第27話とある子爵side
娘が死んだ。
アナフィラキシーショックを起こして。
主治医からは「何故、食べさせた!」と怒鳴られた。
「あれだけ食べ物に気を付けるように言っただろう! 何を考えてるんだ!」
主治医の男とは幼馴染だ。
「お前!それでも親か!」
だから遠慮なく暴言が飛ぶのも仕方ない。
「何で吐き出させなかった!」
吐き出させる?
王女と一緒にいた娘を?
「吐き出させるのが無理ならすぐ病院に来い!」
あの場所には最初、王女と娘しかいなかった。パーティーの主役である娘が中々出てこないのを不思議に思って息子に呼びに行かせて事が発覚した。
「寄りにもよってケーキを食べさせた、だと!? お前は娘を殺したいのか!」
「私達が食べさせるはずないだろう! 王女殿下が菓子を持ってきていつの間にかセシルに食べさせていたんだ!」
「……なん……だと……? まだ繋がってたのか? 王太子夫妻と……」
「仕方ないだろ!」
「何が仕方ないだ!あれだけ言っただろう!縁を切れって!」
「相手は王族だ!そんな事できないに決まってるだろう!」
「いや、出来る。出来たはずだ」
「シン……」
「ルパート。お前のとこにも届いたんだろ?王家からの文が。届いたはずだ。貴族だけじゃない。王宮に少しでも関係のある者には『王太子夫妻との縁切り状』が配布されただろう!何で縁を切っておかなかったんだ!!」
「そ……れは……」
「
シンの言う通りだった。
「調子に乗っていた連中だって悪いさ。何時までも学生気分が抜けずに親や親族が何度も諫めても聴き入れなかった。結局、お偉いさんの逆鱗に触れて破滅しちまった。自業自得だ」
その通りだ。
俺が今も貴族としていられるのは「バカ騒ぎ」をしなかったからだ。
「連中だって最初から
誰も王太子殿下には逆らえない。
学園では王太子殿下が「王様」だった。
その権力者の傍にいたせいだろうか?
自分達まで「偉い」と勘違いした。
その結果が今だ。
「自分達の“友達”が地獄に真っ逆さまに落ちていくのを
高位貴族に楯突いた息子や娘を切り捨てた家は多い。
多額の賠償金の支払いで一家離散など当たり前。傷がついた貴族令嬢は修道院行きが普通だが、それさえも出来なかった処もあると聞いた。没落した家の若い娘の末路など嫌でも想像がつく。シンが言う「噂の男爵家の末娘」はマシな部類だ。彼女の売られた娼館は高級娼婦を専門に扱っている場所だからな。
洗濯女や場末の娼婦に堕ちた者は数えきれないだろう。
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