第80話 俺に惚れたら火傷するぜ?

前回のあらすじっ!

 これは拡散が止まるかもしれないぜ!以上っ!




 店長の名案を聞いて実行すべく、現在、店の裏にある部屋でリューくんのコスプレ衣装を着替えているところ。


「うわぁ…相変わらず目つき悪いなぁ……。ごめんな、リューくん。俺が演じてしまったために、ファンを減らしてしまって」


 そんなことを、部屋に付いている鏡を見ながら思う。


 すると店長から…


「着替え終わりましたー?」


 と、声がかかる。


「あ、はい!今出ます!」


 そして部屋を出ると…


「うん!今日もバッチリですね!」


「そ、そうですか…褒められても、お世辞にしか聞こえませんが、ありがとうございます」


「いえいえ!では!今からの動きについて作戦会議をしましょう!」


「お願いします!」


「今から、私が昨日、リュー様のコスプレをした男性がこの場にいることを伝えます!」


(お!みんなに一言伝えて、俺に注目してもらうんだな)


「その言葉を聞いたら、君は表へ出てきて下さい!」


「わかりました!」


「そして、君はこう叫ぶのです!」


(なるほど、このタイミングで拡散を止めるようにお願いするんだな)


「“俺に惚れたら火傷するぜ?”と!」


「言えるかぁぁぁぁ!!!!何でそうなるんだよ!このタイミングで、お願いするんじゃないんかよ!?」


「…………………??」


「なぜ、理解不能みたいな顔してんだよ!俺の方が理解不能なんだが!」


(この店長、お願いする気ねぇんじゃねぇのか!?)


「まぁまぁ!落ち着いてください!この言葉の真の意味は、“拡散するなよ?”って意味なんですよ!」


「わかるかぁぁ!初めて聞いたわ!」


「えっ!わからないんですか!?それなら一度試してみるのもアリだと思いますよ!」


「ナシだわ!“一回くらいなら言ってもいいかな?”って思えるレベルのセリフじゃないから!」


「はいはい、そんなこと言わずにやりますよ!みんなには伝わりますから!」


「あっ!ちょっと!」


 そう言われて表へと連れていかれる凛であった。




 俺は店長に連れられて、表にいつでも出れるように待機させられてる。他の店員さんに見張られて……。


(信用ねぇなぁ。まぁ、見張りの子がいなかったら逃げてるがな!)


 なぜ、店員さんを振り払って逃げることをしないのかというと……



「あ、あの!で、できれば、こ、このまま、ここにいてくだしゃい!」


 と、真っ赤な顔して言われ、挙句の果てに…


「に、逃げるなら、わ、私をマンガのように、この縄で縛ってから逃げてください!」


 と、縄を俺に渡しながら言われた。


(おいぃぃぃぃ!マンガでリューくんは何をしてんだよ!)


 そう思いながら、さすがに、女性店員さんを縛ることはできないため、渋々ここに残っている。



(や、やられた!完全に店長の思い描いた通りの展開になってる!)


 そこで、先程、店長が言った言葉を思い出す。


(そういえば、“俺に惚れたら火傷するぜ?”って言葉に、“拡散するなよ?”って意味がホントにあるんだろうか?)


 そう思ったため…


「ねぇ、店員さん。“俺に惚れたら火傷するぜ?”って言葉に“拡散するなよ?”って意味があるんですか?」


「ん?……あ!は、はい!あります!リュー様ファンなら誰でも知っている意味です!」


「えっ!マジで?」


「マジです!」


(マジかよ……店長……疑って悪かったよ……)


「あ!でもですね!その言葉を言う時は、髪をかきあげながらキメ顔で言わないと、ただの変な人になってしまうので注意が必要です!」


「いや、そんな言葉をキメ顔で言っても十分変な人だから……」


(そんな注意はいらないんだけど!)


「つ、つまり!私の言った通りにすれば、リュー様ファンなら必ず真の意味を理解してくれます!」


「わ、わかった。とりあえず、やればいいんだな」


 どうやら店長の言ってたことは本当らしいので、実行しなければならないらしい。


(くっ!やるしかないのか!でも、大勢の前では一回しか言うことのできるメンタルがないぞ!)


 そんなことを思っていると…


「あ、あの!私がしっかりとできているか、チェックしましょうか?」


 と、店員さんが提案をしてきた。


「お!ホントか!一発勝負だから失敗できないって思ってたんだよ」


「それなら、私が評価しますので、ここで私に言ってみて下さい!」


「あ、あぁ、すごく恥ずかしいが……お願いします」


「い、いえ!こちらこそお願いします!」


 なぜか店員さんからもお願いされた。


(まぁ、こんな陰キャの俺からイケメンセリフを目の前で聞かされるんだ。店員さんもイヤイヤだからテンパっているんだろう。ホント、いい店員さんだなぁ)


 そんなことを思いながら、髪をかき上げてキメ顔で…


「俺に惚れたら火傷するぜ?」


 と、言う。


(これでいいのか?)


 そう思って店員さんを見てみると…


「〜〜〜〜〜〜!!!!」


 と、一人でクネクネし始めた。


(おい!大丈夫か!?………やっぱり俺なんかにされるのは気持ち悪かったんだろうなぁ)


「ほ、ホントにごめん!嫌だったと思うけど、付き合ってくれてありがとうございます!」


「い、いえ……さ、最高によかった……です……」


「えっ!ホントですか!これなら“拡散するなよ?”って伝わりますか!?」


「え、えぇ、もちろん……です…」


 と、俺に伝えてから、意識を失う。


「ホントにごめんなさい。気持ち悪い俺のために付き合ってくれて、感想まで伝えてくれるとは……。あとで何かお礼をしないと!」


 そんなことを言っていると、外から…


「なんと!昨日、リュー様のコスプレをした男性がこの場にいます!それでは表へと出てきていただきましょう!」


 と、言う言葉が聞こえてきた。


(よし!店員さんの頑張りを俺は無駄にしない!)


 そんなことを思いながら表へと歩き出す凛であった。

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