46話 アダマイトの坑道(後編)




「このー!」


「えい!」


「しつこいぃ~!」


俺、シェリーさん、タミーさんは必至で小ワームの殲滅をする。


俺は、ビームガンを左手に持ち替え、ライトソードを右手に持ち


撃ったり、切ったりで、シェリーさんはビームガンを左手に持ち


替え、ビームガンを撃ちながら、光鞭をビシバシ振るう。


そして、タミーさんは右手にビームガン、左手にデザートイー


グルで、撃ちまくった。


 因みにタミーさんの左手のデザートイーグルは、弾が切れると


一旦、左の太腿の装甲内に収納すると、自動でリロード出来る


仕組みになっている。


”ビシューン”


\ズキューン/


\ピシッ/、\パシッ/


\\バキュン//、\\バキュン//


(((ワ~ン、ワ~ン、ワ~ン)))


 小ワームも口から酸を吐くが、奴等の酸では、俺やシェリーさん


タミーさんのコンバットスーツの装甲は熔かせないので、殆ど小


ワームが吐く酸は避けてないってか、そんな余裕はない。


 1時間近くの戦闘が続き、


「ハァ、ハァ……」


「ハァ、ハァ……」


「ハァ、ハァ……やっと終わったぁ~」


俺とシェリーさん、タミーさんは、息が上がり、へとへとになりな


がらも、ようやく小ワーム400匹を倒せた。


 シェリーさん、タミーさんは、体力と共に自身の魔力を使い果たし、


俺も自身の体力と共に、コンバットスーツのエネルギーがほとんど無く


なっていた。


「ヤバイ、魔晶石交換しないと……」


と俺が、呟いたその時だった。


”ズズズズ――――――ッ”


と地響きがなり、地面が揺れる。


「うわぁ~」


「ああ~」


「な・何なにナニ!?」


揺れる地面に俺とシェリーさん、タミーさんがバランスを崩しかける。


”ニャー”


三毛猫(オトア)も驚きながら踏ん張っている。


 すると、


\バリバリバリ/


\\\ドッカ~ン///


突然、坑道の地面から全長10mの巨大な大ワームが出現する。


「「「うわぁ~!」」」


「キャー!」


それに驚く俺、シェリーさん、タミーさんに三毛猫オトア


 しかし、すでに魔力を使い果たしているシェリーさん、


タミーさんは動けないでいる。


そこで、


「サーチャースコープ!」


俺が、大ワームをサーチして見ると、


 

【大ワーム】


HP    1200

MP     400

運動性    70

攻撃力    700

防御力    500

命中       68

回避  60


10m×1


 大ワームは顔全面が口、口には鋭い刃が並び、口から酸を吐いて


鉱物を溶かして食べる。


 攻撃としては、単純だが、大きさがかなり大きいのでやっかいだ。


「んっ、ヤバイ」


俺のコンバットスーツのエネルギも残りわずかのようだ。


「リバース」


俺は、コンバットスーツを解除する。


すると、俺達の後ろに居た三毛猫オトアが、”サー”と俺の前に


立ち、いつでもバリアーを張れるように構える。


俺は、S&WM629 3インチをホルスターから抜き銃を構


える。


そして、


\\バキュン//、、\\バキュン//、\\バキュン//


と銃を発砲するが、


\カン/、\カン/、\カン/


(((ワ~ン、ワ~ン、ワ~ン)))


弾がすべて弾き飛ばされる。


「っくそー!」


 奴の表皮は固く、マグナム弾を全く受け付けない。


(どうしたものか……)


と考えていると、大ワームが俺目掛け、酸を吹きかける。


”プシャー”


即座に、三毛猫オトアがバリアーを張り、


\バッシャー/


と奴の吐く酸を跳ねのけるが……。


(このままじゃ、持たないよな……)


(なんか武器はないのか、武器は……)


