第66話 黙って俺に守られてりゃいいんだよ

前回のあらすじっ!

 なぜか俺が、リュー様を演じることとなりました。全部俺のアホのせいです。

………以上っ!




 店長にうまく言いくるめられて、リュー様を演じることとなった凛。


「では!お相手役は紅林さんにしていただきましょう!」


「え!相手とかいるの!?」


(一人で演技をするとかじゃないの!?)


 そんなことを思っていたが…


「よ、よろしく………凛」


 と、美羽が言うので…


「待って!俺が何を演じるかは知らないけど、美羽は俺なんかの相手をするのは嫌じゃないの?」


 そう聞くと…


「そんなことない。どんな演技でも嫌いにはならない」


 と、堂々と言われたので…


「お、おう……そうか……」


 少しだけ照れてしまった凛であった。




 俺はこの演技を甘くみていた。俺がコスプレしているキャラはドSの俺様系執事。すなわち……


「じゃあ!まずは、壁ドンしながら『黙って俺に守られてりゃいいんだよ』とキメ顔で言ってもらいます!」


「できるかぁぁぁぁ!」


 と、なってしまう。


(こんなセリフ言える男性とかいるのか!?いたらマジ尊敬するわ!)


 できないので、全力で回避を試みるが…


「り、凛……わ、私は、準備…できてる……」


 そう言われて美羽を見ると、壁ドン出来そうな壁の近くで、顔を赤くして恥ずかしがりながら待機している。


(くっ!やるしかない!美羽が体を張ってまで、俺が店にやってしまった迷惑を解消しようとしてくれてるんだ!ここで怖気付いてたら美羽の頑張りを無駄にしてしまう!)


 そう思って決意を固める。


「美羽がここまで体を張ってくれてるんだ。俺はどんな演技でも演じきってみせる!」


 そう一人で呟いて、美羽を壁際へ追い込む。


 そして、壁ドンしてから……


「黙って俺に守られてりゃいいんだよ」


 と、キメ顔で言う。


 すると…


「〜〜〜〜〜〜〜〜」


 美羽の顔が一瞬で赤くなり、声にならない声をあげて悶える。


(えっ!大丈夫か!?美羽!?)


 そう思って声をかけようとすると……


「「「「キャァァァァァァ!!!!」」」」


 と、周りが叫び出す。よく見ると店にいた女性客がコチラを見ていたようで、その人たちが悲鳴あげている。


(あ、やっぱり悲鳴を上げたくなるくらいなんだ……。ごめんな、美羽……。ホント俺のせいで……。あとで何か奢るよ……)


 そんなことを思ったが、周りの人たちは……


「ヤ、ヤバい!あれは!“俺執事”の第1巻で『脅迫状がお嬢様へ送り付けられて、怯えていた時にリュー様がお嬢様へ言った言葉!』それを選択するとは…………グッドです!」


「う、羨ましいぞ!あの女の子!私と変わってほしいんだけど!」


「ヤ、ヤバすぎる!こ、この動画は全国のリュー様ファンに拡散しなければっ!」


 そんなことをどこかの人たちが話していたが、叫び声や凛が変なことを考えていたため、凛の耳には届かなかった。


 また、復活した美羽が…


「こ、これはヤバい。カッコよすぎ……。り、凛に言ってもらうとすごく胸がドキドキする」


 と、呟いていたことも、凛の耳には届かなかった。




 周りの騒ぎが一向に収まらない中、店長が…


「そ、想像以上でした。ま、まさにリュー様です」


「お、お世辞ありがとうございます」


(周りの反応から見て、お世辞なのは一目瞭然なんだよなぁ。でも、これで終わりだろう)


 と、思っていると…


「はい!次に移ります!」


「まだやるのかよ!!」


 まだ続行らしいです。


(俺は大丈夫だけど、美羽は大丈夫か?)


 そう思って美羽を見てみると…


「ま、まだ、私は……やれる!」


「そんな決意を持って望まなくても!」


 ものすごく気合を入れていた。どうやら、並大抵の覚悟では俺の演技に付き合ってられないらしい。ホント、ごめんな…美羽…。


「紅林さんも大丈夫そうなので、次の演技に移ります!」


(美羽が大丈夫って言うんだからまだ付き合うか。まぁ、俺に終了の権限はないんだがな)


 そんなことを思いながら次の演技内容にビクビクする凛であった。

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