第60話 話の裏側(世の中は汚いです)

「どうですか?貴方達の揉め事に1番手っ取り早い方法を提供したと思うのですが?」


数々のエリートを排出してきた、ここカルデア学園はそれを教えるための教師も規格外な存在が多い、異世界小説の様に生徒と一緒に驚く様な教師の方が逆に少ないのだ


(それにしても、ここには俺も含めてミュウの魔王、カイトの勇者、シルフィは剣姫だ、それを前にあの態度は、中々の先生だ)


実力はまだまだ無いと言う理由もあるが

それでもだ

そんな先生が提供した案はとても魅力的であった


「いいでしょう、その話乗りました。」


「いいの?カイトお兄ちゃん?」


心配そうに腕に抱きつくアイ

昔なら嫉妬していたが、前世の記憶を取り戻した今では、別に気にする意味もない


「大丈夫でしょ?何しろ勇者なんだよ?ねぇメグミ?」


「え…ええ、そうね…」


「………貴方はそれで良いの?」


サユリやアイはカイトの近くに行くがメグミは少し心配そうにこちらを見る

選択の儀式の時にも頭痛が酷かったエイトに手を差し伸べたが、気味が悪い


「…勇者が人間に剣を向ける…先生の案は下手すればただの虐めになりますが?…いいのですか?」


「だったら最初っからカイトさんに喧嘩を売らなければ良かったのではないのですか?エイトさん?」


「…あの女最初っから。」


「公開処刑させる為にわざわざ手の込んだ事をした…と言う事か。」


担任の先生は女性の方だ、つまりカイトの取り巻きの1人では無いが

他の女子達と同様にカイトに恋心をもしくは好意を抱いている者の1人と言うわけだ


(だからカイトに喧嘩を売っているエイトが気に食わなかった…そう言うことね)


「それでどうするのですか?受けるのですか?…それとも頭を床に擦り付けて謝るのですか?」


「…選択肢は1つしかないってか?」


(…まぁそもそも断る理由もないけどな)


「いいぜ?その話に乗った、カイト、これで白黒はっきりさせるぞ?」


「望むところだ、僕はミュウ達を幸せに出来るただ1人の男なんだ、誰にも負けない!」


勇者対英雄、1対1のサシになる…と思いきや


「先生、私達も参加します。」


「…え?」


シルフィが手を上げて担任に話しかける

この事には予想外だったのか

素っ頓狂な声で答える


「カイト(殺害対象)とエイトの対決はあくまでも私達に相応しい存在かを決める戦いです。」


「ええ、だからこそ2人は戦うのですよ?」


「ですが、私達の意見を無視して行うなんて酷くありませんか?」


シルフィの意見はごもっともだ

そもそも2人が言っていることは、相手がなんとも思ってなければただの思い込みの激しい男達になる(カイトはそうだけど)


「なので私達3人も参加する権利があります。」


最終的に決めるのは本人達だ、他人が勝手に決めていいものではない


「駄目だ!危険過ぎる!」


そしてそれを否定するのは案の定妄想癖の男である


「君達は病弱なんだ!そんな君達を参加させる訳にはいかないし!…そもそも4体1なんて卑怯過ぎる!」


カイトはミュウとアリアンを病弱で人と接するのが嫌いで無口で両想いの婚約者と思い込んでいる


その為シルフィ達は自分のカイトの味方をすると思い込んでいるのである

もちろん違うので


「卑怯ですかね?相手は勇者です、それくらいは妥当だと思うのですが?」


「へ?…勇者?…英雄じゃなくて?」


「当たり前です」


「はぁ!?何ふざけた事を言ってんの!?シルフィ!そんな冗談は良いから!さっさと取り消してくれ!僕は大丈夫!すぐに勝つから!!」


必死で説得しているが、根本から違う為

話が通じない

馬の耳に念仏とはこう言う事を言うのだろう


「私達はふざけていません、本気で貴方に戦いを挑みます。」


そう言うとシルフィはエイトの腕に抱きつき

胸を腕に押し付けながら話す


シルフィ「私"達"はもう身も心も彼に捧げました、貴方の様な短小な人とは死んでもごめんです。」


「………は?」


「し…シルフィ?」


「ぷ…あはははwww」


どうやら彼女は更にヤバい爆弾を隠し持っていたらしく、その顔はとてもいい笑顔だった


——————————————————————

(シルフィ…嘘だよね?)


(ええ、嘘ですよ?…今は…ですけど)


(え?)





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