1-3
「鉄の蓋を取っちまえばいいんだよ。」
突然素っ頓狂なことを言い出した男に少女は意味が分からないといった顔をする。
「どうやって?」
少女はそう聞くが、男は誤魔化すように笑った。
「細かいことはいいじゃねえか。ただ、危険なことは確かだ。」
男はそこで一息ついて、少女の方を向いた。
「お嬢ちゃんは空が見たいかい?」
その問いかけに、少女はちょっと迷った後に、頷いた。少女の答えに、男は満足そうに笑った。
「そう来なくっちゃな。」
そして男は辺りをキョロキョロと見回し始めた。
「なにしてるの?」
男の行動を不思議に思った少女は男にそう尋ねた。男は目を細めて何かを探しているような素振りをしながら、少女に一言答える。
「まずはこっから出なきゃいけねえだろ。」
と、男はその何かを見つけたように指をさした。
「ほら、あそこに行けばこっから出られる。」
少女が男が指さした先を見ると、遠目に小さくある密林があった。とはいえかなり遠そうである。
「ざっと歩きで30分ってとこだな。」
そう言って男は少女の前に進み出て密林の方へと歩き始めた。少女も男の後に続くように歩いた。
歩いている間2人は特に話すこともなく黙って歩いていたが、男と少女の距離が離れる度に男は立ち止まって少女の方へ振り返った。
「大丈夫か。」
「なにが?」
男の心配をよそに、少女は何ともないような涼しい顔をして男の横を抜いていった。はじめはぽかんとしていた男だったが、少女が絡繰り人形であることを思い出したのか軽くため息をついた。
「まぁ心配なさそうでなによりだな。」
今度は男が少女の後をついて行くような形で再び歩き始める。そして2人は先程遠目に見ていた密林の目の前までやってきた。
密林はそこだけ境界線が引かれているかのように、今まで歩いてきていた荒野とはうって変わっていた。
「ついたな。シカバネ雨林。」
「シカ...?」
と、男は自らが纏っていたボロ布を、少女の頭から覆いかぶせた。
「うわ...なに?」
困惑する少女に対して、男は少女がボロ布にすっぽり入っていることを確認して、少女に言った。
「まぁいいから被っとけ。絶対顔とか手を出すなよ。」
「わかった。」
少女はぎゅっとボロ布を握って深く被った。男はよし、と言って少女の前に手を差し出す。
「?」
「ここは迷いやすいんだ。手を繋いだ方がいい。」
男の言われた通り、少女は差し出された手をぎこちなく握った。男の手は少女にとってとても柔らかく、一回り大きい為少女の手を包んだ。
「行くぞ。絶対離すなよ。」
そして2人は密林の中へと入っていった。
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