【第3部 最終回】悪魔になったあたし
シオンに黒空を消すことに反対されたあたし。…どうすれば良い?
「…わかったよ。黒空を消すのをあきらめる」
こうするしかないのか…。
シオンの家で脅すように彼女に頼んだことが、罪悪感として残っていた。
そんな状態で、泣きそうな顔のシオンだ。胸が締め付けられる。
「カズラ…。ありがとう」
シオンは笑顔を取り戻した。
その時、予鈴が鳴った。
「カズラ、次は移動教室だよ。急ごう」
シオンは先に戻っていった。
これで良かったの?
シオンのことを考えたら、誰も消さないほうがいい。
あたしの気持ちは変わらない。
アイツらと同じ教室にいるだけで虫唾が走る。
あたしの気持ちとシオンの気持ちは、決して交わらない。
あたしは、自分の気持ちとシオンの気持ちに挟まれながら
今後、あの教室で過ごさないといけないの?
嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ!!
強い拒否が頭に浮かんだ後、突然胸が締め付けられる痛みがした。
苦しい。声は出ないし、身動きもとれない。…助けて、誰か。
あたしはその場で意識を失った。
「カズラよ。起きるが良い」
誰かがあたしを呼んでいる? あたしは目を開けて立ち上がる。
この空間は…。あたしが自称悪魔から力をもらった場所だ。
この場所でもらった力が現実で使えたから…。ここはあたしの頭の中?
「久しいな。カズラ。我を覚えているか?」
「自称悪魔。…もちろん覚えているわよ」
「力をもらっておきながら、我を悪魔と信じぬか。やはりそなたは面白い」
高笑いする自称悪魔。
「あんた、あたしに何の用なの?」
「なに、そなたの邪悪な力が高まったのでな。様子を見に来たのだ」
あたしの邪悪な力が高まった? どういう事?
「そなたは消したい奴がいる。だが友人のことを考えるとできない。…違うか?」
「あんたに指摘されるのは癪だけど、その通りよ」
「そなたのその悩み・苦しみは、悪魔になれば解決できるだろう」
あたしが悪魔に? そんな事できる訳がない。
「邪悪な力というのは、抑圧されればされるほど高まるのだ。そなたの場合は、友人のせいだな。その友人とのしがらみを断つには、人間を捨てる必要があるのだ」
「人間を捨てるなんて、できる訳ないじゃない」
「もちろん、誰でもできることではない。だが、今のそなたは必ずできる。
自分の欲求を素直に受け入れればな」
自分の気持ちに素直になれば、あの3人を消せる?
「
「あのウザい奴らを消し去る事よ!!!」
そう宣言した後、体が熱くなる。座り込むあたし。
落ち着いた後、再び立ち上がる。
「これでそなたも悪魔だ」
スタンドミラーみたいな鏡を出す自称悪魔。悪魔も鏡使うんだ…。
そんな余裕は、自分の姿を観て早くも崩れ去る。
頭の左右に角が2つ。背中に大きな黒い羽。
あたし、本当に悪魔になっちゃったんだ…。
「その羽は飾りではないぞ。羽がない人間は、慣れるまで苦労するかもな」
自称悪魔は嫌味を言ってくる。
「すぐに慣れてやるわよ」
「…そうか。これで我の用は済んだ。失礼させてもらおう」
自称悪魔は消え去った。悪魔のくせに『失礼』なんて言うとは…。
あたしの意識が戻り始める。
目を覚めると、倒れた体育館裏にいた。
さっき見た角と羽を触って確認する。…あるな。
あたしは間違いなく悪魔になったんだ。もうあたしを縛るものはない。
必ず消してやる、水寺・畑山・黒空の3人。待ってろよ。
【第4部 天草シオン&黒空葵編に続く】
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