34話 光の精霊のエードラム




 俺は肩に三毛猫オトアを乗せ、螺旋階段をゆっくりと昇り、皿状の頂上


に着くと、俺は肩の三毛猫オトアを床に下すと、


 突然、俺達の前に光の粒子が舞い降りてきて……。


 人型の姿になった。


 人型と言っても、女性っぽいって事と、先ほどの案内人同様に古代ギリシャ


っぽい姿……かな?って程度でしか分からないが、


「さっきはごめんねぇ~」


と現れていきなり話しかけられた。


「えっ」


と俺が驚くと、


「御布施……」


「御布施?」


 いきなり御布施と言われ、思わず聞き返す俺。


≪ああ、さっきお賽銭箱に入れたあれじゃない?テンタ君≫


と俺の肩に載った三毛猫オトアが俺に言う。


「ああ、あれか!」


俺が思い出したように言い、


「いえいえ、って、あれは決まりなんでしょう?」


と聞き返すと、


「まぁ、決まりと言うかねぇ、私のために決めた決まりではないけどね」


と返すので、


「えっ、じゃぁ……誰のための決まりですか?」


と聞き返すと、


「ほら、ここに居る神官さん達のためなのよw」


と笑顔(俺には笑顔に見える)で答える光の精霊さんらしき人……。


(人……なのか?)


と思いながらも、言い返さないでいると、俺の肩に載る三毛猫オトアが、


聞く。


≪あの~う、光の精霊さんですか?≫


その三毛猫オトアの問いに、額に手を当て”あちゃ~”って、まるで


漫画のようなリアクションを取り、


「ごめんごめん、自己紹介してなかったねぇ~」


「初めまして、私は光の精霊のエードラムです、エーちゃんと呼んで下さい」


って、また軽い自己紹介を展開する光の精霊のエードラムさん。


(この方本当に光の精霊様……なのか)


と俺は疑問に思いつつも、


「で、僕達に何の用なんですか?」


と直球の質問をしてみる。


 すると、”そうそう”って感じのジェスチャーで、


「オトアちゃんの魂がダリウスに狙われてるでしょ」


と言うので俺と三毛猫オトアが素直に、


「はい」


≪はい≫


と答えると、


「私がねぇ~それを阻止するって言うか、オトアちゃんを守るって


言うかね……、そのお手伝いをしようと思ってね」


と言うので、その真意がわからない俺は、これまた素直に聞いてみた。


「でも、すでに、転生者のトムさん達や、クリスタル教会(悪特隊や


クリスタル警備隊)の人達が、助けてくれていますし、ここに来て


光の精霊様まで……どうしてですか?」


の俺の質問に光の精霊さんは、


「いい、質問だねぇ」


と茶化したように言う。


(いやいや、そこは茶化してはダメでしょう)


と光の精霊さんを心で突っ込みを入れる俺。


「あのね、このイデアの世界は、魂の輪廻転生って言うシステムに


なっているのよ」


その精霊さんの言葉に黙って頷く、俺と三毛猫オトア


「つまりね、この世界の人々が亡くなると、その魂は輪廻の輪を通り、


昇華され、再び地上に人として生まれ変わるシステムになっているん


だけど、それを悪魔が壊しちゃうんだよねぇ~困ったことに」


そこまでを聞いて、三毛猫オトアが聞き返す。


≪悪魔が壊すって?≫


「ああ、ううん、悪魔ってさ、人の魂を食べてしまうのね、それが


悪魔達のエネルギーにもなるんだけど、それだと、本来、輪廻の輪


の中に戻る魂が少なくなっちゃうじゃない?すると自然に新しく生


まれてくる人の数も減るのよ……ここまではいい?」


と話の途中で聞いてくる光の精霊さんに、俺と三毛猫オトアは、


黙って頷き返すと、


「で、減った魂を補うために、この世界では、他の世界の魂をこの


世界に持ってくる……つまり、異世界からこの世界に転生させる訳」


(なるほど……だからこの世界には転生者と言われる人がいるのか)


