第54話 日本での日々

「…だからなんだよ?僕は別に悪いことしてないだろ?」


本当に罪の意識がないらしく、普通なら驚く所も、キョトンとしている

だからこそ、ミュウは苦しんでいるのだが


「…貴方にとってはね。」


「僕にとって?」


言葉がわからないなら、教えれば良い

そして今置かれている状況を伝えれば良い

今、お前は自分で自分の首を絞めている事を


「貴方にとって、瑛人もシルフィも有田も殺しても良い人間(動物)かもしれないけど、世間一般的にそれは殺人罪、普通の人間なら死刑になるわ。」


ミュウ自身も法律は詳しくわからないが、海斗の様な人間は過去にもいた

そう言った人間は終身刑や死刑判決になっている


(勿論そうならないケースが殆どだが)


「…僕が…死刑?なんの悪い事していない僕が?あり得ないでしょw」


ミュウがちゃんと伝えても海斗にとっては可愛い嘘なんだろう


「僕がやった事は良い事だ、国民栄誉賞受賞しても可笑しくない程の事をしたんだ、なんでそんな僕が逮捕されなくちゃいけないの?」


「…………」


やはり彼には言葉が通じない様だ、先程も言ったが、今これは全国生配信中だ

ならばこそ、彼が最も怒る事を言えば良い


「そんな事よりも、早く僕の家に行こうよ?彼奴なんかすぐに忘れさせてあげるから。」


そう言ってニコニコとこちらに向かってくる

一歩ずつ進んでいくごとに心臓の鼓動が激しくなり、呼吸がし辛くなる


…しかし


(瑛人がいてくれるから、大丈夫)


彼の服の匂いを嗅ぎ、落ち着かせる

そしてスマホを取り出して海斗に見せる


「…?」


頭にはてなマークが浮かぶ海斗にミュウは言う


「私の好きな人を今ここで言うわ。」


「…え?」


そう言うと海斗は顔を赤くして照れる


「ちょ…ちょ待てよ!まだ…心の準備が。」


全国生配信中だがら、海斗は全国に自分とミュウとの関係がバレると思って照れているのだ


しかしそれは次の言葉で怒りへと変わる


「私が心から愛しているのは、貴方に殺された織村瑛人(おりむらえいと)…ただ1人よ、貴方じゃない。」


「…は?」


「小さい頃から私と一緒にいてくれた、ひとりぼっちの私の隣にいてくれたどんな時もずっと側にいてくれた最愛の人それが織村瑛人(おりむらえいと)よ!!!」


「…ふざけるなよ…黙れよ…っ」


「貴方の様な自己中で人の気持ちも理解できない、最低最悪なメンヘラサイコパスキチガイ男なんて…会った時からずっと…死ぬ程!嫌いだったのよ!!!」


「だったら死ねよ!クソビッチ!!!」ボギッ


「ガフッ!?」


ミュウが今まで溜めていた鬱憤(うっぷん)を晴らすが如く、叫んでいたら

怒りで情緒不安定になった海斗がミュウの顔を殴る


その衝撃でミュウは後ろから倒れ込み、その上を海斗が跨(またが)る

そして手で首を絞める


「か…かぁ…かは…」


呼吸が出来なくなり、徐々に苦しくなる意識が遠くなり、死が確実に近づいている事が分かる


そんな中、頭の中で浮かぶのは

ずっと隣にいてくれた瑛人、好きな人の姿だった


「なんで!あんな奴が好きなんだ!君は僕と結ばれる運命なんだ!…だから君は!僕の心の中で一生生き続けるんだ!」


どうせ手に入らないなら殺して手に入れよう

そう考えたんだろう

配信を見ていた人達もただ事でないと感じ取ったのか遠くからパトカーの音が聞こえる


(…瑛人…今…そ…ちに…逝く………..ね…)


それを最後にミュウは深い闇の中に沈んでいった


——————————————————————

続く

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