第8話 異世界ジャンプ
――異世界28・レイズリー村・協会
――年月日不明
――時間不明(部屋に到着して6時間位経過)
「キーユと言ったかの?」
そう言いながら、ウィレンは私を抱いている。
{何だよ!!このオッサン!!『意識共有』!!}
[おお、キーユ!悪いのう?おぬしの妻を借りてしまってのお。いい具合だぞ?]
私はそれどころじゃない…。
{ハイ。…と言うか、ミナへばってるだろ?もういい加減にしといてやれよな?オッサン!}
[ところで、イースという女子はもう相手にせん方が身のためだぞ?]
{ハイ。ああ、ミナがイライラしてたから大丈夫だ。もう、これ以上絡みたくないらしいしな?てか、これからどうすんだよ?}
ウィレンの動きが激しくなった。
それに連動して、私は全く余裕が無くなった。
[ミナの『異世界ジャンプ』を試してみようかと…な!!]
私は気を失いそうになった。
ウィレンは相変わらずの様子だ。
{ハイ。分かったが…だ!!おい!!ミナが壊れちゃうぞ??}
[悪いのう。こんな相性の良さは滅多に出逢えんからのう。]
{イイエ。オッサン、僕らの仲間なんだろ?いつでも出来るじゃねぇかよ!!加減してやれよ?加減を!!}
急にピタリとウィレンは動きを止めた。
[そうだったのお!忘れとったわい!!]
私は息も絶え絶えだ。
しかも最中に急のストップで、頭がおかしくなりそうだ。
「ウィレン…お願い!最後までして!!」
勇気を振り絞って私は求めた。
――異世界28・レイズリー村・協会
――年月日不明
――時間不明(部屋に到着して7時間弱経過)
{おいおい…。ミナ…。}
[平気であろう?あれくらいのこと。]
私はキーユの声で目覚めた。
どうやら気絶してしまったようだ。
「はっ…?!お願い…ウィレン。もっと…優しくして?」
「仕方ないのお。可愛いペットのお願いだからなあ?」
そうだ…。
こんな事してる場合じゃなかった。
私は、異世界で逸れた雅幸さんを探さなければならないのに…。
「キーユにウィレン?今から…『異世界ジャンプ』したいんだけど…。いい?」
{ハイ。僕は問題ない。}
「私も問題ないぞ?」
ふと、ある疑問が私の頭の中で浮上してしまってどうしようもなくなった。
「疑問なんだけど…いい?」
{ハイ。何だよ?}
「何でも聞くがよいぞ?」
「異世界へジャンプするとするじゃない?私は『訳する者』で問題無いんだけどさ?キーユとウィレンは大丈夫なの?」
{ハイ。僕は元々、異世界ジャンパーしてたからな?色んな異世界の言葉はある程度使える。}
あ…!?
そっか!!
『異世界ジャンプ』はキーユがくれたんだ。
「そう言えば…異世界ジャンパーってキーユだけじゃなくてさ?複数人いる?」
{ハイ。全異世界で4名だったかな?異世界ジャンパー。あと3人どこかの異世界にいるはずだが…。}
残りの3人の中に雅幸さんがいれば…。
そんな事を考えていた。
「私は大丈夫だぞ?お前さんの究極スキルの下位互換スキル『自動通訳』があるからの?」
何だか問題はなさそうな感じ。
そうだ…。
「2人は時間はどう判断しているの?」
ホントにいっちばん気になっていた事はこれだ。
この世界に来て、時間感覚がよく分からない…。
「これかの?ほれ!」
「え?!腕時計!?しかも日本のメーカーの…。」
何で…。
ウィレンが何で?
腕時計は少し時代を感じる造りだが、動いていた。
「ハハハハ!!言っとらんかったかの?私の父はな?ミナ…いや美春と言った方がよいか、お前さんと同じニホン人だからの?」
「転移者ってこと?!」
「そうとも。『自動通訳』は父から受け継いだ特殊スキルでの?この世界に転移させられた時貰ったそうだが…。ミナ?お前さんの『訳する者』はその類かの?」
あれ…?
この話はしてないって事なのかな?
ウィレンの予知した未来線では。
「おお、未来線が更新されたぞ…?だが安心せい!この未来線でも、お前さんは雅幸に逢えるし結ばれもする。」
「ねぇ?その未来線の先にキーユも居るのかな?」
「安心せい、私もキーユも共におるよ。」
{ハイ。}
珍しくキーユが言葉少なだ。
ずっと一緒に居れることが嬉しいのかな?
「で、その時計の時間って合ってるの?」
「これはの?時の精霊よ!時を!!こうするんだ。」
ウィレンの時計の針と日付の位置が調整された。
何か…電波時計のようだ。
{おい!!オッサン!!精霊の力無駄遣いしてないか?!}
「まぁまぁ、キーユ。ウィレン?腕時計見せて?」
日本メーカーの腕時計だから、24時間365日に換算して表示されていた。
「えっと、は?!5月3日!?22時40分…。」
私が居たのは…確か…。
2019年12月31日23時59分過ぎ。
「月日は同じなのかな?異世界でも…。」
「それは分からんぞ?だからこれから飛んでみればいいぞ?分かるだろう。」
{僕は時計持って無かったから、時間感覚全く分からなくてさ?}
「ある意味、キーユのそれも凄いよね?時計なしでチャレンジとか。って…異世界ジャンプのクールタイムはどうやって測ったの?」
{ハイ。『異世界ジャンプ』!!って言って飛ばなきゃ使えないだけだしさ?}
考えが合理的かも…。
合理的といえば雅幸さんも合理的だったのかな?
