第63話 星一号作戦
「カロリング伯爵、この緊急時に時間を割いて頂き感謝します。」
アスランからニュースを聞き、直ちに俺たちはカムラン執政院にカロリング伯爵を訪ねた。
「いえ、黒の女魔道士殿。こちらからお呼びしようとしておりました。
この緊急時ならばこそ、“王国の顧問”たる貴殿の御助言をどうしても頂きたく。」
カロリング伯爵はそう言って、執務机から立ち上がり、フィンさんに深く頭を下げた。
「では、カロリング伯爵。謹んでこちら剣聖ギスカール・ロベール殿をご紹介します。
剣聖ロベール殿もご助力下さるため、ご同行頂きました。」
「おお、剣聖ロベール殿。お初にお目に掛かります。この街の執政官を務めますバスティア・カロリングでございます。
この度ご助力頂けるとは、身に余る光栄でございます。」
「カルロリング伯爵。無礼を許されよ。時が時な為、状況を説明して下さらぬか。」
「はっ!事は今朝国軍が駐屯しているベルフォール要塞で起こりました。
朝食に毒物が混入され、国軍司令を始め各指揮官や、駐屯兵5000の内約3000が嘔吐し倒れました。酷い下痢も訴えております。」
「死者は出てないのだな?」
「幸い、出ておりません。使用した毒に問題があったのかも知れませんが。」
「いいえ、カロリング伯爵。これが敵の狙いなのですよ。
兵士を殺すより、生きて苦しんでいれば、残りの兵士はその介護で手が回らなくなりますし、士気が壊滅的になりますからね。
使い古された戦術ですね。」
フィンさんたちの座ったソファーの後ろに立っていたが、思わず口を挟んでしまった。
「なっ、何と狡猾な!」
「それで、コーウェン伯爵が反乱を起こしたと?」
「はい。コーウェンは配下の手勢を連れて、昨晩カムランの街を脱出し、この街と王都ヴィロワリアを結ぶバスティア街道の要衝にあるグラース砦に逃げ込んだことが判明しました。
グラース砦の兵力は不明です。
更に南西コーウェン領から、街道をこの街に向かって約4000の兵力が進んでいる事が報告されています。この兵力の中心はコーウェン領軍で、その中核をコーウェン騎士団が占めております。また、複数の傭兵団の姿も確認されております。」
「南西からの勢力は、どこまで近づいておるのか?」
「およそ5日程度の行軍距離まで接近されております。」
「ふ~ん。ダイチ殿。そなたの読み通りの展開になったのぉ。して、どんな手を打つ?将軍殿。」
剣聖様絶対面白がっているでしょ!
「剣聖殿。小官は将軍ではありません。只の士官。中尉です。」
「ふん。そんな事はどうでも良い。何ならワシがこの場でそなたに将軍位を授ける!
大事なのはこの中で、最も的確に一軍の指揮を取れるのは、そなただからな。
さあ、作戦を示してくれ。」
「ワクワクしてきたニャ!」「奇遇だな、私もだよキャシャ。」
ゴッズの二人の目がお子様の様にキラキラしてるよ。
俺はコロンの頭を撫でて大きなケモ耳を指先でいじりながら作戦を考えた。ああっ、イヤサレル・・・
「・・・きゃん。ダイチさまぁ・・・」
「では、我々も二手に分かれましょう。
南西から進軍してくる敵勢力4000には、剣聖様とゴッズ騎士団のお二人で対応していただきます。
お任せして宜しいですかな、剣聖殿?」
「ふわはっはっ!このワシにエトワルとキャシャのお守をしろと?いや、我等ゴッズの実力を見極めるつもりなのか?
領軍の4千や5千、エトワルとキャシャだけで充分。ワシはそなたとコーウェン伯爵討伐に向かった方が良い気がする。ワシの勘じゃがな。これがまた当たるのでな。」
えーっ!たった2人で4000人相手にするのー!やっぱり化け物だったか。
「分かりました。では領軍はお2人にお任せして宜しいか?エトワル殿、キャシャ殿?」
「うん、任せるニャ!」「領軍はお任せあれ。」
「エトワル君は見てるだけで良いニャ!キャシャに全部任せるニャー!」
エロ猫様が浮かれていらっしゃる。
「では、剣聖様とフィンさんとコロンとイースと私。それからロイタール殿、ディーン殿、ワルレン殿とエルドリンク殿の合計9人でグラース砦のコーウェン伯爵にお仕置きしましょう。」
「「「承知!」」」
ロイタール達弟子3人組のテンションが高いのだが・・・不安だ。
「では作戦名を告げます。本作戦名は『星一号作戦』!私の世界で宇宙一有名な反抗作戦の名です。
コーウェン伯爵の野望を打ち砕きましょう!では『星一号作戦』発動!」
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