第77話事件4
「保護者の皆様方、御子息達は高位貴族側の学舎に侵入して悪事を働こうとした事は素直に認めましたが、それ以外の事を詳しく話そうとはしないのです。例えば、公爵令嬢を襲おうとした理由。また、我が国にない薬物の流通方法など。何処で買ったのか、誰から購入したのか。そういった我々が知りたい情報を決して話そうとしない。そこで、保護者の皆様の許可の元、彼らに自白剤を投入したいと考えています」
「なんだと!?」
「息子達に自白剤を与えるというのか!」
「横暴だ!」
「そうですわ!自白剤など……息子はまだ未成年なんですよ。ここは穏便に事を収めるべきでしょう!」
「自白剤を服用すれば息子はどうなるのです? そんなもの認められません……」
生徒の親達は一斉に理事長を非難し始めた。
それも親なら当然の事だろう。自白剤は主に重犯罪者に用いられる代物だ。かなり強力な薬で、副作用を起こす者が多いとも聞く。酷い時には自我が崩壊するとか……。
「このまま御子様達が本当の事を話さない限り、私達はあなた方を『反逆罪』として捕えなければなりません。当然、他の一族の方々も関係者として捕えられます。そうなれば弁解の余地はありません。爵位剥奪に財産没収、一族の処刑は免れないでしょう。勿論、この場合、首謀者は王太子御一家という事になります。王太子殿下は廃嫡され、一家で毒杯を賜る事になるとお考え下さい」
とんでもない事を言われた。
理事長の目は本気だ。
だが――
「……学園の理事にそのような権限はないはずだ」
王族に罪を問える存在は唯一人。
「御安心ください、王太子殿下。国王陛下の許可は取ってあります」
「父上の!?」
「はい。自白剤を断わった場合は『即座に逮捕して地下牢に閉じ込めるように』との命を承っています。王太子と言えども容赦する必要はない、とのお言葉と共に」
父上……。
親子の情よりも国王としての立場を選ばれたのか。
それとも本気で私を疑っているのか? 実の息子である私を?
「自白剤の副作用を皆さまは心配されているようですが、その点につきましては
穏やかに微笑む理事長だが有無を言わさない雰囲気を漂わせていた。
私を始めとする親達は理事長の雰囲気に飲まれていた。決して断ることが出来ない。机の上にいつの間にか用意された『保護者の許可書』と『契約書』。それにサインするしかなかった。
断れば“罪人”。
選択の余地は始めからない。
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