第44話 うるせぇぇぇぇ!店長は黙ってろ!

前回のあらすじっ!

 アウトレットの隅っこにある自動販売機に行き、駄菓子屋に行きました。次はどこかな?とワクワクしています。以上っ!




「次はどこに行くんだ?」


 と、隣にいる涼風さんに聞く。


「次は子どものおもちゃ売り場に………」


 そう言いながら、ある一点を見つめて立ち止まる涼風さん。俺もそちらを向くと…


(って!昨日山野と一緒に来たコスプレショップじゃねぇか!)


 そこは昨日山野がメイド服を着た店だった。


 ここには変なものしか売ってない(理由は昨日の一件)からできれば寄りたくない!


 しかし……


「子どものおもちゃ売り場ではなかったけど、この場所は外せない!」


「いや、待って!なんでか知らないけど、ここは外そ!?この辺りの店がいいなら隣でいいからさ!」


 そう全力で止めに入るが……


「ここは外せないんだよ!汐留くん!」


 どうやら涼風さんの意思は固いようです。そう言ってスタスタと店に入っていく。涼風さんが入ってしまったので、俺も入るしかなくなる。


 すると…


「へぇー!かわいい服がたくさん置いてるね!」


「あ、あぁ。そうだな」


(コスプレのことで頭がいっぱいで忘れてたが、ここ、女性物の服をメインに取り扱ってる店だった!俺、すごく浮いてるんだが!)


 周りの女性がチラチラと俺を見ている。どうやら俺はいたらダメなようだ。


「じゃ、じゃあ、俺は外で待ってるよ」


 そう言ってスタスタと出ようとするが……


「あれ?君は昨日の……」


 と、そこでこの店の店長に声をかけられる。


「げっ!」


(出会いたくない人に出会ってしまった!)


 ここで凛の脳内はフル稼働する!


 1、逃げる 

 2、逃げる 

 3、逃げる 

 4、立ち向かうと見せかけて逃げる


(俺の本能、どんだけ逃げたいんだよ!)


 全力で逃げることをオススメされた。そのため、声に反応せず、逃げ出す。


「グヘっ!」


 首の襟を掴まれた。脳内が“ダメだ!逃げられない!”って教えてくれる。


(そんなん知っとるわ!ここから逃げる方法を全力で考えんかい!)


「お客様〜、当店へ、どのような御用でしょうか?メイド服ですか?ナース服ですか?それともチャイナ服ですか?」


「なんでコスプレ服を探しに来た前提なんだよ!」


(もうヤダ!この人!)


 そんなやりとりをしていると……


「何してんの、汐留くん」


 と、涼風さんがジト目でこちらを見ながら言ってくる。


「い、いやぁ、この店員さんに捕まってしまって……」


「はぁ、はいはい、助けますよ。……すみません店員さん。こちらの男性は……」


 と、涼風さんが店長へ話し始めると……


「あれ!?昨日の彼女さんとはまた違う女の子と来てたんだ!」


 そう、店長が言う。


「えっ!店長!今その反応いらなくね!?」


(なんで涼風さんの話に割って入ったんだよ!しかもすごく、どうでもいいことなんだけど!)


 と、そんなことを思ったが……


「へぇ、汐留くん。昨日、“彼女さん”とこの店に来たんだ」


 “彼女さん”のところは強い口調となっていた。


 そのため…


「い、いや、山野は彼女なんかじゃなくて……」


「えっ!あの女の子、彼女じゃなかったの!?」


「なんで店長が一番リアクション大きんだよ!」


(涼風さんに言ってんの!店長に言ってねぇよ!)


「ふーん……。店長に彼女と間違われるって、この店でイチャイチャでもしたの?」


(ヤバい!怒ってらっしゃる!なぜだ!?……あ、多分、“陰キャなんだから、美少女の後輩とイチャイチャするな!”とかかな?)


 そんなことを考えて自己完結し……


「いや!山野とイチャイ………」


「彼、ヤバいですよ!昨日の彼女さんと手を繋いだり、彼女さんにメイド服を着させてましたから!」


「うるせぇぇぇぇ!店長は黙ってろ!」


(なんで店長が元気に答えてんだよ!)


 その返答を聞いた涼風さんは…


「へぇ、昨日の彼女さんと手を繋いで、メイド服を着させて、挙句の果てにお姫様抱っこしたんだ」


「いや、お姫様抱っこはしてねぇよ!?」


 店長の話聞いてた!?


「“お姫様抱っこはしてない”ってことは手を繋ぐのと、メイド服を着させたのはホントなんだね」


 と、ジト目で見てくる。


(やべぇ、さっきの俺の発言だとそう言ってるわ)


「……………はい」


 どんどん俺は縮こまっていく。


 そんな俺をよそに、さっきから店長は「修羅場!?これが俗に言う修羅場ってやつなんだね!」とか言ってる。


(腹立つな!原因のほとんどは店長なんだが!!)


 そんなことを思う凛であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る