の冒険者達を倒し、


冒険者達から奪った、剣4本に、弓と矢が入った矢筒に


魔法の杖1本を取り出し、部屋の左側の壁に立てかける


「うーん、護衛の冒険者のレベルが低いと大した武器は


持てないな」


と改めて立てかけた武器を眺めごちる。


 一方、リキシアの方はカバンから今日襲った馬車に


乗っていた商人2人と冒険者4人から奪ったお金を


袋から出してきて数える。


のちに自分達が使いやすいように500ギル銀貨(1万円)


で統一し奪った1千枚を部屋の中央のテーブルに100枚


ずつ積み上げ並べた銀貨を見て、


「うーん、ゾンビ化魔法までかけてあがりはこれだけか」


とため息をつく。


※リキシアの言うゾンビ化魔法とは、殺した相手もしくは


死んですぐの人間に掛けると、一時的にその人間は蘇り、


しかもそのゾンビ化した人間は術者の意のままに操作でき


る魔法で、リキシアはこれを使いケダルンと一緒に倒した


護衛の冒険者や馬車に乗っていた商人を殺した後、この術


を使いそれぞれの小槌を取り出させ、ギルド(商人は商業


ギルド、冒険者は冒険者ギルド)に小槌を通じて預けてい


る預金を全部、西方4ヶ国で使用している銀貨に両替させ


た状態で引き出させ奪ったものだった。


 ため息をつくリキシアであったが、何かを思い出したの


か自身のカバンからある物を取り出す。


「そうそう、これこれw」


ほくそ笑みながらカバンから出したものは……ダチョウの


卵ぐらいの大きさの魔晶石だった。


自身のカバンからそれを取り出したリキシアはそれを持っ


て部屋の奥へと向かおうとすると、


「あ・待てリキシア俺も行く」


とケダルンが声を掛けると一旦リキシアと共に奥の部屋


に入ろうとして、何かを思い出したように振り向き、メ


イドのマルガリータに向かって


「ああ、マルガリータ後俺のカバンとリキシアのカバンに


調達した、肉や野菜に果物が入っているから、それを取り


出し”冷気庫(冷蔵庫)にしまっておいてくれ」


と声を掛けるとマルガリータは、


「畏まりました」


と返事をするのだった。


そのマルガリータの返事を聞いたケダルンとリキシアは、


そのまま奥の部屋へと入って行くのだった。













 奥の部屋にケダルンとリキシアが入ると、床に転移魔法円が


あり、その円の中に2人が入ると、”スー”と消えて行った。


 再び2人が姿を現したところは……。


高さ50m、幅30mで、奥行き40mの何かの大きな工場


の中のような場所だった。


そこに見えるのは、全長40mで、お椀をひっくり返した


ような大きなものに、細く長くそびえる3本の足の付いた


物だった。


その足元では、それを眺める男が1人立っていた。


「後は起動実験だけ……なのだが」


と1人呟くその男の後ろから、


「ジェラグ様w」×2


と声を掛け近寄るカバンとリキシア。


男はその声に振り向き、2人を確認すると、


「おお、ケダルンとリキシアか」


と声を掛ける。


そして、


「今回の首尾はどうであった」


と2人に聞き返すと、


リキシアが、手に持っていた魔晶石をジェラグに見せ


「今回は、これが手に入りましたw」


と言いながらジェラグに差し出すと、それを受取った


ジェラグが、まじまじと受け取った魔晶石を見て、


「おお、見事な魔晶石じゃw」


と喜ぶ。


「今日襲った商人の馬車にこれがありました」


とリキシアがジェラグに報告すると、


「ほう、その商人は魔晶石を扱ておったのか?」


とリキシアに聞き返すが、ケダルンが代わりに


「いえ、その馬車には大量の小麦を積んでいるだけでした」


と答えると、


「ほう、唯の小麦の商人がこのような魔晶石を持っておった


とは……」


とジェラグが言うとリキシアは、


「その商人は、この魔晶石がベヒモスから取れる貴重な魔晶石


だとは気が付いてないようでした」


と言うと、ジェラグは、


「なるほど……無知とは怖いものよのう~」


と言い、続けて、


「リキシア、ケダルン大儀であった……あったが……残念なことに


この魔晶石1つではこの”ビクダイン”は動かせんのじゃよ、ドラ


ゴンの魔晶石とは言わんが、この魔晶石ならあと5つは必要じゃ」


と言って、持っていた魔晶石をリキシアに返すのだった。


魔晶石を返されたリキシアは、ただ、


「はぁ、」


と答えるしかなかった。


その時、


「いや~なかなか興味深い物をお造りの様で」


と3人の後ろから声がした。


 その声にジェラグ、ケダルン、リキシアが後ろを振り向き、


そこにいつの間にか立っているナマズ顔で、角が生えていて


人間の手足の男を見てぎょっとする。


「貴様、何者!」


と言いながらケダルンは腰の剣を抜こうとし、それと同時に


リキシアも手に持っていた魔法の杖をその男に向けるが……


「うっ、抜けぬ」


「えっ、体が動かない」


と呟き固まっていると、ただ、驚きのままに動けないジェラグ


の側までやってきて、


「我が名はバット、悪魔公爵ヤブー様に使えるベビルデーモン


以後お見知りおきを」


と言いながら、3人に深くお辞儀をする。


 しかし、ジェラグ、ケダルン、リキシア達の体にじわっと


汗がにじみ出ているのを見て、


「そんなに緊張なさらなくても、お話の内容によっては、


