第5話 世界は嫉妬によって燃え上がる

第5話


リナside


『………ああ、妬ましいねぇ。まさか、また負けるとは。』

「かはっ……か、勝った………!!!」


全力で私が撃ち込んだ魔法は、奴の身体を、確実に心臓を撃ち抜いた。


………レオ、彼の身体を貫いた事は心苦しいが、仕方のない事だ。


ちゃんと、お墓を建ててあげ………


「ぐっ、な、何だコレ………」

「レオ!?」


この感じ、レオ!?


もしかして、あの邪神を倒したから元に戻ったって事!?


ど、どうしよう!?


うちの聖女ちゃんは完全に寝込んでるし、こんな致命傷じゃポーションじゃ効かないし………


「ああ、リナ………」

「………レオ。」


彼は私の名を呼んでいた。


少しずつ力が抜けていく声で、ずっと………


そんな光景に私の方が耐えられなかった。


「何処に居るんだ、リナ?」

「此処、此処に居るよレオ!」

「………ああ、リナ。俺の大好きなリナ。其処に居るんだね。」

「………ごめんなさい、レオ。」

「謝らないで良いよ、リナ。もう俺との約束に縛られないで、自由になって良いんだよ。俺は許すから………」

「レオ………!」


ごめんなさい、本当にごめんなさい!


こんな私を好きになってくれてありがとう!


私も大好きだったよ………


『まぁ、僕は許さないんだけどね?』

「えっ………」


レオが私の心臓を貫いた。


………いや、違う。


この感じは………


『おいおい、どうして僕のレオを裏切っておいて泣けるのかな?そういう浅ましさは妬ましくないなぁ。』


もしかして、私は………


『邪神が心臓を貫かれた程度で死ぬ訳ないでしょ。やるなら頭も手足も、肉体の全てを潰さなきゃ!それにさ、人を一人殺しておいて、良いエンドを迎えられる訳がないでしょ。君が人間である限りさぁ?』


………そっか、コレが因果応報なのね。


『安心しなよ。僕がちゃんと栄養にしてあげるよ。まぁ、能力で吸い上げるの待つとかなり時間かかるから、直接ね!』


と、レオの顔をした化け物が私の服を剥いでいく。


そして、様々な所を舐め回し、齧り付いていく。


私は抵抗すら出来ず、食べられ続けたのだった。


☆☆☆


邪神side


『ぷはっ、不味い!やはり、不純な生物の肉は不味いですねぇ。あの暴食なら、こんな劇物さえも美味しく食べれるんだろうけど。』


やべぇ………マジでやべぇ……………


死ぬかと思った!


でも、こんな間女に負けたくなかったから、レオとの愛情パワーで頑張ってみたぜ♪


………よし、結果オーライ!


『じゃあ、他の人間も食べるとしますか。』


この勇者はあの間女よりも不味いね………


勇者だからかな?


他の奴等も五十歩百歩かな?


『さて、じゃあ少し速めようか。』


コイツ等を食べたお陰で、能力を加速させられる。


『さぁ、レオ!今度こそ、世界の終わりを私と一緒に見届けよう!そして、再び私達の世界を創りあげよう!』


私に集められるエネルギーが増し、加速していく。


周囲は次々と枯れていき、砂漠と化していく。


それに連れられ、周囲の生物達の生気、肉体さえも痩せ細っていき、少しずつ息絶えていく。


他の人間が気が付いた時にはもう遅い。


最高戦力である勇者一行は倒された。


それに気が付いた時点で、全勢力が手を組んだとしても後の祭りだ。


気が付いた時には、既に滅びは確定したという事なのだから。


彼女は嗤いながら、世界を燃え尽くす。


唯、自分と愛しの彼の為に。


☆☆☆


『あ〜あ、全部無くなっちゃたかぁ。』


世界の全ては燃料とされ、完全に燃え尽きた。


其処に在るのは、何も存在しない無だけだ。


『じゃあ、始めるとしますかね!世界の始まり始まりだせ?』


彼女が燃やし尽くした事でエネルギーが流転し始める。


そして、そのエネルギーは少しずつ世界を再び


これこそが彼女の力、彼女の目的。


彼女は妬み、燃やし尽くす事しかできない。


だから、そんな事がない様に………


………を創るのだ。


何度も、何度でも。


例え、それが無理だとしても。


………故に彼女は世界を滅ぼす。


彼女が嫉妬してしまう物が多い世界など、不要なのだから。


『さぁ、今度こそ成功させようねレオ♡』


どの世界でも、純愛に満ちた邪神は厄介なのだ。


終わり

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