と考えていると、\ピン/とひらめいた。


「エードラム様、俺を奴の口のところに飛ばしてく


れませんか?」


と聞くと、


≪んっ、いいけど……何かいい手を思いついた?≫


と聞いてくるので、


「はい」


と俺が答えると、エードラム様は、


≪わかったw≫


と言い、


≪ウォラーレ~≫


と言葉を発すると、俺の体がふわりと空中に舞う。


そのまま、大ワームの口に迫り、


俺は、ベルトにある黄色い☆手裏剣を2つ手に取り、


それを、俺を喰おうと大きな口を開ける大ワームの口に


放り込んだ。


”シュッ”


すると、


「うわぁ~!」


俺はそのまま地面に落下するが……。


地面に激突する瞬間、俺の体がふわりと浮いて、ゆっくりと


地面に着地できた。


 俺は、着地すると同時に、大ワームの前に倒れている、


シェリーさん、タミーさんを抱きかかえ……。


「んーっ、重い」


(さすがに、2人は持ち上がらないか……)


と考えていると、エードラム様が、


≪ウォラーレ~≫


≪ウエーローキタース≫


と言葉を発すると、俺は、シェリーさん、タミーさんを抱き


かかえたまま、ふわりと体が浮き、同時にものすごいスピード


で、大ワームから離れた。


すると、


\\\バリバリバリ~///


と大ワームの体の中から、ものすごい音と共に、


\チカ/、\チカ/、\チカ/


と大ワームの体内が光る。


 まるで、レントゲン写真のように大ワームの内臓が映し出される。


 そう、俺の投げた黄色い☆手裏剣が、奴の体内で魔力を吸収し、


稲妻に変換し、放っているのだ。


 奴のMP400分の魔力が今、稲妻に変換されて、奴の内臓を傷


つけているのだ。


\\\グェ~ェー///


 苦しみのあまり、七転八倒する大ワームだったが、5~6分程度


で、力尽きたようだった。


\\ドスン//














 

 皆、地面にへたり込んでいた。


 先ほど倒した大ワームの死骸を片付けずに……。


2時間ほど経ったろうか、今日はもうここでテントを張ろう


と言うことになった。


 俺は、ともかく、シェリーさん、タミーさんの消耗が激しい。


シェリーさん、タミーさんにテントだけ出してもらい、俺が


代わりに設営する。


(まぁ、ポンと押すだけだけどね)


 で、シェリーさん、タミーさんにはテントで寝てもらうのだが、


今お昼を過ぎたところなので、シェリーさん、タミーさん用の


昼食を一緒にテントの中に置いた。


 おそらく、食欲がないだろうから、『カートフルスープ』と


ベーグルを用意した。


『カートフルスープ』ってのは、要はジャガイモのスープで、


ピューレ状のさらりとした味わいのスープ。


で、俺と三毛猫オトアは、テントから少し離れたところに向かっ


た。


それは、この坑道には所々に休憩所がある。


 これは、採掘時に、災害があった時の待避所でもあり、また


休憩所でもある。


 なぜ、あちこちにあるかと言うと、採掘現場が移動するから。


 つまりどんどん掘って行くにしたがって、そのたびに作るから


なのだが、実はこの場所にもある。


 そこには食事室、そして、何といってもトイレとシャワー室


があるのだ。


 前回、謎の洞窟に飛ばされた時は、簡易トイレと言って、


フラフープの輪を2枚重ねたものを地面に置くと、上部リング


が、せり上がり、下部との間に布があるため筒状になる。


その布のスリット部分から中に入ると、転移魔法円が形成され


ていて、そこに用を足すと、出したものが転移魔法円で転送さ


れるらしい。


(どこに行くのかは知らないけど)


