第120話 牢獄 カイトside

「ああ…学園に行くか…」


ボロボロの体に鞭を振り、制服に着替えて、教材を持ってカイトは寮に出る。


「………」


「………」


「………」


この登下校が唯一アイ達、彼女達と会える時間だ

しかし話す事は出来ない


いやする気力もないのだ


「オラ!さっさと行け!」


寮長が叱るが、いつもの事なので気にしない。


この時カイト達は集団となって2km離れた学園まで走るのだ

列を乱さず、まるで軍隊の様に走る。


昔は全力で走っていたそうだが、過去にこの時間を利用して脱走しようとした人がいたらしく、一致団結と言う名目の元、対策が行われた。


寮内には鉄格子が張り巡らされ

逃げれば魔法で見つかり

その後は言うのも悍ましい。


カイトとアイ達は初日は会えた喜びで話していたが、その夜の教育により

2度と話さなくなった。


アイ達の目は世界に絶望した目をしており

顔に傷はないが隈が酷く、多分体の見えないところに痣や傷があるのだろう。


学園に着くと裏口から地下へと降りる

此処が隔離寮の専用の入り口だ。


(なんで地下なんてあるんだよ!)


地下室自体は図書室やその他部活で使ったりと普通にあるが、こう言った隔離室があるのは異例だ。


コンクリートで出来たクラスの中で授業を受ける、この時間が1番の地獄だ

退屈な授業だとノートに落書きしたり

寝落ちしたりする事がある。


しかし、それが見つかったりすれば

教育という名の体罰が行われる

それによって骨が砕ける人も多くいる。


私語厳禁は当たり前

足を机の外に出すの禁止

休み時間はトイレの時だけ席の移動が認められる。


そこでこっそりと話す事も考えたが

それをやってこっそり付き合っていた

カップルが翌日行方不明になった。


「脱走しないと僕は此処で死ぬ。」


トイレの洋式トイレの中で愚痴をこぼす

とても小さな声でため息に近い為

気づかれる事はなかった。


「でも、失敗したら…間違いなく死ぬ。」


なんで僕がこんな目に遭わないといけないんだ、と、カイトは愚痴を毎日こぼす日々

予鈴が鳴った為教室に戻る。


昼も地獄だ


「おせぇぞ!ノロマが!」


「ごほっ!?」


飯時には先輩の所まで行き

飲み物が無くなれば注ぎ

お代わりするなら取りに行き

食べ終えたら直ぐにかたす。


カイトの様に理不尽に殴られるのも日常だ。


娯楽品も全て奪われて、見る事が出来るのは教材のみ、唯一入手出来るのは髪を切る時に引かれる新聞だ

新しい物ではないが知らないよりはマシだ。


(まぁ見る余裕すらないけどな)


カイトはそれでも暇つぶしに少し読んだりはする。

授業が全て終わればまた集団で帰る

学園もキツいが、寮よりはだいぶマシで

帰る時になると皆目が死んでいる。


夜は寮飯が出るのだが、これも後輩の仕事だ

誰よりも早く移動して、食事の準備をする。


そして先輩の好き嫌いを把握して

嫌いな味付けが出れば、好みの味付けに変える必要がある。


栗が嫌いな先輩がいれば、栗の入ったお赤飯が出た時は、その栗を全て取り除く

一つでも残っていれば、その後輩は殴られるのだ。


そして最後に残っているのは掃除だ

掃除は皆でやるのだが、楽ではない

チリ一つ、汚れ一つ残してはいけない

そして便器掃除は素手でやらなければならず

当番の日はそれはもう苦痛でしかない。


それが終わってやっと1日が終わる

と思うがまだ続く

後輩は先輩の衣服も洗わないといけない

風呂上がりの先輩の服を用意したりして

休めるのは文字通り寝る時だけだ。


(でも、この年さえ乗り越えれば、この鬱憤を後輩にぶつけてやる!)


そうカイトは不敵に笑い、気絶する様に眠る

アイ達も同様の苦痛を味わっているが

反省の色は全くない。


むしろこんな目に遭わせたエイトに対する憎悪が増していき、進級するごとに後輩に対する扱いも酷くなり、より醜く成長する事になるとは誰も思わなかった。


——————————————————————

学園編は何処まで続けようかな?





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