第10話 主人公様の敵になった

「で?お前はそれを聞きたいのか?」


「え?」


エイトの言葉にカイトは戸惑う、やはりわかっていない様だった。


「彼女のプライベートだぞ?幼馴染みを理由にそんなことまで聞きたいのか?」


「で…でも、何か困ったことがあるのならまず頼るのは幼馴染みである僕だろ?なのに何でお前なんだよ…」


その質問は既に答えになっている事に気づいていないようだ

エイトは呆れながらカイトに話す。


「と言う事は、ミュウは困った事はなく、お前に頼る必要もない、と言う事だろ?」


「じゃあ何でお前は起こそうとしたんだ!馴れ馴れしくミュウに触ろうとして!」


「私が起こして欲しいと頼んだのですが?」


エイトの胸ぐらを掴もうと近寄って来たカイトの前にシルフィが立つ。


「シルフィ!?何で君が!」


「お嬢様のお迎えをするために決まっています、彼は私とも仲が良いので、自然とお嬢様とも面識が出来ます、なので彼に頼んだのですよ?」


ちょうど良いタイミングでちょうど良い言い訳を言うシルフィに感謝しつつ、それの援護に入る為、エイトも話す。


「そう言う事だ、お前に頼もうとしても、そこにいる女の子達とイチャイチャしていたから無理だと判断されて俺が代わりに起こそうとしたんだ。」


嘘だ、この後ミュウ達はまたエイトの家に行くその為にわざわざ起こそうとしたのだ。

(そもそも起こさないとミュウが駄々をこねる可能性がある)


「イチャイチャって…そんなら僕に声をかければ良いだろ?何で無理なんだよ?」


「何でって…むしろわからないのか?」


ここまで来ると馬鹿すぎて頭が痛くなる

普通に考えて周りの女の子達が可哀想だとか

自分に好意を向けられている中別の女のところに行くとか

エイトですら理解できるのに…


(本当、アイ達が可哀想に思えて来た)


一体全体、どうしてこんな男に惚れるのかエイトはよくわからない、男だからわからないだけで、女になればわかるのかもしれないが、なってまでも彼のことを理解しようとは思わないけど。


「…てか、うるさすぎてミュウ起きちまったよ。」


「…あら、本当ですね。」


「…………」


「ミュウ!ごめんな大きな声出して、体調は大丈夫か?この男に色々連れ回されて疲れてないか?」


ミュウを見た途端、早口で声をかけるカイト、その姿を鬱陶しそうに見つめながらミュウは一言


「平気」


で終わらせる、そしてカイトには聞こえない声でエイトとシルフィに声をかけてその場から去る


(んじゃ、俺らも行きますか)


(そうですね、これ以上付き纏われても迷惑ですしね)


「お…おい、待てよ、何処に行くんだ?シルフィは兎に角、何でお前まで…まさかミュウに変な事をするつもりじゃないよな!?」


シルフィと一緒に廊下に出ようとして止められる、その姿は滑稽で愛する人を奪われた自分に似ていた。


しかし、自分(エイト)の家に行くと言えば間違いなくついていく、その為カイトがついてこない都合の良い言い訳を探さなくてはならない。


後ろにいるハーレム集団の中にそう言うのを感じ取ってくれる人もいないので、中々に面倒くさい。


「…変な事って、どんな事?」


「へ?い…いや、それは…」


思春期の男にそれを言える度胸はない

内容は理解してもそれを口にするのは周りに女子もいる為無理だろう。


「お前は後ろにいる彼女達の事を心配しろよ?なんか約束でもしてるんじゃないのか?」


「そ…そうよ!今日私達とパフェを食べにいく約束でしょ!」


「女の子との約束を破るの?男なのに?」


その言葉にカイトは戸惑う、それはそうだいくらミュウの事が気になるとは言え、女子との約束を破るなんて、そんな酷い事は出来ないだろう。


「ああ、いや…それは…」


「ミュウちゃんばっかで狡いよ!偶には構ってよ!」


周りの女子達がエイトの言葉に便乗して

囲み、カイトの動きを封じる。


(まさかこのハーレム野郎のこのムカつく光景に感謝しなきゃいけない日が来るなんてな)


これを好機と見たエイトはシルフィに顔で合図してその場から立ち去る。


「あ!おい!待て!」


「待つのはそっちでしょ!カイト君!」


追うとしたが、周りの女の子達に阻まれて

諦める


「…仕方ない、じゃあ行こうか?」


「やったぁ!」


「さすがカイトお兄ちゃん!」


「んじゃあ、行きましょ!」


「じゃ、私がカイト君の隣♪」


「あ!狡い!」


女子達に囲まれながら、ゆっくり歩く

女の子特有の匂いでとても心地良いが、今はある感情が芽生えている。


(…エイト•マクラレン)ギリッ


(彼奴は邪魔だ、どうにかしてミュウを守らないと)


カイトは思う、エイトは…敵だ

自分の恋路に邪魔をする、害悪だと

——————————————————————

そして彼は、同じマクラレン家の2人に目をつけた


それが、彼にとっての最悪の引き金になるとも知らずに…

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