51話  兎とキノコ




 次の日、朝食後すぐに出発。


 因みに朝ごはんは、パンケーキだった。


 昨日同様、2時間おきの休憩を取りながらの旅。


 3回目の休憩の時にお昼ご飯を食べることにした。


 今日のお昼ご飯は、専属シェフのルフーンさんお手製の


ハンバーガー。


パテ(肉)が2枚で、チーズも2枚挟んであり、そこに野菜も


挟んであるので、かなりボリューミーだ。


「いただき……」×5


と手を合わし言いかけると、”シャー”


三毛猫オトアが、毛を逆立て、何かを威嚇する。


「?どうしたオトア」


と俺が威嚇する三毛猫オトアに聞いた時だった。


”シャー”


何かが、俺達のテーブルの前を素早く通った感じがした。


そして、俺の反対側に座る悪特隊(北支部)のリラ隊員(女性)の


後方に目をやると、そこには、角の生えたうさぎが、俺の目の前に


置いてあった、ハンバーガーを奪い、ハンバーガーの中のパテ(肉)


だけを出して、ムシャムシャと食べていた。


それを見て俺は、


(かわいいな……)


なぁ~んて思ていたら、他のみんなは血相を変え、シェリーさんが


叫ぶ。


「アルミラージよ!」


そして、全員が戦闘態勢をとる。


「え、えっ?」


戸惑う俺をよそに、悪特隊(北支部)のリラ隊員(女性)は、魔法


の杖を持ちすぐさま、ニム・アノル博士と料理人のルフーン・アノ


ルさんを庇うように前に立つ。


そして、シェリーさんとタミーさんはすぐさま、


紫着しちゃく!」


黄着おうちゃく!」


バトルスーツ姿に変身する。


さらに、他の悪特隊(北支部)の隊員たちも魔法の杖をアルミ


ラージへと向けていた。


さらにさらに、ケンタウロスのレツさんダイさんまで、武器を


構えた。


「パープルバスター!」


”ビシュー”


「イエローバスター!」


”ビシュー”


シェリーさんとタミーさんが放ったビームを素早くジャンプ


して避けるアルミラージ(角うさぎ)。


「んっ、もう!」


悔しがるタミーさん。 


そこに、悪特隊(北支部)のキャップ(隊長)メギルさんが


空中に跳んだアルミラージ(角うさぎ)に杖を振り、


「ウインドブレード」


と叫び、風の刃を空中に跳んだアルミラージ(角うさぎ)に


向け飛ばすと、メギルキャップが放った風の刃は見事、


アルミラージ(角うさぎ)の首を”シュパ”と切り飛ばした。


その様子に見とれていると、


「テンタ君後ろ!」


と叫ぶ三毛猫オトアの声に、俺はすぐさま反応し、振り向き


際に脇のホルスターから、S&W M629を抜き構える。


”ガルルルル”


そこには、目を赤く血走れせたアルミラージ(角うさぎ)が2匹


こちらを狙っていた。


その時、俺の向かい側に座っていた悪特隊(北支部)のエスイル


隊員が、自身のハンバーガーを俺と対峙するアルミラージ(角う


さぎ)の前に投げつけた。


すると、2匹はバラバラになったハンバーガーのパテ(肉)を


取り合いする。


(今だ)


と思った俺は、2匹のパテ(肉)を取り合いするアルミラージ


(角うさぎ)に向かって銃を発砲した。


\\バキュン//、\\バキュン//


アルミラージ(角うさぎ)には、額の真ん中に角が生えてるので、


少し右にずらして、ヘッドショットを決めた。


「バリア!」


\カッキーン/、\カッキーン/


悪特隊(北支部)のリラ隊員(女性)が庇うニム・アノル博士


と料理人のルフーン・アノルさん達に2匹のアルミラージ(角


うさぎ)が額の角を立て突進してくるのを、悪特隊のリラ隊員


(女性)が持っている杖で、バリアーを張り防ぐ。


それを見た、シェリーさんとタミーさんはすぐさま、ビーム


ガンで、アルミラージ(角うさぎ)を撃つ。


「パープルバスター!」


”ビシュー”


\ズキュン/


「イエローバスター!」


”ビシュー”


\ズキュン/


 これもアルミラージ(角うさぎ)の少し右にずらして、


ヘッドショットを決めた。


(流石だねw)


その間に、悪特隊(北支部)のロークエン隊員とハル隊員が、


各1匹づつ、アルミラージ(角うさぎ)を仕留めた。















 倒したアルミラージ(角うさぎ)角をシェリーさんとタミー


さんが回収する。


 アルミラージ(角うさぎ)の角は鉄並みの硬さがあり、かつ


鉄より軽いため槍の穂先として加工したり、ナイフなどの刃物


に加工したりできるそうで、1本大体、千クリスタル(2万円)