光の精霊さんの言葉に俺は一人納得する。


「ただ、異世界からこの世界に魂を転生させるに当たってはね、特別


ボーナスって言うか、1回限り特典を付けるのよ……」


とここまで聞いて、三毛猫オトアが反応する。


≪それってブランチのことですか?≫


その、三毛猫オトアの言葉に、光の精霊さんが、


「しぇいかい!(正解)」


と指を立て言う。


そして、


「でもね、それって本来、例外的な措置なのよ、だって、魂が足らない


からと言って、バンバン異世界から転生させたら、魂を取られた世界の


バランスも崩れるし、このイデアの世界だって、特典付きの転生者ばか


りになってバランスが崩れるじゃない?」


(なるほど……とは思うが、何で光の精霊までが俺達を助けるのかわか


らない)


と心で思ったので、それを口にしてみた。


「でも、光の精霊様が直接俺達を助ける意味……は?」


俺の問いかけに、


「うん、前回、悪魔……特にダリウスが復活した時は、このイデア世


界の人間の体を乗っ取ったから、まだ、あの子達(クリスタルマン)


で、対処できたんだけど、今回は、異世界人のオトアちゃんの体で


しょ~、それに、元々ダリウスって太古の人間の文明が、祭り上げ


た”神”だったんだけど、今回ダリウスが手に入れたオトアちゃん


の体って、ダリウスが神だったころの姿そのものなのよ~」


その言葉に俺と三毛猫オトアが、


≪「えー――――っ!!」≫


って驚いた。


それを見た光の精霊さんが、俺達を落ち着かそうと、


「でね、でね、もし、オトアちゃんの体と共に魂までもが、


ダリウスの手に落ちてしまうと、はっきり言って”神”


的存在になってしまって、あの子達(クリスタルマン)や


この私ですら……いや、全精霊が束になってもかなわない


って訳……はっきり言って、この世界の終わりって事なのよ」


光の精霊様の話の内容を聞いて俺と三毛猫オトアが、


驚きすぎて声も出せないでいた。












「じゃ、始めようかw」


(何を始めるんだ?)


光の精霊のエードラムさんの言葉にそう思っていると、俺と


三毛猫オトアをじっくり見比べ言う。


「やっぱ、オトアちゃんの方にしよう!」


と唐突に言うので、


「何がですか?」


と俺が聞き返すと、


「ああ、同化よ~w」


とにこやかに言うので、


「同化って?」


と聞き直す俺に、焦れたいな~って感じで言う。


「一心同体になることよw」


それを聞いた俺は、答えになってないって感じで言い返す。


「何んで一心同体になるんですか?それに何でオトアなんでしょう」


とたて続けに聞くと、指を1本立てて言う。


「まず、私が同化した方が、あなた方が私の力を行使しやすい……


ってこと」


そして、今度は指2本立てて、話を続ける。


「次に、テンタ君の体は異世界人なんだけど……魔力粒子とあまり相性が


良くなさそなんで、あなたにダイレクトに私が入ったら、たぶん……


ひょっとしたら、爆発四散するかもだからw」


と笑いながら言うので、


「爆発四散って!」


って語気を強めて言ったら、


「まぁ、爆発四散……はオーバーかも」


とニッコリ笑い、続けて、


「その点オトアちゃんの体は猫だけど……それって転生者のブランチと


おんなじだと思うから、オトアちゃんの体にした方がいいかな?って思


ったの」


その言葉に、納得?と言うか反論ができない俺は、ただ、


「そうですか」


としか答えられなかった。


そこへ、三毛猫オトアが、光の精霊のエードラムさんに聞く、


≪精霊さんと同化した私はどうなるんですか?≫


と聞くと、”フフフ”って笑って、光の精霊のエードラムさんが、


「それは、お楽しみって事でw」


その言葉に俺は、


(お楽しみって……)


と、少し引っかかったので聞いてみた。


「あのう……オトアと同化するのは分かったんですが、それ


だとここの神殿に拝むべきエードラムさんが居ないのは大丈夫


なんですか?」


すると、人差し指を左右に”チッチ”と降って言う。


「問題ないわよw」


って言って、手を自身の横にかざすと……”スー”っと光の


粒子がエードラム


さんの体から抜け、手をかざした位置にもう1人のエードラム


さんを出現させた。


≪「ヘー」≫


それを見て感心する俺と三毛猫オトア


「じゃ~始めてもいいかな?」


(俺とオトアに選択の余地なんてないだろうから)


