第13話 鉄壁の男-再会

 その男が店に入ってきたのは、一時間後であった。

 vahoho の隣に座ると、「教授、マッカランの18年を頼むよ」


 教授と呼ばれたバーテンダーは、手慣れた手つきで、男が注文したシングルモルトを分厚いグラスに注いだ。

 男も生でやることを教授は知っていた。


「久し振りだな。まさか、あんな呼ばれかたをするとは思ってなかったよ」


「お前が決めたんじゃないか。大仏さんよ」


「ふふふ、そうだったな」

 大仏は、昔と同じいたずらっぽい笑みを浮かべ、パイプに火をつけた。

 その仕草は、あの時と同じだった。


「聞いていいか」


「ん」


「なんで、大仏なんだ」


「一つは、あんたと俺が会っていることを奴等に気づかせないため。

 もう一つは、兵庫大仏が好きだからさ」

 大仏は、ふうわりと紫煙をたゆらせた。


「ふふん。相変わらず、とぼけた奴だ」

 言葉とは裏腹にvahoho の顔は、懐かしさで緩んでいた。


「しかし、今さら、俺を呼ぶってことは、状況はそんなにひどいのか。vahoho よ」


「地にもぐって状況は分かっていないか」


「ある程度は、チームメンバーの話で、知っているが、そっちサイドのリアルな情報は入って来ないんだよ」


「チームを作ったのか」


「ああ、こういうときがいつか来ると思ってな、俺も、遊んでいただけじゃない。

 で、一人面白いやつがいる。

 まだ、始めたばかりの高校生で荒削りだが、素質が凄い。

 いきなり、廃人重ね撃ちをやりやがった」


「なんだと、日本ではお前しかできない廃人重ね撃ちを高校生がか。。」

 vahoho は、驚きで呻いた。


「ああ、あんたと組んだら面白いと思うぜ。

 あいつは、俺の通り名を受け継げるやつさ」


「獄炎か。で、そいつの名は?」


 大仏は、紫煙とともに、その名を口にした。

「和田美咲」

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