それを使っていたんだけど、ここには、ちゃんとしたトイレと


シャワー室があるので、それを使かわせてもらっている。


 トイレとシャワーを済ませ俺達は再びテントに戻って来る。


「俺達のお昼どうするオトア?」


三毛猫オトアに俺が尋ねると、


「うーん、ヴルストゼンメル(ソーセーロール)w」


と言うので、


「ああ、こないだ買い物の時食べた奴な~」


と言い、


「じゃ、それにしよう~w」


三毛猫オトアに笑顔で言いながら、小槌から俺と三毛猫オトアの分の皿と


2人分のヴルストゼンメル(ソーセーロール)を出し、食べる


のだった。


 それから、夕食になるころには、シェリーさん、タミーさん


も、起き上がって来たので、テント前に敷物を敷き、皆で


いただく。


 今日の夕食は、『シュヴァイネフライシュチャップ』


って言うのだが、食べて分かった。


これ、『ポークチャップ』だわ。


 でも、この異世界にケチャップってあったのか……


ああ、聖クリスタル国にはあったな。


 食後、シェリーさん、タミーさんは、エーテル(魔力回復薬)


を服用していた。


 その日は、そのまま就寝……。


 次の日の朝、俺と三毛猫オトアは、完全に体力気力とも復活し


ていたが、シェリーさん、タミーさんは、体力は戻っていたも


のの、魔力が3分の2しか回復していなかったので、もう1日


ここで、留まることにした。


 この日は、4人とも食っちゃ寝、食っちゃ寝して過ごす。


 体力は回復していたので、シェリーさんタミーさんは、大


ワームの死骸を小槌に納めていた。


 この大ワーム、皮膚が防具に溶解液袋が鉱山の余分な岩を


溶かすときに用いられると言うことで、冒険者ギルドでは、


約2,500クリスタル(約50万円)で、引き取ってく


れるらしい。


その次の日の朝、


「復活~w!」


と叫ぶタミーさん。


 シェリーさんもタミーさん同様魔力も全回復したので、ここ


を出て、奥へと進むことにした。


 テントなどを片付け出発する。














 大ワームを倒した場所から歩くこと、約1.3km。


それは現れた。


「「「サーチャースコープ!」」」


俺、シェリーさん、タミーさんがサーチする。



【魔鋼ゴーレム】



HP    1700

MP     600

運動性   80

攻撃力    1200

防御力 2000

命中   87

回避 56


18m×1


 ここは、この坑道の終点。


つまり最近までここでアダマイトを掘っていた所。


 あたりには、頭を破壊された2体のゴーレムが、倒れている。


 今、目の前に居るのは、採掘用のゴーレム。

 

 右手が、アダマイトのつるはしになっており、左手は普通の手。


 ここでの採掘は、人間ドワーフが、俺達が倒した大ワームの酸を使っ


て、余分な岩石を熔かし、アダマイトを含む鉱石を取り出す。


それをこの採掘用のゴーレムが右手のつるはで砕き、運びやすい


大きさにして、次いで、倒れている積み込み用のゴーレムが拾い


そして、もう1体の運搬用ゴーレムのお腹のバスケットに鉱石


を入れると、運搬用ゴーレムがそれを坑道の入り口まで運ぶ。


 なので、ゴーレムはそれぞれの仕事にあった動きしかできな


いのだが……。


 こいつ、他のゴーレムの頭にある魔法デスク(魔法文字で


動きをプログラムしたもの)を奪い自身の頭に装着している


ため、単に砕く動き以外にも運ぶ(歩く)動きや物をつかむ


動きも習得している。


「やっかいね~」


とシェリーさんが言うが、そんなシェリーさんに


「って言っても所詮ゴーレムよ、人の動きにはついてこれな


いでしょw」


とタミーさんが言うが、ただ、問題がある。


 このゴーレムは他の魔物ように破壊できない。


って言うか破壊したら駄目なんだ。


 採掘用のゴーレムは、高価なため、破壊するとクエストが


達成できない契約だ。


 ここで、しばし4人による作戦会議を行う。


 そして、作戦会議を終え、


「みんな準備はいいw」


とシェリーさんの掛け声に、


「はい」


「OKw」


「はい」


俺、タミーさん、三毛猫オトアが返事をし、お互い顔を


見合わせて頷く。


そして、


「パープルバスター!」


”ビシュー”


