第14話
父さんは兵士に捕まり、連れて行かれた。
多分、強制労働をする事になる。
ティアおばあちゃんが僕に近づいた。
「父さんが捕まって悲しい?」
「やっと、安心して眠れるよ」
僕は笑顔で言った。
でも、何故か、ティアおばあちゃんも、インスティも、プロテクタも、悲しそうな顔をした。
【プロテクタ視点】
そうか、これがカモンの鬼人化。
預かった木の板がスキル封印の効果を持っているのか。
カモンは能力が歪んでいる。
それに制御できねえのもおかしい。
恐らくは……
「カモン、もしかして、親から鬼人化を使え無いだの出来損ないだのと色々言われ続けてこなかったか?」
「うん、出来損ないだとか、無能だとか、会社でも家でも言われ続けていたよ」
そうか、周りの大人がカモンの考えを歪めてしまっている。
混血の問題じゃねえ。
思い込みの問題だ。
「カモン、そりゃ思い込みだ。お前は無能じゃない!お前は出来そこないじゃない!お前は鬼人化を使いこなせないと思い込んでねえか?思い込まされてねえか?鬼人化はお前の思いが大事なんだ!」
本来なら鬼人族は同じ場所に固まって住む。
それによって鬼人化の使い方を親や周りの大人から自然と学んでいく。
だがカモンにはそれがねえ。
混血であることが思い込みを強くしちまってる。
制御できねえと思ったら制御できない鬼人化になっちまう。
それにあの能力も歪んでいる。
特殊過ぎる。
「そう、なのかな?」
「そうだ。もし良けりゃ、4時間後にダンジョンで鬼人化の訓練をしてみねえか?付き添うぜ」
鬼人化のクールタイムは4時間だ。
カモンも同じだろう。
「やってみたいけど、その前にお礼をしたいんだ」
【カモン視点】
僕はギルドの中に入て皆で座ると魔石をプロテクタとティアおばあちゃんに渡そうとした。
「子供が気を使うな。大人が子供を助けるのは普通の事だ」
「受け取れないよ。売れば10万ゴールド以上になるよ」
どちらにも断られた。
「まずは食事にしましょう」
「でも、返せる物が無いから」
「子供が遠慮すんなよ!座って食べとけばいいんだ」
僕はまたごちそうになった。
食事が終わるとインスティが僕の前に立った。
「カモン君、プロテクタさんはお金持ちなんですよ。奥さんも子供も一生暮らしていける位お金持ちなんです」
「えー!プロテクタは結婚してたの!」
「そっちかよ!!」
インスティとティアおばあちゃんが笑い出した。
特にインスティが凄い笑ってる。
……えー?そんなに笑う?
笑いすぎじゃない?
「ふふふふふ、そ、そうですよ。プロテクタさんは顔に似合わず美人の奥さんと子供がいます。驚きですよね。ふふふふふふふ」
インスティの笑いが収まらない。
「カモン、インスティは人をからかうのが好きだ。気にしなくていいぞ」
「う、うん。でも良くない事を言ったかな」
それを聞いたインスティがまた笑う。
「ふふふふふふ、プロテクタさんはゴロツキにも見えますからね。でも実は優しいんですよ。見た目と違って、ぷくくく」
「カモン、インスティは無視していい。こいつは話を横道に逸らす癖がある。こいつがいると話が進まねえ」
「何の話だったかな?、あ、お礼だね」
僕はもう一度お礼を出した。
「困ってねえぜ」
「受け取らないよ」
受け取って貰えない。
「それよりも鬼人化訓練だぜ」
「そうでした!お礼の代わりにクエストがあります!」
「インスティは無視でいい。話が逸れちまう」
「違うんですよ!お礼の話です!カモン君はティアにお礼をしたいんですよね?」
「うん」
「ティアは一回もダンジョンに行ったことが無いんです。お礼代わりにクエストを受けてダンジョンに連れて行ってもらえませんか?」
「それでティアは助かるのかな?」
「はい!助かります。ティアは自分で働く力が欲しいんです。でも魔石のお礼は何度言っても受け取りません。ティア、ファフとステップは私が面倒を見ますよ」
「う~ん、でも世話になるのは悪いよ」
「受けときな。強くなって後でカモンに返せばいいじゃねえか。依頼内容は?」
「おじいちゃんへの薬草納品です!最近薬草ダンジョンで薬草が取れにくくなてます。困ったおじいちゃんの為のボランティアに近いクエストです」
僕は汗を掻いた。
そういえば最近、ダンジョンの低層で毎日毎日薬草を取っていた。
いや、でも僕1人が自動採取したくらいで薬草が無くなるわけない。
でも最近、ダンジョンに薬草が少なくなっていたような?
気のせいだ。
気のせいだけど受けよう。
「受けるよ!」
「カモン君?どうしたんですか?急に汗を掻いて」
「何でもないよ!!」
「ティア、受けとけ」
「ボランティアなら受けるよ」
近くにいた冒険者の男が近づいてくる。
「良いクエストなら俺にも回せよ」
「このクエストは塩漬けの薬草採取です。薬草1束300ゴールドですが受けますか?」
「ち、普通に売るのと変わらねえだろうが!!受けねえよ!!!」
そう言って冒険者が離れていく。
周りで話を聞いていた冒険者は誰一人手を上げない。
クエストを受けるのは僕とティアおばあちゃんだけか。
「でも、明日でもいい?今釜でパンを焼いているの」
話をして明日の朝にダンジョンに向かう事になった。
ギルドの裏についていく。
そこには釜があり、木で作った屋根が釜を雨や雪から守っている。
でも横から雪が入り込んで寒い。
寒いのにファフとステップはティアおばあちゃんにくっ付いて離れない。
釜に向かうと、他の子供も集まっていた。
「今から配るよ」
ティアおばあちゃんはみんなにパンを配っていった。
配る用のパンか。
釜が小さくて何度も焼かないといけないし、釜が崩れてきてる。
「ティアはいつも貧乏なんですよ。皆に与えすぎているんです。与えすぎていつもお金がないんですよ」
「俺が魔石を渡そうとしても受け取らねえ。だからカモン、ダンジョンに行ってティアを変えてくれねえか?」
ティアおばあちゃんは笑顔で皆にパンを配る。
みんなにパンを配ってティアおばあちゃんはずっと貧乏なまま。
僕は、ティアおばあちゃんを助けたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます