第67話宰相side
まだ言い足りない様子であった王太子妃をなだめすかして帰っていったマクシミリアン殿下は背中は哀愁を漂わせていた。同情は一切できないが殿下も女運が悪い。母親然り、妻然り、娘然り……。
殿下は未だに御自分が王に即位できると思っている。国内外では既に次の国王はコードウェル公爵と見ているというのに。いや、理解している筈だ。もしも、自分が王位を継いでも短期間の中継ぎに過ぎないということは。
思えば、殿下も可哀そうな立場だ。
漸く産まれた王家待望の王子。
その一方で中々婚約者が決まらなかった。
陛下に似た美貌で才気煥発、性格とて明るく優しい少年だった。なのに、婚約が結べない状況にいた。これは本人の問題ではなく王妃の日頃の行いによる結果だ。頗る評判の悪い王妃が「姑」になるのだ。どこの家でも尻込みする。野心家な家もあったが奥方が離縁してまで娘を守ったと聞くほどだった。オルヴィス侯爵令嬢との婚約が『王命』によって締結しなければ殿下はずっと婚約者がいないまま過ごさなければならなかっただろう。
本当に……オルヴィス侯爵家には申し訳のないことをした。
最後まで婚約に反対していた先代オルヴィス侯爵の行き場のない怒り。「王国のため」というお代名目の綺麗ごとを駆使して説得したが、終始憎悪をこめた目で見られた。今考えると先代オルヴィス侯爵は孫娘がコードウェル公爵令嬢と同じ目にあうのではないかと危惧していたのかもしれない。もしくは、親友の娘の死に何らかの関与があると疑わしい王妃の元に孫娘を嫁がせたくなかったのだろう。全てが憶測に過ぎないが、先代オルヴィス侯爵はコードウェル公爵令嬢の死の王妃が関係していると確信していた。
王太子妃が男爵家の身分でマクシミリアン殿下と結婚できた背景には先代オルヴィス侯爵の強い後押しがあったと聞く。先代オルヴィス侯爵の王家への恨みは深い。
王女の学園生活、何事もなく終わってくれることを願うしかない。
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