第102話 逆鱗

「くっ!?…こいつ!」


「強いっ!」


「ほらほらほら!まだまだ行くよ!」


3人の戦いが始まってから1時間

戦況はカイトが優勢だった。


カイトの妙な自信はこのことか!

と思った2人だが、それにも理由がある。


カイトは本来勇者の力により基礎能力が高く

他の者達よりも秀でている存在なのである

更に今回は強化アイテムを酷使し続けた事により、基本ステータスはエイトとミュウを遥かに凌ぐ。


エイトとミュウもシルフィのトレーニングにより強くなっているが、それでもジリ貧になるのは確実だ。


「いけー!カイトお兄ちゃん!!」


「ほらほら!早く死になさいよー!」


「じわじわなぶり殺しちゃえー!」


アイ達はカイトをこれでもかと応援して

この1時間攻勢に出る事もなく

エイトとミュウはただひたすらに押されていた。


アリアン「おいおい!大丈夫かよ!」


「これは…ちょっと不味いですね。」 


2人も想定外だったのだろう

焦りの色が隠せず、エイト達を見守っていた

最悪の場合、エイトは命を落とす。


「最悪の場合、私が行きます。」


「はぁ!?そんな事をしたら学園に居られなくなるぞ!」


「愛する人の為なら安いものです。」


シルフィはメイド兼護衛だ

もしもの場合も備えてあり、クビになる事はない。


更に、シルフィはエイトの事を心から愛しており、その人が危険に晒されば例え死ぬ事になろうとも助けに行くだろう。


「ミュウ!」


「OK!エイト!」


エイトとミュウは2人にしかわからない合図を送り、カイトに向かう。


「僕に勝てるわけがないんだ、いい加減諦めてくれないか?」


「そんなの!」


「やってみなきゃわからないでしょ!」


エイトが真っ直ぐ走り、ミュウがそのエイトを踏み台にして高く跳ぶ。


「それがどうした!」


エイトがカイトに攻撃した瞬間

カイトの剣に弾かれて

その僅かな隙をミュウが攻撃するがそれも弾かれて飛ばされる。


「ミュウ!」


エイトがそれを抱き抱える形で止め

カイトと距離を置く。


「たく、無駄だと言う事に早く気づいてくれないかな?」


ここまで圧倒的に不利なのにエイト達が負けていないのは、カイトが本気を出していないからだ。


もし最初っから本気を出していれば

2人は負けていただろう。


「英雄(ヒーロー)は諦めないんだよ!」


「それが魔王(ヒーロー)だからね!」


しかし、圧倒的な差であろうとも2人は戦った、決して諦めない強い心を持って

それが2人が幼き頃から描いたヒーローだからである。


「…ぷ」


「…あ?」


「ぷはは…」


「………」


「ぷひゃひゃひゃひゃwwwwwww」


しかし、その言葉をカイトは馬鹿にする

それ程までにエイトとミュウの言葉は滑稽なのだろう。


「ヒーローって…ぷひゃひゃひゃw」


そして今度はこちらを指差して

罵倒する。


「僕に無様に殺されてw」


「………」


「僕に身体を捧げてw」


「………」


「そしてあの醜い猫を守れずに死んだ負け犬wがヒーローって、お笑い芸人かよw」


「僕みたいなイケメンで、優しくて、モテて全てが完璧な僕ぅに負けた雑魚がw調子に乗ってると火傷するぜ?

ベイビィ(☝︎ ՞ਊ ՞)☝︎」


カイトがエイト達を煽った次の瞬間

2人は唐突に姿を消した。


「え?」


「ぷぎゃあァァァァァァァァァ!?」


腹を殴られて後方へ吹き飛ばされる

その威力は凄まじく、肋骨が数本折れた。


「あびぼれひべばれ!?」


次に巨大な落雷がカイト目掛けて直撃し

感電する、黒焦げにはならなかったが、全身に激痛が走る。


「ミュウ、俺はこれ程までに殺意が湧いたことがなかった。」


「あら、奇遇ね私もよ?」


2人は眼が見えないほど、そして目に見えるほど、ドス黒いオーラを垂れ流し、周囲を驚愕させる。


「それじゃあ、今思っている事もわかるな?」


「ええ、当然よ?」


シルフィは白目を剥きながら遠くを見つめ、口をこぼす。


「あーあ、私知りませんからね。」


「これは完全にプッツンだね。」


カイトは急に変わった2人を見て



「「取り敢えず…ぶっ殺そうか?」」


初めて恐怖を覚えた。


——————————————————————

完全にプッツンしてます

それはもう、プッツンしてます。

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