第62話 戦乱の狼煙

 翌朝、朝食後にアスラン商会の2階にある応接室に全員を招集した。


 「みんなを集めてどうしたニャ?昨晩遅かったんで、もう一度寝直したいニャ。寝不足は美容の敵ニャ!」


 騎士団ゴッズのキャシャさんが、入室するなり大きな欠伸をしながら言った。


 「ダイチ殿は何か掴んだのではないかな?だったら聞かせて貰うとしようか。」


 剣聖様はそう言って向かいのソファーに腰を下ろした。


 「そうですね。まずは話を伺いましょう。」


 フィンさんもそう言って俺の隣に優雅に腰を下ろした。


 それに合わせて残りのみんなもそれぞれ席に着いたり、壁にもたれ掛かったりする。


 「まずは、昨晩の作戦お疲れ様でした。一部やり過ぎた方もいらっしゃったようですが、作戦目標は達成されました。」


 「わたしが悪いのではないニャ。相手が弱過ぎたのが悪いニャ。次はもっと強い相手を用意するニャ。」


 猫様は、剣聖様とイケメン騎士様の間に座って、ダルマンさんが用意したハーブティーに口を付けていた。


 「次は恐らくご満足頂けるかと。」


 「わたしを満足させられなかったら、その時はお前が相手をするニャ!」


 お猫様が唇を妖艶に舐めながら言った。


 「ほう、次の目処が立っているのか?ダイチ殿は。」


 剣聖様の目がキラリと光った。また、剣呑な圧がダダ漏れですよ・・・


 「恐らくは。」


 「詳しく聞かせてもらえまして?ダイチ殿。」


 「はい、フィンさん。」


 「「「ちっ!」」」


 ロイタールら弟子トリオが舌打ちした。


 「どうやら我々は、この国ヴァロワ王国貴族同士の権力抗争に巻き込まれたようです。」


 「ほう、興味深い。続けて。」


 イケメン騎士様が爽やかに言った。


 「アスランが戻ったら確認しますが、昨夜我々が襲撃した倉庫は、恐らく全てコーウェン伯爵の息の掛かった商人の倉庫です。

 そして、それらの商人達は十中八九塩の販売株仲間ではない商人達のはずです。

 そんな商人達の倉庫に、武装勢力と不足しているはずの塩が集まっていた。」


 「フィン嬢ちゃん。コーウェン伯爵ってのはどっちの派閥だい?」


 「貴族派です。ギスカール。貴族派の中でも、それなりの地位を占めています。

 そして、先日わたしが訪ねたカロリング伯爵は国王派で、国王の信頼の厚い人物です。」


 「成る程。」


 イケメン殿が頷く。


 「それってどう言う事ニャ?エトワル

君?」


 「ダイチ殿、どうぞ。」


 俺に振るんかい!イケメン!


 「まず1つ目。現在の塩不足は、コーウェン伯爵によって引き起こされた可能性が高い事。」


 「可能性ではなく、コーウェン伯爵が黒幕よ。」


 フィンさんに頷いて続ける。


 「2つ目。コーウェン伯爵は自前の武装勢力を密かに集めている事。」


 「カムランの街は、3執政官がそれぞれ国王派、貴族派、中立派から選ばれている為、一見バランスが取れているように見えますが、実はこの街のベルフォール要塞に駐屯している国軍司令は国王派よ。」


 「それじゃ、コーウェンが反乱を起こしても自殺行為って訳ニャ。こいつバカニャ!」


 「それですよ、キャシャさん!謎なのは。

 どうしてコーウェン伯爵はそんな勝算のない勝負をするのか。

 それから、どうして奴らはコロンとイースを狙ったのか。

 まだ、何かピースが不足しているのでは・・・」


 「この商館に忍び込もうとした奴らと同様、倉庫の奴等の何人かは我らの子供を狙ってると言ってたからな。」


 剣聖様が白い総髪をかき上げて言った。

 俺とフィンさんの間でコロンを抱っこして座っているイースが不安そうにこっちを見ている。


 「大丈夫だ!俺がいる!」


 そう言って2人の頭を撫でてあげた。


 「それで、ダイチは何処にわたしを満足させられる男がいるっていうニャ?」


 「ここからは全くのカンなのですが、コーウェン伯爵は国軍の兵力を制圧出来るだけの兵力を街の近くに隠しているのではないかと。

 でなければ貴族派の実力者が、こんな無謀な賭けに出るはずがないと思うんですよ。」


 みんな固唾を飲んで俺に注目している。


 「それに、これ自体が揺動で、本命はどこか別の狙いがある様な気がするんです。」


 「別の狙い・・・」


 「気に入ったニャ!ダイチ!もし、思いっきり暴れさせてくれたら、一晩アタシを好きにさせてあげるニャッ♡」


 なかなか色っぽいウインクだった・・・


「「む–––っ!」」


 「たっ、大変です!皆様!ベルフォール要塞の国王軍兵士の半分が毒にやられ、コーウェン伯爵が私兵を集めて郊外のグラース砦で挙兵しました!は、反乱です!」


 アスランは慌てて応接室に駆け込んで来て、とんでもないニュースを伝えた。







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