第95話 どこに行くんだ?お前は俺だけを見ればいいんだよ

前回のあらすじっ!

 なぜか、『腕ゴールテープ』とかいう、よくわからないことをすることになりました。以上っ!


※腕ゴールテープとは、立ち去ろうとする女性に対して、腕を伸ばして制止することで、ランナーがゴールテープを切る様に見えることから名付けられております。プロレス選手がよくするラリアットを、首ではなく、胴体にする動作と思ってください。ちなみにダメージ0です。




「で、その“腕ゴールテープ”ってなんだ?腕で進行を阻むしかわからなかったんだが…」


(普通、ゴールテープで進行を阻むことはできないよな?みんな、ゴールテープを切って走り去ってくし!)


 と、思っていると…


「じゃ、じゃあ!ウチが練習に付き合ってあげるよ!」


 と、先島さんが提案してくれた。


「お!ホントか!悪いな、陰キャの俺に……」


 “付き合ってもらって”と言おうとしたが、突然、大きな声で理央が…


「ちょ!ちょっとまって!」


 と、俺の言葉を遮る。


「お、おう……どした?」


「そ、その役は私がするよ!」


「えっ!無理しなくてもいいんだぞ?」


「む、無理なんかしてないよ!その役を先島さんにさせるわけにはいかないんだよ!」


「お、おう……」


(ま、まぁ、理央がそう言ってるんだ。理由は考えなくていいや。多分、俺から演技をされて、怖い思いを与えないように、先島さんを守っているんだろう)


 そんなことを思っていると…


「そんなことしなくていいよ、涼風さん。ここは提案したウチが汐留君の相手をするのが普通だから!」


「いやいや!私まだ何もしてなくて、“申し訳ないなぁ”って思っていたところだから、やらせてほしいなー!?」


 なにやら2人が言い合いをしていた。


(えっ!そんなのどっちでもいいんだけど!?はやく火口さんの興奮状態を抑え込まないと!)


 と、思ったので…


「な、なぁ、そんなことよりも今すべき大事なことがあると思うんだけど…」


「そんなことじゃないよ!凛くん!」


「そうだよ!汐留君!どっちがするかは、とても大事なことなんだよ!」


「絶対そんなことより、火口さんをどうにかする方が大事だと思うんだが!?」


(目下の問題は、火口さんを今ここで動きまわらないようにすることだろ!?いつ教室を飛び出して火口さんが、全男子生徒に『リュー様ですか!?』って聞いてまわらないか、ビクビクしてるんだけど!)


 と、俺の心境をよそに、2人はまだ言い争いをしている。


「こうなったら前回の時と同じで、ジャンケンで決めよ!」


「そうだね!ウチはそれで問題ないよ!」


(なんか、ジャンケンで相手を決めるようだな。それの方が手っ取り早いか)


「よし!じゃあ……」


「「ジャンケン……ポン!」」


 理央がグー、先島さんがチョキを出す。勝った理央はものすごく嬉しそうな表情を、負けた先島さんは心底残念そうな表情をする。


「やったー!さぁ!私が勝ったよ!凛くん!」


「あ、あぁ。見てたよ。とりあえず、俺が思っている『腕ゴールテープ』をしていいか?違ってたら後でアドバイスをくれ」


「うん!それでまずはやってみてよ!」


 と、理央から了承を得られたので…


(ごめん、先島さん。陰キャにされても嫌だとは思うが、少しの間だけ我慢してくれ)


 と、思いながら、未だに落ち込んでいる先島さんの下へと向かう。


 そんなことを思っていたため…


「あ、あれ?凛くん?どこに行って……」


 との、理央の声は聞こえず、未だに落ち込んでいる先島さんを壁際へ追い込むように俺が詰め寄る。


「あ、あの?汐留君?」


 と、先島さんは困惑しているが、俺は先島が壁を背にする立ち位置となるように詰め寄って、右手を壁に突く。


 そして、耳元で…


「どこに行くんだ?お前は俺だけを見ればいいんだよ」


 と、囁く。


 すると…


「〜〜〜〜〜〜〜!!」


 一瞬で顔が赤くなり悶え始める。


「ご、ごめん!先島さん!」



 と、俺が真剣に謝っていると…


「ちょっと!凛くん!なんで先島さんにしてるのよ!私がジャンケンに勝ったんだよ!?」


 と、理央が俺に詰め寄ってくる。


「えっ!俺の演技に付き合うとか罰ゲームだろ?だから負けた人が付き合わされるのかなぁーって……」


「………うわぁ…それ、前回の『顎クイ』の時も言われたなぁ……学習しろよ、私…」


「ん?なんだって?」


 と、聞き返すが返答はない。


 俺が、首を傾げながら返答を待っていると…


「そうだ!凛くん!」


「は、はい!」


「今のあれは『腕ゴールテープ』ではなくて『壁ドン』をしただけだから!なので、今度は私の言うことを聞きながら、演技すること!いいね!?」


「は、はい!」


 と、なぜか逆らうことができない凛であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る