わたくしはもとより、他の悪魔公爵ヤブー様に使えるベビル


デーモン達そして、場合によっては悪魔公爵ヤブー様自ら


あなた方に協力してくれるやもしれませんよ」


と紳士的に話をすると、緊張のあまり固まっていたジェラグ


がなんとか重い口を開く。


「悪魔と言うのは報酬が必要ではないのか」


と言うと、バット(ナマズ顔で、角が生えていて人間の手足


の男)は、にこやかに


「はい、報酬はいただきますよw」


とジェラグに返すと、


「そ・その報酬とはなんだ!、まさか儂の命とでもいうのか!」


と強気で投げ捨てるように言うと、


「いえいえ、それでは足りません例え上に居るお嬢さんを合わせて


4人の魂をいただいても……とてもとても」


と言いながら首を横に振り、


「そうですねぇ~100万ほどの人の命を頂戴しましょうか」


とこれもにこやかに言い返すバット(ナマズ顔で、角が生えてい


て人間の手足の男)。


「馬鹿な、今の俺達にそのような人間の魂を差し出すだけのものは


ない」


と震えながらケダルンが言い返すと、


「戦争をするんでしょw」


とにっこり笑ってさらに後ろにある巨大な”ビクダイン”の方を


見て、


「これを使いルベン国王都に攻め入り、王城を制圧後その地下に


封印されし、あなたの作った魔導機兵を奪い、さらに他の西方の


国々に攻め入り、滅ぼし、それらすべてを統一し一大帝国を築く


んじゃなかったんですか?」


とさらりと言うバット(ナマズ顔で、角が生えていて人間の手足


の男)に、驚きながらジェラグが、


「な・なぜそれを知っている!」


とバット(ナマズ顔で、角が生えていて人間の手足の男)に聞く


と、


「いや、なに、悪魔と言うのは人の憎しみや欲望に鼻が利くん


ですよw」


と少しおどけて言う。


 ジェラグは、うーんと顔を赤くして考え込んでいたが……


突然、


「わかった!お前達と契約をかわそう」


と言うと、バット(ナマズ顔で、角が生えていて人間の手足


の男)は、\ボワッ/と白い煙と共に自身の手に契約書と


羽ペンを出し、それをジェラグに渡し、ニッコリ笑って、


「では、ここにサインをw」


と言うのだった。













------(テンタ視点)------☆




 お昼ご飯を済ませた後、俺と三毛猫オトアは、まったりと自室の


ベットで夕方まで過ごした。


 夕方、ミリー(トム妻)さん達が買い出しから帰って来たので、


1階のお店の方に降りると、ミリー(トム妻)さんと、アナ(ガイゼ


ル妻)さんが店を閉め、俺と三毛猫オトアの歓迎会のように大量の


料理を作りだした。


俺と三毛猫オトアは料理のお手伝い……はできないので、シェリーさん


タミーさんと共に店のテーブルを移動させ以前のようにレイアウトを


セッティングする。


出来上がった料理を各テーブルに置いて、準備万端整ったと言う


所で、


\ガチャ/


”カランコロンカラン”


入って来たのはガイゼルさん。


この日のために本国の実家の手伝いを休んでわざわざ帰って来た


のだった。


「じゃ、私、レツさんダイさんを呼んできますw」


とヴィクセンが店を出て行った。


そして、全員がそろったところで、各自飲み物を持ち、


「カンパ~イw」×11


そして、


「完治おめでとうw」×10


そう今日は皆そろってのトムさんの完治のお祝いパーティー


なのだ。


 皆で和気あいあいおしゃべりしながら飲んだり食べたり。


俺と三毛猫オトアは、楽しくおしゃべりしながらも、俺達の


誕生日にプレゼンとをくれたのに、まだお礼が言えていなか


った、トムさん、ミリーさん、ガイゼルさん、アナさん達に


誕生日プレゼントのお礼を言う中、トムさんには体のことを


聞いてみた。


「もう、大丈夫なんですか?」


と言う俺の問いに、トムさんは少し困ったような顔をして、


「うん、大丈夫だ!」


と胸を叩いたがその後、トムさんは少し困ったような顔を


して、


「実はな、体も治りブランチも元のように出せるようになっ


たんだが……ブランチスキルがな・初期化されたみたいで


……」


その言葉に俺と三毛猫オトア


「えっ!」


と驚くと、


「いや、クリスタルマンの話だと、ブランチレベルがMAXから


1に落ちているからそれが3までレベルが上がれば恐ら


くブランチスキルも発現するだろうって事らしいん


だがな」


とおっしゃるので、俺と三毛猫オトアはトムさんに


「僕達で何か協力することがあったら言ってくださいw」


「言ってください」


と言うが、トムさんは少し考えて、


「うん、まぁ、ありがとう、少し試したいこともあるから


その時は2人にもお願いするかもだ」


と言うので俺と三毛猫オトアは、トムさんに


「「絶対ですよ」」


と念押しをするのだった。



 ただ、そんな真剣な話をしてる横で、バクバク料理を


ただ、ただ食べまくるかりゅうを見て、


(お前ねぇ~)


と思ったものの言うのは諦めた。


 だが、しかし、この間も悪魔達が着々と大きな災いに


向け何かを進めていると言うことは、この時の俺と


三毛猫オトアには知る由もなかった。


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