第78話事件5
自白剤を与えられた子供達は醜悪の一言に尽きた。
「キャサリン嬢をモノにしてしまえばこっちのものだ!これで俺も高位貴族の仲間入りになれる。不祥事を嫌う高位貴族の、それも頂点にいる公爵家なら体面を恐ろしく気にするとリリアナ王女も言っていたからな。くくっ。交渉次第で俺が次のコードウェル公爵か。運が回ってきたとはこの事だ」
「くそ!本当は俺が公爵になりたかったのに……。じゃんけんで決めたことだから仕方ない。それよりも、キャサリン嬢の最初の男になれる方が重要だ。なにしろ帝国の皇子よりも先にいただけるんだからな。帝国も一介の貴族の男に負けたとあっては笑い話にもならないだろうぜ。いっそのこと俺の嫁は帝国の貴族から選んでもいいな。気位の高い令嬢を躾けるのも面白いぞ」
「確かにな。キャサリン嬢は俺達で暫く共有するとして、最終的には娼館行きだろ? リリアナ王女も酷い事をする。幾ら気に入らない令嬢だからってここまでするかね。まあ、顔だけの頭空っぽの王女でも王族だ。リリアナ王女のお陰で上手い汁が吸えるんだから幾らでもヨイショしてやるよ。ホントに頭の軽い王女で助かる。ちょっと値の張る物を贈れば色々と融通してくれるんだからな。それにしてもあんな美人を娼館に売るのは惜しいが、リリアナ王女の命令だ。逆らえない。飽きるまで可愛がってやろうぜ!」
男子生徒達はおぞましい会話をゲラゲラと笑いながらしている。本当に同じ人間か? 母親の一人は息子の言葉にショックを受けて倒れてしまった。他の親達も倒れる寸前だ。遥かに高い身分の令嬢を貪りつくすと自分の子供達が話しているのだから。子供達は気付いていないようだが聞く者が聞け“公爵家乗っ取り計画”と思われる内容だ。ああ、そうか。理事長たちの言葉は正しい。彼らは正に王家に仇なす者達だ。いずれは、国王に即位するであろうコードウェル公爵を脅すと宣言したのだから。それは即ち、王家を脅す行為だ。知らなかったでは済まされない。
それにリリアナも関与している。
「あんな女、男どもに穢されてその男と結婚して最後には売春婦になれば良いのよ。澄ました顔が歪む姿はみものでしょうね。ふふふ。売られた先で小銭でも数えていればいいわ。公爵家の財産は私が有効活用してあげるから。ふふふ。客が途絶えないように他のクラスメート達にも買うように命令しておかないといけないわね。ふふふ。お可哀そうな元公爵令嬢が飢えないように恵んであげないと。私はルドルフ第二皇子と結婚するわ。世界で一番幸せな花嫁になるのよ」
……首謀者はリリアナで間違いない。
私は育て方を間違えた。
リリアナの言動は単純だ。
恐らく、何処かでルドルフ殿下を見掛けて恋に落ちたのだろう。
だが、殿下には既に婚約者がいた。その婚約者を排除して自分が後釜になろうと画策した結果だ。欲しい物を手にするためなら手段を問わない。欲望に忠実過ぎる。これはワガママで済ませられる範囲を超えている。下手をすれば国家間での戦争になりかねないというのに……リリアナにも他の生徒もその事に気付かない。いや、考えてもいないのだろう。
類は友を呼ぶ。
まさにその通りだ。
自制心の利かない者同士が集まり結託して事件を起こした。
その後も子供達の聞くに堪えない内容を最後まで聞くことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます