第40話 和平交渉に向けて

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ミッション達成! エンチャントカード・マーダーを手に入れた!

効果:武器にエンチャントすることで人間系への特効が得られる。

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「この人達みたいにワラワラと出てきた時に便利だね」

「マテリ、おめぇはそんなもんなくても全滅させてたでねえか?」


 確かにこれは私がつけていいものかな?

 ミリータちゃんやフィムちゃんも選択肢に入る。

 それに人間系って?

 人の形をしたものに特効がある?


「わ、我々をどうする気だ」


 場所は再び魔王城。

 アルドフィンが睨みを利かせてきた。

 クソ制度の弊害で爆誕したなんとか隊のメンバーは全員、拘束してある。

 この人達には和平交渉を手伝ってもらう。

 冷静に考えたら実は悪い人達じゃないけど、報酬には代えられなかった。


「これからこの国と魔王には歩み寄ってもらいます。あなた達はまず私が魔王に打ち勝ったと女王様に報告してほしい」

「話が見えんな……」

「こちらにいらっしゃるマウちゃんは人間と争う気はない。でも人間はつい最近、魔族に襲撃されてかなりピリピリしてる。そこで役立ちそうなのがあなた達。私以外の強そうな人達がいたら、国民はより安心するでしょ。話はまずそこからだね」

「我々が魔王である貴様に?」

「は? え?」


 何言ってんのと思ったけど、私が魔王呼ばわりされていたのを思い出した。

 何をどうやったら私が魔王に見えるのさ。

 どこをどう見ても普通の女の子でしょ。

 勇者をやりすぎて何でも魔王に見えるようになったとしか思えない。


「魔王はこっちのマウちゃんね。まずは人間と魔族、お互いが接触できるきっかけを作らないとっていうわけ」

「魔王と接触だと? 下らん、寝言は」

「てぇいッ!」

「ひッ!」


 杖で魔王城の床を叩くと瓦礫が飛散した。

 あくまで建設的な交渉の一環として、これは仕方ない。

 ほら、静かになった。


「……で。私となんとか隊に魔王が敗れたと国中に広まれば、魔王に対する恐怖は薄れる。人間のほうが上という状況を国民が認識して、その上であとはシルキア女王とマウちゃんの対談が実現できればいいかな」

「そ、そんなことでうまくいくものか」

「もちろんすぐには難しいよ。だから時間をかけてやってもらうしかない」

「そこのマウの言うことを信じるのか? もし欺く計画だとすれば?」

「それなら殺してでも奪い取る」

「何を!?」


 万が一、マウちゃん達が約束を守らないなら?

 ミッションが発生しない中、私がここまで付き合ってあげたのに?

 マウちゃんを睨むと、証拠の報酬であるカードらしきものを提示して無言で何度も頷いていた。

 よかった。約束を守る気はあるみたいだ。


「ほら、あんな誠実な子が約束を破るわけないでしょ?」

「とてつもない圧を感じたが……」

「それにあなた達の念願の魔王討伐が形だけとはいえ、果たされるんだから悪い話じゃないでしょ」

「しかし、魔王は健在だ。私は人々を欺くようなことは」

「うりゃあぁッ!」

「ひぃっ!」


 手が滑って杖で床をぶち壊してしまった。

 でもまた静かになったし、建設的な交渉を進められるようでよかった。


「……そりゃ私も心苦しいよ。でもね、平和を願うのは人も魔族も同じだよ」

「そ、それは……」

「勇者の立場とか責任はわかるけど、あなた達が真の平和を願うなら正しい選択ができるはず。だから強制はしないよ。あくまでお願い」

「であれば、やはり我々は魔王を受け入れるわけには」

「ファイアボァァァァァアルッ!」

「あああぁぁあぁぁ!」


 なんとか隊の隣で爆炎が立ち昇った。

 さて、私にも我慢の限界というものがある。

 勇者? 魔王?

 私のミッションに欠片も関わらないくせに手間取らせてさ。

 ミッションがないなら私がいないところでやって?


「こっちが下手に出てるうちに賢明な答えがほしいなぁー」

「わ、わかった! 協力する!」

「うん、さすが勇者だね。そう答えてくれると思ったよ」

「こんな……こんな、ことがッ……!」


 アルドフィンとメンバー達が泣き始めた。

 やっぱり勇者として、平和に向かうことが何よりの喜びだったに違いない。

 泣くほど嬉しいなんて、私もマウちゃんの話を信じた甲斐があったよ。


「ミリータちゃん、フィムちゃん。無事、交渉が終わったよ」

「暴力こそが平和への近道かもしれねぇなぁ……」

「さすが師匠……。話術でも一歩も引けを取りませんね」


 途中、手が滑った場面はあったけどこれにて一安心。

 後はシルキア女王様にすべてを報告するだけだ。

 その後はいよいよ殺戮のカード、うふふ。ふふふふふふ。


                * * *


 ビリー・エッジの暗殺失敗は私にとってかなりの痛手だった。

 まさかあの聖女があそこまでとは。

 アズゼル討伐などまったく信じていなかった私の落ち度かもしれない。

 あれはてっきりお花畑女王のでっちあげだと思っていたのだ。

 アズゼルをやれるとしたら閃光のブライアス辺りだと思っていたが、あの聖女は完全に計算外だった。


「おのれ……。どうしてくれようか」


 前国王の仇は私が討つ。

 次こそは――。

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