で、ギルドが引き取ってくれるそうだ。


 因みに、先ほど戦ったアルミラージ(角うさぎ)の戦闘力を


シェリーさんに聞いてみると、


【アルミラージ】


HP      50

MP      95

運動性 100

攻撃力   95

防御力    80

命中      80

回避 85


額の角で攻撃


体長80Cm - 1m



って感じの戦闘力。


 んっ、何だろう、弱いっちゃ弱い魔物だが、素早さと角の攻撃


さえ気を付ければ、コンバットスーツを装着せずとも、戦える


魔物かな。

そして、今回のアルミラージ(角うさぎ)の肉については、


今晩のおかずにしようと料理人のルフーン・アノルさんが、今


皮を剥いでるところ。


そして、お昼ご飯のハンバーガーをもう一度、料理人のルフーン


・アノルさんが作り直してくれて、みんなで改めてお昼をいただ


いた。


 で、そんなこんなで、出発が遅れ、本来今日の夕方には、マラ


フトの森の手前まで着けるはずが、その手前数キロの所で、そろ


そろ夕方を迎えようとしていた時だった。


 俺達が乗る馬車が急に止まった。


そして、馬車を引くケンタウロスの1人のレツさんが、馬車前方


にある小窓から俺に声を掛ける。


「兄ぃ~ちょっと」


「どうしました、レツさん」


レツさんに聞くが、


「いや……ちょっと」


としか言わないので俺は、馬車の外に出た。


 俺達の馬車が停止したので、後ろのユニコーンが引く馬車も止


まり、御者をしていたロークエン隊員が、俺に聞いてくる。


「どうしました?」


「まだ、わかりません」


とロークエン隊員に答えると、ロークエン隊員は御者台から降りて、


俺の所に来た。


そして、2人そろってレツさんの方に向かう。


「レツさんどうしたんですか」


ともう一度聞くと、


「いや……あの砂煙」


と言うがレツさんの横のダイさんは、


「あっしは、唯のつむじ風だと思うんすよ」


と言うので、レツさん達が言う前方方向をロークエン隊員と共に


見るが、……確かに砂が舞ってる風にも見える。


そこで、


「オトア」


三毛猫オトアを呼ぶ。


俺に呼ばれた三毛猫オトアは、馬車の前の小窓から”ひょい”


と飛び出て、俺の前に降り立ち、


「なぁ~にテンタ君?」


と聞いてきたので、


「赤着する」


と言うと、三毛猫オトアが、


「OKw」


と言ってくれたんで、


赤着せきちゃく!」


べルトバックルに取りつけた、楕円の金属板が光る。


と同時に俺の体が赤い光に包まれ、俺は、赤いコンバット


スーツ姿になるとすぐに、


「じゃ~テンタ君行くよ~w」


三毛猫オトアがそう言うと、三毛猫オトアの体が光り


だす。


そして、


「フェードイン~w」


と俺のベルトのバックルに飛び込んだ。


\ピカ/


と一瞬俺の体が光る。


「宇宙シェリフバルバン!」


とポーズを決め、すぐさま


「サーチャースコープ」


 サーチを掛けると……。


\ピッ/


【ポイザネスマシュルーム】(毒キノコ)