\ズキューン/


「イエローバスター!」


”ビシュー”


\ズキューン/


「レッドバスター!」


”ビシュー”


\ズキューン/


とシェリーさん、タミーさんと俺が、ビームガンで攻撃する。


その間に、三毛猫オトアは、そっと壁沿いに移動。


 オトアは猫だけに、足音一つたてない歩き方で、ゴーレム


の後ろに回り込んでいた。


”グオー”


雄たけびのような声を出し、ゴーレムは、つるはしを振り、


俺達の左端いたシェリーさんを襲う。


\\バッキーン//


 シェリーさんは、ゴーレムがつるはしを振り下ろす前に、


華麗にバク転で回避した。


 その間に、三毛猫オトアは、ゴーレムの背中を、スルスル


っと昇り、背中に突き出たレバーに飛びついた。


”ひょい”


そして、全体重をかけ、レバーを下す。


すると、急にゴーレムの胸の装甲版が上に跳ね上がった。


”グオー”


急に装甲版が跳ね上がったせいで、ゴーレムは視界を失う。


 視界を失なった、ゴーレムは、やたらめったに、右手の


つるはしや、左拳を地面にたたきつける。


\\バッキーン//、\\バッキーン//


「うわぁ~」


「ああ!」


俺とタミーさんは驚きながらも後ろにジャンプして、避ける


が、シェリーさんは、それを軽く身を振って避けた。


「今よ!テンタ君」


シェリーさんの叫びに俺はジャンプする。


「チョー!」


そして、開いた胸の装甲版にある魔晶石を掴み抜く。


 俺が魔晶石を抜いた瞬間、ゴーレムは動きを止めた。


「ふぅ~」


ため息を着く俺に、


「お疲れ様~w」


三毛猫オトアが声を掛けてくれた。


「うん、お疲れオトアw」


俺も三毛猫オトアにそう言葉を掛ける。


「お疲れ様テンタ君」


「お疲れ~w」


とシェリーさん、タミーさんが声を掛けてくれるので、


「お疲れでした、シェリーさん、タミーさん」


と言葉を掛けると……。


俺がゴーレムから引っこ抜いた魔晶石を見て、タミーさんが


言う。


「それ、魔晶石でなくてアダマイトじゃない?」


それを聞いて、俺は、手に持っている魔晶石を見ると、


「んっ?」


 確かに、魔晶石にしたらかなり重たい。


そこで、サーチしてみると、


【アダマイト塊】12kg


って出た。


「えっ?、何で!?」


と魔晶石と思ったものが、アダマイと塊だと知り混乱する


俺だった。












 5分ほど、水を飲むなどして休憩を取り、坑道の入り口に


戻ることにした。


 帰りは、ただ、歩くだけなので早い。


2時間程度で、坑道入り口まで戻って来た。


 念話で、マネージャーのヴィクセンさんにクエスト完了の


報告を行い、その足で地下12階にある鉱山事務所による。


 ここ地下12階も他の階の鉱山同様、12方向に放射状に


坑道が伸びているが、その半分がすでに掘りつくされた坑道


だ。


その北側(時計で言う12時の方)の掘りつくした坑道内


を利用した鉱山事務所に行く。


そして、クエスト完遂の報告と共に、俺が、例のゴーレム


の魔晶石を返そうとしたら……。


「アダマイトに魔晶石のような能力があるわけがない」


と言われ、俺、シェリーさん、タミーさんが、そろって


本当にこれがゴーレム胸にあったと強く主張すると、


「なら、そんな気持ちの悪いアダマイトは要らない」


と言われ突き返されてしまった。


仕方なく俺が受け取ると、俺の頭の中にエードラム様


の声がした。


≪ラッキージャない、エヘw≫


と言われた。


(まさか……これはエードラム様の仕業?)


と疑う俺だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る