光の精霊のエードラムさんの言葉に俺はそう思い、黙って頷く。


それを見た三毛猫オトアも頷いた途端、”ヒュー”って感じで


光の精霊のエードラムさんが光の粒子となり、三毛猫オトア


体の中に入った。


 ほんと一瞬のことだった。


 じっとしている三毛猫オトアに俺は声を掛けた。


「オトア、オトア大丈夫か?」


すると三毛猫オトアが頭を2~3回振ってから、


「んっ、……大丈夫みたい」


としゃべった。


「えっ、オトア今しゃべった?」


三毛猫オトアの声を聴いた俺が聞き返すと、


「えっ、ん?、私しゃべってるの?」


と俺に確認を求めてきたので俺が大きく頷くと、


「えっ、私しゃべってる……あっ、しぇべてるねぇ、テンタ君w」


と嬉しそうにはしゃぐ、三毛猫オトアを抱き上げ俺も


「うん、しゃべってるよオトアw」


とオトアを抱き上げたまま、嬉しさのあまりその場をくるくる


回るのだった。












 俺と三毛猫オトアは意気揚々と、神殿の入り口まで戻った。


入り口で、心配そうにトムさんに声を掛けられる。


「どうだった?」


トムさんの心配をよそに、俺と三毛猫オトアは、明るくこう


答えた。


「オトアがね、オトアがしゃべれるようになったんですwトムさん」


「私、しゃべってるでしょw」


明るく答える俺と三毛猫オトアに、”そう言うことじゃないん


だが”って顔で、


「おお」


とだけ、言葉を返すトムさんだった。


トムさんと俺と三毛猫オトア3人は、みんなの待つ場所まで戻


って来ると、まず、ガイゼルさんが俺達に声を掛ける。


「どうだった?」


それに対し、俺と三毛猫オトアは、トムさんと同様に、明るく


答えた。


「オトアがね、オトアがしゃべれるようになったんですw


ガイゼルさん」


「私、しゃべってるでしょw」


俺達の予想外の返答に戸惑い、ガイゼルさんも


「おお」


とだけ答えるが、同じく俺と三毛猫オトアの話を聞いたシェリーさんと、


タミーさん、それにケンタウロスのレツさん、ダイさん達は、俺と


三毛猫オトアに駆け寄って来て、


「よかったじゃんオトアちゃんw」


「へーしゃべれるようになったんだw」


「よかったな、オトア」


「よかったなテンタ」


とすごく喜んでくれたのだった。










 トムさんが、ケンタウロスのレツさん、ダイさんにお金を渡し、


「悪いがこれで昼めし食ってきてくれ」


「「はい」」


レツさん、ダイさんはトムさんからお金を受け取り、そう返事すると、


「俺達は、あそこの”メルヤ”で昼飯食べてるから、お前達は昼飯食


べ終わったら、馬車の所まで戻って来ておいてくれ」


「「わかりました」」


トムさんにそう伝えられ、ケンタウロスのレツさん、ダイさんは、


近くのケンタウロス専用の食堂に向かった。


それを見送ったトムさんが、残りのみんなに言う。


「じゃ、俺達も昼飯しよう」


そう言って、お店の方に歩き出す。


ガイゼルさんは無言でトムさんの後を追い、俺と三毛猫オトア


それにシェリーさんとタミーさんの4人は、


「「「「はーいw」」」」


と元気よく返事をして、2人の後を着いて行くのだった。











 トムさんとガイゼルさんの後を着いて行くと、光の精霊の神殿が


ある丘の麓にある、木造平屋建ての小さなお店がそこにあった。


 実は、俺と三毛猫オトアが神殿に言っている間にガイゼル


さんが、予約しておいてくれたお店”メルヤ”。


 トムさんとガイゼルさんに続き、俺や三毛猫オトアに、


シェリーさん、タミーさんと共に店の中に入ると、街の


こジャレタ小さなレストランって感じのお店だった。


皆で、席に着くと、トムさんが店員さんに注文する。


「じゃぁ、ミアーサシャールのランチを5つ」


「畏まりましたw」


注文を聞いた店員さんが、奥の厨房へと向かう。


それを見た三毛猫オトアが、トムさんに聞いた。


「ミアーサシャールって何ですか?」