HP     85

MP    100

運動性   80

攻撃力   80

防御力    80

命中      80

回避 85


身長1m


肉食、傘の裏から毒胞子を飛散させる。


×10


「ん……っ、身長1mの大きなきのこに細い手足が付いた


魔物?……よくあの細い足で走れるもんだな」


と俺は、体にあまりにも不釣り合いな手足をつけている


ポイザネスマシュルームを見てそう呟いた。


「あれ、ひょっとして、あれは砂煙ではなく、毒胞子を


まき散らしてるのかも」


と呟く俺の言葉に、


「みんなを呼んできます」


と言うロークエン隊員に俺は、


「大丈夫、試したいことがあるんです」


って言ったら、


「はぁ、」


ロークエン隊員は俺の自信たっぷりの発言に、素直に


引きさがってくれた。


「では、やってみますか」


俺は、1人呟き、左腕のガントレットから突き出した


魔法のナイフの柄を掴み、引き抜くと同時に、イメージ


する。


\ピッカ/


すると抜いたナイフが光りながらある物に変化と同時に


俺の背中も光った。


 光が消えると、俺の背中には大きなボンベが2つで、


手には、高圧洗浄機のノズルが握られたいた。


 そう、俺がイメージしたのは、火炎放射器。


って言っても実物は見たことなかったが、映画などで


見たものを想像してみた。


火炎放射器を出した俺に、左モニターのエードラム様


が俺に聞いてきた。


『これなぁに?』


『ひょっとして、火炎放射器?テンタ君』


俺がエードラム様に答える前に左モニターのオトアが


聞いてきた。


『うん、火炎放射器だ』


と答える俺に、さらに左モニターのエードラム様が


『火炎放射器って?』


とさらに聞くので、


『火を噴く道具です』


って答えたら、


『ああ』


って納得された。


ってな会話をしていたら、10体のポイザネスマシュルーム


達は、俺達に残り100mの所まで迫って来た。


そこで、慌てて、火炎放射器のノズルを奴らの方に向け、


「ファイア!」


と叫ぶと、\ゴー/って炎が……あれ?


 確かに炎が出た、出たんだが……、俺が思っていたノズルから


噴き出す細い炎をイメージしていたら、ノズルの口径をはるかに


上回る大きさの炎の柱が出た。


 おかげで、10体のポイザネスマシュルームは一瞬にして焼け


たのは良いが、あたりに火が飛び火して、ちょっとした火災が


生じた。


 幸い、悪特隊(北支部)のメンバーが駆け付け、水魔法をで


消し止めてくれたので大事には至らなかったが……。


 俺は何度も、火炎放射器のノズル大きさを確認して、首を


ひねっていると、俺の左モニターに映るエードラム様が聞く、


『えっ、なんかおかしかった?』


『はい、どう見てもさっきの炎は、このノズルから出たように


は思えないんですけど……』


と答えると、


『えっ、え、その細いノズルから炎が出る仕組みだったの!?』


って驚いていたので、


『どういうことです』


って聞き返したら、


『いや~テンタ君が炎を噴き出すっていてたから、てっきり


ファイアボルトの魔法みたいに太い炎の柱だと思って……』


その言葉に、俺が驚き、


『えっ、さっきの炎ってエードラム様が出したんですか!?』


って聞いたら、


『えへっw』


とニッコリ笑われた。


(んって事は……この火炎放射器って使えないのか?)


って思っていたら、少し呆れたように右のモニターのオトア


が言う。


『だって、テンタ君トリガー引いてなかったでしょ』


その言葉に、驚き確認すると、確かにノズルの後ろに引き金が


付いていた……。


試に引いてみると、”ボー”って俺がイメージする細長い炎が


噴き出した。


(あっ、なる……)


今更ながら、自分に呆れる俺だった。













 ポイザネスマシュルームは、無価値なので、回収する物がない。


 ただ、焼けたポイザネスマシュルームはすごく香ばしい匂いが


して、


(おいしそう)


って思ったが、どうやらこいつは食べれないそうだ。


 結局、夜が迫って来たので、この場から少し離れた場所で、野営


することにした。


「いただきます」×6……?


俺達と共にニム・アノル博士やその弟の料理人であるルフーン


・アノルさんがまたもや手を合わせて言う。


(この人達、ひょっとして転生者じゃないのかな)


と思いつつも、聞けずに食事をする。


 前回同様、夕食はフルコースの料理。


 まず、前菜にはラ・フランスの生ハム巻き。


洋ナシを生ハムフルーティーなラ・フランスと生ハムの塩気が絶妙な


一品。


次にスープは、じゃがいもポタージュスープ。


暖かいスープではなく、冷たく冷やしたスープで、のど越しが良い


スープだった。


 そして、メインは、アルミラージ(角うさぎ)の照り焼き風ステ


ーキだった。


1人300グラムもあるかなりのボリュームのステーキだが……。


(照り焼きって、こっちの世界にあるのかな?)


 まぁ、この味は日本人として大変なじみのある味なのでおいしく


いただいた。


肉としては、少々硬めだったけどね。


そして、デザートは、クレームブリュレ。


こんがりと焼けた表面をスプーンでつついてパリッと割れば、


中からとろ~りなめらかなクリームが現れる。


これも前回のリンゴのオーブン焼きと同じく、三毛猫オトア


はじめ女性人に人気だった。


「ごちそうさまでした」×6 


俺達と共にニム・アノル博士やその弟の料理人であるルフーン


・アノルさんがまたもや手を合わせて言う。


(やっぱ、元日本人だよな……この人達)


 食事が終わり、後片付けをしたら、就寝準備に入る。


 前回同様、夜の見張りについては、悪特隊(北支部)メンバーが


交代で行うので、俺達は、ゆっくり寝ることが出来た。


(みなさん本当にご苦労様です)

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