第6話
会社に行くと、さっそく社長から呼び出された。
まぁ想定の範囲内です、が。
そこにあほまで呼び出されているとは…というか、すんごくふてくされているのは自業自得じゃ…。
「おはよう、神くん」
「おはようございます。昨日の報告は今がいいですかね?」
「そうだね、よろしく」
ツインズの菓子折り等の話はまぁ置いといて…。
提示した書類と謝罪でなんとか社長は許してくれたこと。
ただお若い社長なので、役員の方はこちらに対して許している風ではないことを、さくっと報告する。
一応社長からは許していただいてることに、ほっと安堵の息を吐いている。
そりゃ中々に大きな企業さんだからね
「で、岸くん、いうことは?」
「許してもらえてるならよくないですか?ていうか俺のDWなんか使えないんですけど社長なんか言ってません?あ、DWって、新しいゲームのソフトなんすけど」
開いた口がふさがらないって、こういうことだと思う。
社長と2人でお前何言ってんの?とまじまじ凝視してしまう。
「…岸くん、君、今日付けで解雇ね?」
「あ、まじっすか。ゲームめっちゃできるわラッキー」
あほだと思ってたけど、ここまでって…。
ていうかこいつ凍結のこと理解してないのか?
「じゃあ、この書類に名前と判子で解雇確定だから…ていうか、お金とかいいの?生活できるの?」
「親がいるんで」
すね齧る気満々だわ。
社長と2人で深いため息を堪える。
そんな空気さえ感じないようでサラサラとサインをして、簡単に判子までついてしまった。
こいつ、金持ちのボンボンとかだったっけ…?
「じゃあ、この瞬間から君は部外者だね。今日中に、荷物まとめて帰るように」
引き継ぐ中身もないですよ、と言われてるがそんなことにも気づかず返事してる。
まぁこれで仕事捗るわ。うん。
「神さぁ、社長なんかいってなかった?さっきも言ったけど、俺のソフトかメット動かないんだよね、途中から。壊れてんなら社長に変えてもらいたいんだけど」
「いや、どうなって動かなくなったの?」
「なんかこのシリアルナンバーは凍結しますって」
「それでしょ?岸さ、故意にそれ凍結されてんの。署名したんでしょ?業務に支障をきたしませんって。支障をきたしたら、凍結しますってやつ。なのに初っ端から支障きたしてるじゃない。誰が尻拭いしたと思ってんの?しかもそれレンタルでしょ?タダで借りてるんでしょ?早く返しなさいね、社長に。」
「は?」
「いや、は?じゃなくて。ちゃんと確認したほうがいいと思うよ、社長に。凍結解除はお金かかるって言ってたし」
「はー?返せねーし。俺手に入れたからって周りに言ってんの。めっちゃ羨ましがられてんだけど。無理って言っといてー。」
そういって出て行ってしまった。
え、これは…また私謝罪か?
頭を抱えた社長もさすがにうんざりしている。
私の手元には署名した紙はないから、内容もわからない。
と、思っていたら社長室の電話がなる。
社長が少し話した後、私に受話器を向けてきた。
「あー…PDの社長さんだよ」
「えぇ!?」
慌てて受話器を受け取って、深呼吸し保留ボタンを押す。
「はい、お電話変わりました。神です」
「あ、新あらたです。って、わかるかな?昨日あったPDの」
「はい!社長、どうかされましたか?何かありましたか?」
「んーん、あの営業くん出勤したのかなって」
社長、さすがです。タイムリーです。
今しがた解雇になったことを伝えると、そっかーとあっさりした返事が返ってきた。
どうやら署名には、返却されない場合は口座から引き落とすことを明記しているらしい。
返してくれたら、問題なし。
ただ、持ってても凍結解除するには同じ金額が必要だし任せる、と。
凍結解除されたらこっちは販売予定額の回収はできるからね、とも。
「社長、でもシリアルナンバーが把握されている以上、それを使い続けると」
「うん、まぁさっくり監視対象だよね。なにかされても困るし。でも、ルールはほかの人と同じだよ。ペナルティとか!」
「あぁ、ですよね」
「まぁ、一応そういうことだから!ゲームの世界でも会えることを楽しみにしてるね!!」
そういって、軽やかに電話は切れた。
「…良い人でよかった」
「じゃなきゃ会社潰れるとこだったからな」
朝一からぐったりしつつデスクに戻るとさくっと片付けをしている岸。
どれだけの問題を起こしたかの自覚は一切ないようだ。
うん、いっそ清々しいわ。
「なぁ、凍結解除ってどうするかしらねーの」
さっきから口を開けばそればっかりだな、こいつ。
しかし視線はこちらをむいているわけでもなく、なにかを探しているようだ。
「さぁ」
教えてやる義理もないし、と思い仕事をするためパソコンを起動させる。
「げ、凍結解除には普通に買うのと変わらん金額じゃん」
あ、一応あったんだ。と全力スルーで仕事をこなす。
とりあえずPDとの仕事は私が受け持つことになったのだから、忙しくもなる。
元からの仕事は徐々に周りに引き継ぐ予定なのだけど、みんな無理です!と顔を引きつらせている。
いや、困るから…とこちらも顔を引きつらせることになってしまった。
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