第73話 俺はずっとお前の味方だから

前回のあらすじっ!

 ごめんなさい、武田先生……。全て火口さんが悪いです。以上っ!




 先島さんから集合がかかり、俺と理央が集合する。


「えー!これから、第2回ゆきっち回復作戦を開始する!」


(やべぇ、すごくやる気がわかねぇ)


 しかし、俺に、ものすごく関係のある内容なので、先島さんたちを放置するわけにもいかず…


「で、今回はどーするんだ?」


「うーん……あ!今回もいい手を思いついたよ!」


「お!ホントか!一刻もはやく武田先生のもとへ行かないといけないから、俺にできることなら、なんでもするぞ!」


 俺がそう言うと、先島さんは俺の目をしっかりと見て…


「これは汐留君の演技力にかかってるんだよ!」


「結局このパターンかよ!」


 いつぞやの“顎クイ”と“頭なでなで”事件を思い出す。


(今度は何させられるんだろう……。できれば、イケメンにしかできないことは、やめてほしいんだが……)


「いい、汐留君。ゆきっちは昨日、“デコツンがされたい”って言ってたの」


「ふむふむ………………デコピン?」


「“デコツン”!!今さっきの“ふむふむ”は一体何だったんだよ!」


「いや、考えたらわかるかな?と思ったけど、分からなかったから聞き間違えたのかと………」


「デコピンされたい!って公言している女の子と友達なんかなりたくないわ!」


 ごもっともである。


(デコツンかぁ……。ん?デコピンと何が違うんだ?)


 そう思ったので…


「なぁ、デコピンと何が違うんだ?」


 と、先島さんに聞いてみた。


 すると…


「全然違うよ!てか、ホントに知らないの!?」


「あぁ、さっきも“デコツン?何それ?知らんなぁ…もしかして聞き間違えとか?じゃあ、ホントはなんて言ったんだろう……あ!デコポンじゃね!?”ってなった」


「デコポンされたいって何!?それ柑橘類だからね!?」


「あぁ、だから俺も“これじゃねぇなぁ”って思ったんだよ」


「で、考え抜いた挙句、デコピンになったと」


「その通りだ」


「………バカだなぁ」


「心の声ダダ漏れじゃねぇか!!」


(せめて、オブラートに包めよ!………いや、包んでもダメだわ……)


「とりあえず!汐留くんはゆきっちにデコツンをすること!」


「いや、それはわかったが、どんなことかはわかってないぞ?」


「あ!それはね!ゆきっちのおでこを指で“ツン”ってするだけだよ!」


「なんだよ、今回は簡単……」


「ちなみに、“デコツン”しながら“俺はずっとお前の味方だから”ってキメ顔で言ってもらいます!」


「できるかぁぁぁぁ!!」


 一言付け加えるだけで難易度が爆上がりする。


(毎度毎度、なんでそんなイケメンしか許されないセリフを付け加えるの!)


 そう言いたいが、言ったところで取り消すことはできないようなので…


(はぁ、腹を括ってやるか!これの次には武田先生という鬼が待ってるからな)


 そう思って、火口さんに近づく。未だに「もう一度王子様に会いたいなぁー!」とか言ってる。


 火口さんの目の前に立つと…


「あ!あのね!汐留さん!私……」


 と、火口さんが何やら喋っているが、無視して、火口さんのおでこを指で“ツン”としながら、キメ顔で…


「俺はずっとお前の味方だから」


 と、言う。


 すると、火口さんの顔が一瞬で赤くなり…


「〜〜〜〜〜〜〜〜」


 と、急に動かなくなる。


(はい。俺みたいな陰キャがすることではないですね)


「おい!火口さん動かなくなったぞ!?これで、俺に何か代償を求められても先島さんのせいにしてもらうぞ!?」


「はいはい。ウチが全て悪いことにしていいから、はやく武田先生に怒られてきて」


 と、雑に対応された。


(ホント、火口さんのトラウマになってないといいが…)


 そう思いながら教室を出る凛であった。


 ちなみに火口さんは…


「汐留さんカッコよすぎ……わ、私、ニヤニヤが止まらない……うぅ〜〜!」


 と、未だに悶えていた。




 俺は火口さんに申し訳なさを感じながら、生徒指導室へと向かう。そして、到着して、一度深呼吸を行う。


(よしっ!)


 “コンコン”とノックをして…


「失礼します」


 と、生徒指導室へと入る。


 すると…


「お、汐留凛。遅かったな。そろそろ校内放送でお前の秘密を暴露してやろうと思ってたところだ」


「危ねぇ!間に合ってよかった!」


(いや、マジで。この先生ならやりかねないからな)


「で、俺はなんでここに呼ばれたんですか?」


 と、疑問に思っていたことを聞く。


 すると…


「あぁ、理由はこれだ」


 そう言って見せられたのは、俺がコスプレして美羽に演技している動画だった。


「このやりとり何回目だよ!」


(俺の周りの奴らに拡散されすぎじゃねぇ!?)


 そう、本気で思う凛であった。

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