第2話 見たくない光景
メグミは胸が大きい事がコンプレックスだった筈だ、しかし少しでもカイトに気に入られようと、そのコンプレックスを活かして胸を強調させながらやっている
己を偽り…変えてまでも好きな人に愛されようとする姿に、エイトは更に胸が締め付けられて、とても痛い
(昔は大きくなったら結婚しようとか言われてたのになぁ…)
女々しいと思われても仕方ないが、こればかりはどうしようもならない
「カイト君、私もカイト君一緒に水着を買いに行きたいんだけど、カイト君は嫌なの?」
そう言ってもう一つの隣にいるのは
幼馴染みのサユリ
カイトに「来てくれないの?」と子供の様に迫り、アイ達と同様に抱きついたりしてスキンシップが凄い
中等部の頃はあんな感じではなかった、もっとお淑やかで(日本で言う)大和撫子な感じだった
しかしカイトと出会ってから、キャラが変わり、あんな感じになってしまった
「見たいなら見たいって言ってくれないと、私達折角ここまで言ったのに意味ないんだけど…」
カイト「すいません、僕皆さんの水着姿が見たいです、お願いします!一緒に買いに来てくれませんか!」
サユリが言うと同時に捲し立てながら言う
それ程までに彼女達の水着姿が見たいのだろうか?
「ふーん…やっぱり見たいんだ…まぁそこまで言われたら、私達もやっぱり無理!なんて言えないわよ?」…チラッ
そう言ってわざとらしく前屈みになって
胸元を見せつけいる、きっと際どいところを見せているのだろう
他の奴らからは見えないがカイトのあのふしだらな顔を見れば一目瞭然だ
(俺といた頃はあんな子じゃなかったのに…)
中等部までは本当に彼女は大人しい子だった
しかしカイトと出会ってから彼女は変わってしまった
エイトととても気が合う幼馴染みで
休み時間になるとよく話していた
しかし好きな人のタイプになる為なのか…
彼女は今までの自分を捨てて新しい自分となり、今、アイツの隣にいる…
昔、自分の事が好きだと言ってくれた彼女は…もうどこにもいない
(…ハァ、胸がとても苦しい)
ちょっと前まではカイトの立ち位置にいたのは、自分だった
あの3人と仲良く、いつも一緒にいた筈なのに…今ではすっかり蚊帳の外
可愛い義理の妹に優しい義理の姉
親切な幼馴染みと一緒に今後もずっといると思っていたのだが
「現実は残酷だな。」ボソッ
カイトがこの学園に来てから、エイトは全てを奪われた
彼の事が好きだった3人は、すっかりカイトに夢中になっている
さらに腹が立つ事はカイトは
『ハーレム主人公』
らしく、アイツの周りには更に多くの女の子達がいる
今、ここのクラスにはいないが他クラス…はたまた他学年もおり、数え始めたらキリがない程だ
自分の知っている限りでは、
ボクっ娘
オレっ娘
小動物みたいな女の子
先輩
後輩
生徒会長などなど…
例を挙げたらキリがない程カイトに好意を持っている女の子達はいる
そんなハーレム野郎には更に当てはまる
"幼馴染み"がいる
「…全く…何処のらのべの世界だよ…ん?」
(なんだ?らのべって…?)
