第34話 ウチはセンパイがいれば十分なのに?

前回のあらすじっ!

 まだまだ後輩とのショッピングなうです。おうち帰りたいです。以上っ!




 しばらく歩いていると…


「あ!あそこの服屋、セールしてるようです!行ってみたいです!」


「了解。なら俺は隣の本屋に行っとくわ」


 そんな事を言うので俺は本屋に向かって歩こうとするが……


「グヘッ」


 またまた制服の襟を掴まれる。


「なんでですか!?そこは普通、ウチに着いて行くところなのではないんですか!?」


「いや、そんなこと言われても…」


 そんな普通、知らないんですが!


「あ!陰キャなセンパイはこんな場所で女の子と二人っきりで遊びに来ることとかないですからね!」


 ニヤニヤして言われるので俺も反論したくなり…


「はーっはっはっはー。俺を舐めてもらっては困るな後輩よ!女の子と二人っきりでここに遊ぶことならあるぞ!それも月に1、2回もな!」


 そう俺が堂々と言うと……


「へぇ?そうなんですね。ウチはセンパイがいれば十分なのに?センパイはウチじゃなく他の女と遊んでるんですね?センパイにはウチだけがいればいいのに……。これは今度からセンパイの動きを監視しなければ……」


「いやいや!安心しろ!それは妹のことだからな!」


 なんかハイライトの消えた目で怖いこと言い出したので、全力で妹のことと説明する。


(あれ?おかしいな?俺がこう言うと「セ、センパイにもそんな女の子がいたなんて!もう陰キャって言いません!ごめんなさいでした!」とかが返ってくると思ったんだが!?)


「へぇ、舞ちゃんと月に1、2回は来てるんですね……。さすがです。シスコンセンパイ」


「いや、シスコンじゃねぇよ!?」


「…………………」


 ハイライトの消えた目から一転、ジト目で見られるので、全力で言い訳をする。このやりとり何回目だよ……。


「い、いや!俺だって別に好きで舞と来てるわけじゃないぞ!?舞がいろいろ言ってくるし、俺が着いてこないなら一人で行くとか言い出すから、仕方なく付き合ってるだけだぞ!?べ、別に舞一人だと重いものを持って帰る時に危ないなぁとか、ナンパに会うかもしれないなぁとか微塵も思ってないからな!?」


「…………愛されてるなぁ、舞ちゃん……」


「なんでそうなる!?」


 だって舞が「お兄が来ないなら一人でナンパされてくるよ!?」とか「そう言えば今度奢ってくれるって言ってたよね!?」とか言うから仕方なく付き合ってるだけだ。べ、別に舞が心配とか思ったことないんだからねっ!


「はいはいわかりましたよ。シスコンではないんですね」


 と、渋々納得してくれる。


(いや、ホントに納得してくれた!?)


 そう思うが、山野がそう言うなら掘り返すのはやめよう。そう思う凛であった。




 なぜか俺も山野の買い物に付き合うこととなったため、現在、山野と一緒に女性物の服を主に取り扱っている店へと入る。


「お、俺、通報されたりとかしないかな?あ、あそこの人、俺見ながらケータイ持ったぞ!これは逃げなきゃ!」


 そう言って逃げ出そうとするが……


「グヘッ」


 今日何度目かのストップがかかる。


「毎回なんで俺の襟を掴むの!?」


「いや、センパイの“グヘッ”が聞きたくなったので」


「そんなんせんでええわ!」


 と、ツッコむが、聞く耳もたず。おい、俺の方が先輩なんだが……。


「とりあえず、私と一緒にいれば通報される事はないので、安心してください!」


「ほ、ホントかなぁ」


 そう言われても安心できない。


(だって俺だよ?陰キャだよ?目を髪で隠しているんだよ?怪しさ満点の俺だよ!?

……こんなんで満点取りたくないわ!)


 そんな事を考えていると……


「な、なら!い、いかにもウチと、せ、センパイがつ、つつ付き合っているかのように、ふ、ふ、振る舞えばいいんですよ!」


「いや、なんでだよ!?」


 なぜかそんな提案をしてくる。いや、俺だよ?俺と恋人のフリをしても山野に良くない噂が広がるだけだよ!?


「い、いいんですよ!ウチのことは気にしなくて!」


「そ、そういうわけにも………」


 と、反論しようとするが……


「えいっ!」


 と、言いながら俺の手を握る山野。


「こ、こここれならどこからどう見ても、う、ウチと、せ、センパイは、こ、こここ恋人………に見えるはず…です……」


 耳まで真っ赤にして、だんだんと声が小さくなりながら言う。


(お、おおおお落ち着け!俺!べ、べべべ別に手を繋がれたくらいで動揺するな!舞とだって手を繋いだことあるんだ!(いつか思い出せないくらい昔)こんなに動揺してたら、またからかわれる!大人の余裕を見せる時だ!)


「あ、いや、その………」


(いやぁぁぁぁ!無理でしたぁぁぁ!大人の余裕は陰キャには無理だった!陽キャにしかできないやつだ!絶対俺の顔赤くなってるって!)


 そんな事を考えていると周りから……


「まぁ、見て見て!あそこの二人!」


「まぁ、初々しいカップルですわ!」


 等々の声が聞こえてますます顔を赤くする凛であった。

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