第90話 交差する思惑 エイトside

「…成る程、つまりあたいは前世…日本って言われる国にいた有田杏実(ありたあんみ)とそっくり…だと?」


「ああ、だけど記憶が戻らない所を見ると、転生したけど記憶は戻らなかった、もしくはただ偶然的に似ていた、と言う事になるな。」


エイトはミュウとシルフィと共にアリアンに自分達の前世の話をした

最初はあり得ないと一蹴していたが

女神アマスの言葉やミュウとエイトの関係性を言うと、その違和感の正体に気づき

嫌でも信じるしかなかった。


「アリアンは元々カイト側だったから、私達の様な感じにならなかったのかな?」


「そこの所をもっと詳しく教えてほしかったですね。」


何故エイト、ミュウ、シルフィの3人だけでアリアンには前世の記憶がないのか

その理由はわからないが、今はそんな事を考えている暇はない。


「まぁ、それは女神アマス?だっけ?また会った時にでも聞こう。」


「そうね、私達が今すべき事は…なんだっけ?」


「厄災を止める事、カイト達の因果関係を断ち切る事、女神アダマスの野望をぶち壊す事、この3つですね。」


勇者1人だけになってしまった為、本来停められるはずの厄災も、無理な可能性もある

もしそうなれば、この世界は…いや、人間が住める生存圏は大幅に減るだろう。


更に厄災を止めても

「僕の為に戦ってくれてありがとう」

とカイトは勘違いを起こし、そして結婚を迫るだろう。


その2つの元凶となった女神アダマスも失墜させなければ、上の2つがエンドレスで迫り来る。


たかが学生の子供が世界を救う為にここまで悩むのはまさにヒーローアニメみたいだ。


「あーあ、学園もあるのに、無事卒業出来るなかなぁ。」


「そこは多分大丈夫だろ?」


「なんでよ。」


「カイトだって学生だ基礎も知識もない状態で旅に行かすのは本当に自殺行為だ女神アダマスも多分、考えているはずだ…きっと…少し…願おう。」


エイト自身も不安でしかないのだろう

途中から言ってくることがおかしくなっている。


「大丈夫よ、エイト。」


「ん?」


ミュウ「例え退園する事になっても、私がエイトの側にずっといて養ってあげるから、エイトは私の側にいてくれるだけでいいの。」


「それ、ヒモニートになれって事?」


「ひもにーと?」


「ヒモの様に纏わり付き、全く働かない人間になれ、とミュウ様は言っているのです。」


それは人として終わりなのでは?

と思うアリアンだが、学園に行かず、部屋で引き篭もっていた自分が言える立場ではないので黙っておく。


「…嬉しいけど、め!」


「みゅぐっ」


デコピンされて、少し涙目になるミュウ

シルフィはその姿にクスクスと笑い

アリアンもやれやれとため息をこぼす。


「取り敢えず、私達がなすべき事はわかりました、その為に必要な事は、それを止める力をつける事です。」


「修行って事?」


学園の授業でも最低限の事はするが、最低限では駄目なのだ。

簡単な話騎士団を軽く凌駕するほどの力がなければ、厄災には勝てない。


「俺の英雄は基礎能力が低いからな、シルフィ、頼むよ。」


「ワン○ンマントレーニング?」


「先ずはそこからですね、基本を鍛えましょう。」


「…ほどほどにね?」


——————————————————————

次の日、3人が悲鳴を上げながらシルフィの地獄のトレーニングをやり始め、休日2日間は全身筋肉痛で動けなくなるのは言うまでもない。

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