第89話 お別れ

「紅茶がもう無くなってしまいましたね。」


「新しく注ぎましょうか?」


「いえ、そろそろ時間です。」


その言葉で全てを理解する

アマスはメグミから離れ元に戻るのだろう

そうなれば彼女は敵だ。


「そうですか、しかしここで戻られても困ります、せめてカイトの家でやってほしいです。」


「ええ、もちろんそうさせていただきますよ。」


エイトは冷たくそう言うが、仕方がない

メグミは好感度能力によって変わったとしてもエイトに対する好感度が変わったわけではない。


つまり、エイトの事が好きな状態で殺そうとしたのだ、いくら元に戻ったとしても信用は出来ない。


だからこそエイトにとってはもうどうでもいい事なのだ。


「取り敢えず、外までは送ります、あとはよろしくお願いします。」


「私もお供します。」


「あたいも行く。」


「では、よろしくお願いします。」


——————————————————————

~門前~


5人は門の前まで歩くと、周りに誰もいない事を確認する

いくら私有地とは言えカイトの様な気狂いに常識は通用しない用心に越した事はない。


「どうやら、見える範囲では安全な様だな。」


「いつもあの屑が来る所もいない。」


「取り巻き達の殺気も感じません。」


「魔術で索敵したけど半径100mに人影なかったよ。」


「何から何までありがとうございます、では皆さん…この世界をお願いします。」


そう言ってもう一度頭を下げる

そして背を向けて歩きだし、いつのまにか闇の世界へと消えていた。


「………」


「さ、入りましょ?」


「そうですね。」


「おいエイト、後で説明してくれよ?」


そう言って3人は屋敷へと戻っていく

そんな中1人エイトは立ち止まり

闇の中へと消えていったメグミを見ていた。


確かにエイトはメグミの事は最早どうでもいいと思っているが、昔の…日本の瑛人ではなくオラクルのエイトがその場から離れようとしなかったのだ。


『どうでもいいと思っていたのは俺だけか?』


エイト「…かもな、あいつらとの思い出は本物だ、別の時間軸では今もずっと仲良くいたかもしれない。」


『…そうか』


「でも、覚悟は出来てるよ、ミュウをシルフィをアリアンを…好きな人を守る為に、屑にだってなってやる。」


『流石は俺だな、でも本当に気をつけろよ?相手の能力は文字通り人を狂わせるからな?』


カイトの能力は好感度を掛け算形式で上げていく、しかも無条件に…,


そのせいで好感度1でも100にも1000にも上がる、そうなれば今まで仲の良かった関係も簡単に壊れる。


本当の意味でカイトは人間の屑に堕ちるのだ

そして人々を不幸にする。


それを止める事が出来るのは

この世界で4人だけだ。


「たかが学生がここまで重大な事を任されるなんて…」


アニメや漫画の世界みたいだ

中学生が変身して世界を救い

高校生がロボットに乗って世界を救う。


あの興奮が今現実にそして自分がなっている。


「英雄、ヒーロー…か」


『ああ、頑張れよ俺』


「わかってるよ俺」


そう言い残し、エイトはミュウ達のいる屋敷へと歩いて行った


——————————————————————

~カイト家前~


「…………」


メグミがカイトの家の前で立っていると

ドアが開き、カイトが不思議そうにこちらを見つめる。


「?…どうしたのメグミ?」


「…え?」


「あれ?なんで私…此処に?」


不思議そうに周りをキョロキョロすると

カイトは笑いながら手招きをする。


「なんでって、今日も僕ん家に泊まるんでしょ?」


「うん、そうなんだけど、なんか大切な事を忘れている様な気がして…」


そう言った頭を捻らせているが、メグミは「まぁいっか」と一言言って家の中に入る。


一粒の涙を零して。


——————————————————————

続く



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