セックスレスの妹から、男日照りの姉に乗り換えちゃうとことか。
無駄なく姉を補填的な感じが…。
「それじゃあ、ミナよ。行こうかの?」
「うん。ウィレン?手を握って?」
ウィレン私の背後から何を思ったか…抱きついてきた。
そして後ろから2人は繋がってしまった。
「ウィレン…冗談だよね?」
「私は至って真面目だぞ?この状態でもジャンプ可能か試してみたくてのう?」
未来線で成功しているからこそ、こんな非常識なことが行えるのだろう。
容赦なくウィレンが荒ぶってくる…。
頭がぼぉーっとしてきた。
{おい!!オッサン!!ジャンプする瞬間くらいやめてあげろよ?}
「ミナめ、惚けおって。ジャンプせんと今以上に激しくするぞ?」
「『異世界ジャンプ』!!」
私は朦朧とした意識の中叫んだ。
ウィレンが私の腰に手をあて強く掴み、ジャンプした。
――ビュンッ!
物凄い音が聞こえた。
{異世界ジャンプ:ランダム 成功しました。}
「おお?ここはどこかの?ミナしか見えんぞ?」
私とウィレン以外、誰も見当たらない漆黒の闇に包まれている。
{ハイ。ここが異世界ジャンプでしか来れない、異世界の狭間だ。異世界ジャンパーとその周りの人間しか来れない場所だぞ?}
キーユの声がした。
私の中に居のだから、それはそうだ。
「キーユ?ここからはどうやって出れば良いの?」
あ、ダメだ。
これ以上、平静を保ってられない…。
{ハイ。って!!ウィレン?いい加減にしろよ?ミナがへばってるじゃないかよ!!}
「キーユ。お前さんがこの状況でどこまで言わずに耐えられるか、知りたかっただけのことよ。」
{ハイ。っておい!!2人とも離れるなよ?ミナからオッサン離れたら、延々にこの場所に取り残されるぞ?}
やっとウィレンが解放してくれそうな流れだったのだが…。
キーユの言葉を受け…。
ウィレンは更にガッチリ繋げてきた。
「ここ…。どれくらいの時間滞在すればいいの?」
{イイエ。ここには時間の概念は無いんだ。気づくと次の異世界に立ってる感じになるからさ?}
異世界の狭間だからなのか…?
となると、出鱈目な周期で次の異世界へ転送されるのだろう。
「おお!すまんのう!!ミナの服を司協私室のベッドの上に置いてきてしまったわい!」
今言う?!
――ビュンッ!
タイミング悪く、異世界の狭間から私達は凄い音と共に転送されたようだ。
これが私の異世界ジャンパーとしての第一跳となった。
―続く―
――――
ここ迄の主な登場人物とステータス
――――
名前 :ミナ=ルナ
種族 :スライムリーダー
魔法 :なし
称号 :キーユの妻、ウィレンのペット
二つ名 :なし
容姿 :肌【青】、髪【-】、頭部【-】、目【◉:黒】、背中【-】、その他【-】
+肉体構造:五感、声帯、性感、愛の雫、体温調節
究極スキル:傍にいる者≪ナビゲーター≫
特別スキル:異世界ジャンプ
特殊スキル:無性受胎、分析
固有スキル:擬態、取込、吸収、溶解、再生、火球、統率、扇動、分裂、
吸収スキル:催淫、強制種付け
感知スキル:元素、気配
吸収 :火属性
無効 :状態異常、痛覚
耐性 :物理、温度
擬態 :杉田美春、????(ロック状態)、オーク・♂1
再訪先 :異世界28
解析情報 :杉田美春、オーク・♂1、イース
地理 :異世界28
――――
名前 :キーユ
種族 :ナビゲーター
魔法 :回復系魔法
称号 :不明
二つ名 :不明
容姿 :肌【-】、髪【-】、頭部【-】、目【-】、背中【-】、その他【-】
究極スキル:傍にいる者≪ナビゲーター≫、引継ぐ者、閃く者、焚べる者、その他不明
特別スキル:魂転送、解析、共有、オートモード、その他不明
詳細 :異世界転生者と思われるが不明。
――――
名前 :ウィレン
種族 :不明
魔法 :回復系魔法、精霊系魔法
称号 :ミナの飼い主
二つ名 :不明
容姿 :肌【白(イエベ)】、髪【白】、頭部【-】、目【青】、背中【-】、その他【身長175cm、体重65kg】
究極スキル:予知する者、その他不明
特殊スキル:服従、ペット、自動通訳、その他不明
詳細 :元レイズリー村協会の司協。
既に見えているミナの行く末を見守ると宣言し仲間に加わる。ミナとの夜の相性は雅幸の次に抜群。
父親は日本人。形見の日本メーカー製の古びた腕時計持つ。
――――
異世界ジャンパー 〜ある三十女のスライム性活体験譚〜 茉莉鵶 @maturia_jasmine
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