その言葉を聞いたトムさんが、


「うん?ああ……」


なんて説明すればいいのか少し考えていると、横から


ガイゼルさんが言う。


「ざっくり言うと、ミートボールだ」


その言葉に三毛猫オトアが、ニコリ笑って、


「私、ミートボール好きですw」


と言うと、トムさんが少し困ったような顔をして、


「オトアが思うのと、少し違うと思うがな」


とにやりと笑った。


それを聞いて、


(えっ、少し違うって……大丈夫かな)


と思う俺だったが、しばらくして、


「おまちどうさま」


と店員さんが順番に料理を運んできて、トムさんの言葉に納得


する。


 出てきた料理は、確かにミートボール……だが、なぜかミート


ボールに赤い色のジャムが掛けてあった。


「これは何ですか?」


とまたまた三毛猫オトアがトムさんに聞くと、


「ああ、これはワクシニウムジャムだ」


トムさんじゃなく、ガイゼルさんが代わりに答える。


「ワクシニウムジャムって?」


さらに質問する三毛猫オトアに、トムさんが、


「オトア、コケモモって知ってるか?」


と聞いてきたが、三毛猫オトアが、


「わかりません」


と答えると、トムさんは、”そうだろうな”って顔をして、


「だろうな、俺達日本人にはなじみがないが北欧のどっか


の国ではよく、肉料理にかけて食べるそうだ」


と答える。


 そのトムさんの言葉にガイゼルさんが補足する。


「意外かもしれんが結構、甘酸っぱくて、肉料理に合うぞ」


その言葉を聞き、三毛猫オトア


「そうなんですか……」


と言いながら、そのミートボールに掛かったジャムをおっか


なびっくりって感じで見つめた。


「ねぇ、早く食べようよw」


とタミーさんにせかされ、


「「「「「いただきますw」」」」」


とみんなで手を合わせ食べ始めた。


 ランチの内容は、大きなミアーサシャール(ミートボール)


が5、6個で、それにふかしたジャガイモが3つに何かわからない


葉物が少々皿に載っていて、それとは別に数切れの黒パンが付いて


いた。


 俺は、自身が食べる前に、三毛猫(オトア)のミアーサシャール


(ミートボール)をナイフとホークで冷めやすいように半分に割っ


ておく。


 そして、自身の口にホークで刺したミアーサシャール(ミート


ボール)を口に入れる。


「んっ、お、おいしいw」


思わずその言葉と共に顔が笑顔になる俺。


その俺の言葉を聞いた三毛猫オトアは俺の顔を覗き込み言う。


「テンタ君、おいしい?」


「うん、おいしいよ、オトアもたべてみぃ」


俺は、三毛猫オトアそう言って、三毛猫オトアの皿にある


半分に割ったミアーサシャール(ミートボール)を口で”フーフー”


してから、三毛猫オトアの口に持っていき言う。


「オトアも食べてみー」


俺のその言葉に、三毛猫オトアは目の前のミアーサシャール


(ミートボール)をパクリと食べ……。


「うん、オイシーw」


途端に笑顔になる三毛猫オトアだった。











「「「「「ごちそうさまでした」」」」」


食事が終わりみんなで手を合わせて言う。


 この後店を出て馬車の元へと戻り、ケンタウロスのレツさん、


ダイさんと合流し、俺達は一路、北支部に戻るのだった。


 馬車で、北支部に戻る道中、トムさんガイゼルさんを初め、


シェリーさん、タミーさんに光の精霊様から聞いた話をし、


現在、光の精霊様が三毛猫オトアの体に宿っていることを


放すと、全員がすごく驚いていた……。


で、


ふと、その時思ったんだが、あの光の精霊のエードラムさんが


言っていた、ダリウスは元々神で、オトアに似た姿をしていた


って言葉に、


(あれ、確かあのダンジョンのボス部屋の壁画にあった、


オトアに似た神様っぽい絵って……ダリウスの姿だった


のかな?)

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