そんな事を口に零しつつ、そのハーレムメンバー達を見る
「じゃあ今日の放課後、授業が終わったら皆んなで水着を買いに行こう!…あ、そうだミュウもどう?」
それがあの子、ミュウ.フローラ
家が貴族の家柄で、エイトの様な人間とは違う別の人間だ
カイトは席の後ろを向きながらミュウに話しかけた、彼女はカイトのハーレムメンバーの古参の1人らしく、先程言ったカイトの幼馴染みだ
「……………ん?」
多分寝ていたのだろう、彼女はカイトに起こされたのが嫌だったのか、億劫そうに顔を上げた
(相変わらず、綺麗だなぁ)
美少女といえば真っ先に浮かぶであろうその姿に多くの男子生徒が心を奪われている
…その願いは叶う事はないが
(でも…カイトの幼馴染みなんだよなぁ)
そんな彼女はカイトの幼馴染みと言う
まさにハーレム主人公様に相応しいポジションにいるのだ
まけひろいんとも言われているが
あのクリスマスに滅んで欲しい人ランキング
1位に相応しい男はどれだけ女運に恵まれているのか、疑問は尽きない
「ん?もしかしてミュウ、また寝てたの?そんなにずっと寝てると夜寝れないぞ?」はは
そう言ってミュウの頭を撫でようと手を伸ばすが、ミュウ
「………(ちっ)」パシ
嫌な顔を浮かべながら、カイトの手を弾く
「…………なに?」
それから無表情でカイトに用件を聞いている
無愛想と思われがちだが、ミュウは他の人達にもあんな感じだ
普段は殆ど話さず、話す時も相手から話しかけない限り、ミュウから話しかける事もない
それは幼馴染みのカイトにもそうだ
小さい頃からああなのかカイトは気にする様子はない
どうやらカイトはそんなミュウの事が好きらしい
それはエイトが好きだった彼女達よりも
他の女の子達よりもカイトは好きなんだろう
そうでもなければ、ハーレム主人公様が
他の女の子がいる中、別の女の子を誘うとは思えない
ましてや先程まで寝ていた女の子にだ
(季節的にも誘うのは下心があるとしか思えないし)
普段カイトは誘われる事はあっても誘う事はないが、誘う人もいる、それがミュウだ
「これから僕達夏用の水着を買いに行くんだけど、せっかくだからミュウも一緒に行かない?」
しかし、ミュウの答えはいつも同じだった
「………行かない」
一言、そう言って彼女はまた顔を伏せ、寝る体制を取る
何故行かないかはわからないが"行きたくない"気持ちはよくわかる
そんな彼女を見てカイトは落ち込むかと思われたが
「そっか…じゃあまた今度誘うから、その時は一緒に行こう?」
「…………行かないから」
この光景は既に何度も見ているし、カイトも慣れているのかそれ程気にせず、アイ達との会話に戻る
その光景をボーと眺めるのが、彼の日常だった
(…かれこれ1ヶ月…か?)
カイト達がこの学園に入学してから早1ヶ月、この様な毎日を送っている
寂しい気持ちで心が一杯になる
当たり前だ好意を持ってくれた人達が手のひら返しで他の人…ハーレム主人公様の元に行き夢中になっているのだ
(俺は寝取られ小説の主人公か…いやアイツの世界のモブ…なのかもな)
寝取られなら、彼女達はこの後俺を眠らせて
縄で縛り、裸になってカイトに全てを捧げながら、本当はエイトが好きだったが
彼の逸物の方が素晴らしいから彼の物になったと笑顔で言うだろうが
残念ながら、彼はそんな人間ではない
ヘタレ唐変木、よくあるハーレム主人公の
特性を持っている為、きっと他の子達の好意に気づいていないだろう
(ハーレム小説を読む時、そのハーレム主人公を自分に置き換えて読むけど…これがもし、モブキャラの目線で見たらこんな感じなんだろうなぁ)
そう思いつつ、彼は深いため息をこぼす
「…寝取られ…ではないか…けど純粋な恋愛がしたかった。」
純愛がしたかった、ただ隣にいてくれだけでもいい、そんな純愛を…
「まぁ…無理だろうなぁ」はは
そう言って笑う
そんな事は出来ないからだ、自分に好意を持ってくれた人達は自分の想いを告げる前に去って行き
今は他の男に好意を抱いているのだから
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そうやってボーと1日を過ごし、帰宅時間になる
彼女達は朝話していた通りに水着を買いに行ったらしい…つまりデートだ
羨ましいが、今の自分には関係のない話だ
「………帰るか」
「そうですね」
「おわ!?」
「…なんですか?いきなり叫んで…」
今帰ろうとした瞬間、隣にいた女性に話かけられる、確かシルフィと言う人だった気がする
「いや、驚くよ普通」
「そうですか?」
「…んじゃあ、俺帰るからな?」
「そうね、帰りましょ?」
「ひゃい!?」
席から立ってここから去ろうとすると
何故か…そこにミュウがいた
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